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新たな手掛かり

明るめの話です。お楽しみください。

「そろそろ神の存在を示すものが出てきてもいいと思うんだけどなぁ……」



 ひとりごちる凪。昨日騙されて購入したガラス玉を、何となく手で転がしながら高校への道を歩く。神になるどころか、その存在の手がかりすらつかめないのだ。



「やっぱり神になることはできないのか……?」



 5年という歳月は、凪の強い決心ですら揺らがせるには十分な期間であった。少し暗い気持ちになりながらとぼとぼと歩く。



「よっ、ナギ!まとってるオーラが暗いぞ」



 後ろから背中をたたかれ、凪はびっくりして振り返る。



「なんだ、サトシか。びっくりさせないでよ」


「なんだとはなんだ、暗いから喝を入れてやろうとしただけじゃないか」



 そう笑いながら言うのは凪のクラスメイトの阿金聡思(あがね さとし)。凪の数少ない友人で、中学時代からの付き合いだ。

 神にまつわるアイテム探しに没頭していて、成績が最悪だった凪に勉強を教え、何とか高校に入学できるまでに育て上げた恩人でもある。



「そのガラス玉を見るにまた偽物をつかまされたな」


「何で分かったの?超能力者にでもなった?」


「いや、いつものことだからだよ。むしろ超能力とかいう超常現象はナギの得意分野だろ」


「何度も言ってるけど、僕が調べてるのは神であって、超能力とか未確認生物とかそういった類のものじゃないんだ。そもそもサトシは——」


「あ~、はいはい。そのお話も耳にタコができるほど聞いたから」



 そんな他愛もない話をしながら二人で歩く。



「そう言えば、ナギが興味を持ちそうなアイテムを手に入れたぞ」



 聡思が凪に話しかける。



「また?もう前回みたいなものはやめてくれよ」



 苦虫を嚙み潰したような顔をする凪。


 ——思い出されるのは中学校卒業直前に聡思が渡してきた、一見お菓子の箱に見えるものだ。



「先輩が道端に落ちてたの拾ったらしいんだけど、どうやっても開かないんだってさ。ナギの部屋にある工具やら色々使ったら開けられるだろ?やってみてくれよ」



 凪の部屋は集めたアイテムを分解したり観察したりする工具や実験道具が置いてあり、学校の理科室よりも色々なことができそうな空間と化している。

 これまでも何度か聡思に頼まれてよく分からないものを分解したり観察したりしていた。そのため、このときは特に考えもせず了解してしまった。


 これがマズかった。

 出てきたのは白い粉。慌てて警察に届けると、案の定麻薬だった。これを拾った聡思の先輩はもちろん、聡思と凪も取り調べを受けることになり、学校では一躍有名になってしまった。


 聡思は「中学生活最後に最高に面白い思い出が作れたな」などと言って笑っていたが、凪は生きている心地がしなかった。





 そんな出来事があったため、今回はかなり警戒しているのだ。



「大丈夫、大丈夫。今回はもっとスゲーやつだから!」


「さらに見るのが嫌になったよ!?」


「まあ、そう言わずに。俺とナギの仲じゃん」



 肩を組まれ逃げられなくなる凪。

 その時、かすかに学校の予鈴の音が聞こえた。



「やべ、遅刻する!ナギ、走れ!」



 そう言って走り出す聡思。凪は解放されたことにほっとしつつ聡思を追いかけていった。







「結局遅刻したな。まったくあの体育教師、毎朝門の前で竹刀持って待機してやがる。いつの時代だよってツッコミたくなるぜ」


「今日遅刻したのはサトシのせいでしょ」



 そう、全力で走ればぎりぎり間に合ったはずなのだ。それなのに遅刻をした理由は……



「道に迷ってたおばあさんを助けるから……」


「じゃあ、ナギはもし見かけても無視してたのか?」


「……いや、しないね」


「だよな、俺ナギのそういうところ好きだぜ」


「僕もサトシのそういうところ好きだよ」



 二人で笑い合う。

 しばらく歩いて交差点に差し掛かった。いつもならここで別れるのだが、今日は違った。



「サトシの家こっちじゃないでしょ」


「朝言っただろ、面白いアイテム見つけたって。ナギの家行くぞ」


「ほんとだったのか……もし何か犯罪的なものだったらガムテープで縛って裏山に捨てるからね」


「そのときは俺が持って帰るから捨てないでくれよ」


「勘違いしてない?縛って捨てられるのはサトシだよ?」


「こえーよ!?」



 ワイワイと話すうちに凪の家が見えてきた。



「凪、おかえり。聡思君もいらっしゃい。今日は夕飯食べてくかい?」



 畑仕事をする凪の祖父が二人に気付いて声をかける。



「ただいま、じいちゃん」


「お邪魔しまーす!晩ごはん食べさせてせてもらってもいいんですか!?凪のばあちゃんの飯美味いんだよなあ」


「それを聞くと嫁も喜ぶよ。じゃあ夕飯ができたら呼ぶから、それまで二人で遊んでいなさい」


「「はーい」」



 少し微笑んだ凪の祖父は畑仕事に戻った。

 それを見届けた凪と聡思は家の二階にある凪の部屋へ向かう。





「おい、また不気味なもんが増えてるな。なんだこれ」


「あ、それあんまり触らない方がいいかも。実際に人を呪うために使われた形代らしいよ」


「!?」



 人の形をした木を手に取って興味深げに見ていた聡思だが、凪の説明に怯えて落としてしまった。



「あ~あ、落とした。サトシ呪われちゃうかもね」


「お前が言うと冗談にならねーよ。あとで塩分けてくれ」



 落とした形代を見ながら嫌そうな声を出す聡思。



「気を取り直して、今回俺が持ってきたものはこれだ!」


「なにこれ?」



 聡思が取り出したのは拳サイズのカプセル。開けてみると黒い石のようなものが入っていた。



「聞いて驚け!これはかの有名な日本神話に登場する、国生みに使われたアメノ……何だっけな?」


天沼矛(アメノヌボコ)?」


「そう、アメノヌボコの欠片なのだ!お前ホントに神話に関する知識だけはあるよな。勉強できないくせに」


「一言多い。ちなみにこれどこで手に入れたの?」


「隣町の裏路地でたまたま見かけたガチャガチャ」



 信頼度が一気に地に落ちた。



「まあ、まて。落胆するにはまだ早い」



 あからさまにがっかりした様子を見せる凪に、聡思は続ける。



「このアメノ……覚えられないからアメちゃんな。このアメちゃん、夜になると光りながら動くんだ。面白いだろ?」


「待って、ツッコミどころが多い。まず神話に出てくる神聖なものに、美味しそうなニックネームを付けようとするんじゃない。あと、夜になると光って動く?UFOの専門家に持って行った方がいいんじゃない?」


「だが、今までのものよりグッと神に近づいている気がしないか?」



 たしかに何の進展もなかったこれまでから、大きく前進した気もする。



「わかった。調べてみるよ」


「おう。それじゃ晩ごはんができるまでゲームでもしてるか」


「宿題やらなくていいの?」


「後回しに決まってるだろ」


「あはは、そうだね。今回は負けないよ」


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。定期的に更新しますので、ぜひ次もお読み頂けると幸いです。


感想等があれば、気軽に送ってくださると投稿者が泣いて喜びます。

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