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第一話 決意

投稿者の処女作です。読みづらい部分もあるかもしれませんが、お楽しみ頂ければ嬉しいです。

※一話目は少し重たい話となりますが、二話目以降は楽しい展開にする予定ですのでご安心ください。

「——また偽物掴まされた……」



 おふだや十字架、仏像から果ては精霊信仰に使う人形まで、怪しげなものが所狭しと並べられた部屋。その中央に小さな木箱を持って座る男の子がつぶやく。



「けっこう高かったのになぁ……お小遣い尽きちゃったよ。高校生になったしアルバイトも考えてみるか……」



 彼の名前は出雲凪出雲凪(いずも なぎ)。日本人離れした茶髪で、自分には日本人以外の血が流れているのかもしれないと思った凪は、家系図を調べてみたことがあるが、変わった名前は見つけられなかった。高校に入って2週間、地毛だと知らない先生たちから髪の毛を染めないように注意をうけること6回。さすがに面倒になった凪が校長室に直接抗議に行ったのは一昨日のことだ。

 身長は160センチで成長が止まり、童顔のためもあって年齢より下に見られがちである。


 木箱の中から取り出した透明な玉を手で転がしながら彼はため息をつく。なんとなく入った骨董屋で、胡散臭いおじさんから『神の心臓』と言われ購入を決めたものだ。家に帰ってじっくり観察したけれど、どう見てもただのガラス玉だった。


 彼がなぜ怪しげなものに執着するのか。

 それは————



「凪、晩御飯できたよ。……また新しいの買ってきたの?凪の気持ちは分かるけど、そろそろ自分のために生きてほしいよ」



扉を開けてそう言ったのは、凪の祖母だ。



「分かってるよ、ばあちゃん。でもごめん、まだ僕は諦めきれないんだ」


「そう……まあいいわ。晩御飯はハンバーグよ、手を洗ってきなさいね」


「うん、すぐ行く」



扉が閉まる。



「……諦めない。諦めるわけにはいかないんだ。母さん……」





————5年前————



「誕生日ケーキどんなのかな?教えてよ!」



はしゃいだ声をあげるのは今日10歳の誕生日を迎えたばかりの凪だ。



「ふふ、まだ秘密よ。お父さんが帰ってくるまで楽しみはとっておこうね」



そう答えるのは凪の母。

 時刻は午後7時。仕事の帰りに凪の父が、予約していた誕生日ケーキを受け取って帰る予定になっているのだ。


 父の帰りをそわそわと待つ凪と、それを微笑ましく見つめる凪の母。あたたかいひと時、それを打ち破ったのは、リビングに置いてある固定電話の鳴る音だった。



「はい、もしもし。ええ、そうですが。……えっ、主人が!?……はい、分かりました。すぐに向かいます。はい、失礼します」


「ねえ……何か起こったの?」



切羽詰まった声を出す母に不安を覚えた凪は母に尋ねる。



「……お父さんが大けがをしたらしいの。すぐに病院に行くわよ」







「手は尽くしました、ですが……」



 冷たくなってしまった父が眠るベッドにすがりつき、泣き続ける母。その様子を凪は呆然と眺めることしかできなかった。


 後に分かったことだが、凪の父はケーキ屋から歩いて自宅に向かう途中、工事現場の横を通りがかった。そのとき、建築資材がぐらついて、下を歩く男性に落ちそうなことに気が付いた凪の父は、とっさに男性を突き飛ばし、代わりに自分が下敷きになってしまったそうだ。


 助けられた男性も病院に搬送されたが、突き飛ばされて転んだときにできた擦り傷程度のけがで済んだ。男性は後に、凪と凪の母のもとに土下座せんばかりの謝罪と感謝をしに来たのだが、父の死から立ち直れていない二人の記憶には残らなかった。







 父の死からひと月が過ぎた。父は仕事仲間にも好かれる存在だったようで、残された凪を不憫に思った父の会社の同僚たちが、休日ごとに凪を遊びに連れて行ってくれていた。その甲斐あって、凪は元気を取り戻していった。


 しかし母は現実を受け入れられず、たまたま家にきた新興宗教の勧誘に引っ掛かり、どんどんと傾倒していった。家財道具を次々売り払い、生活に困るようになるほどの寄付をしていったのだ。見かねた父の同僚が諫めようとしたが、聞く耳を一切持たなかった。


 ある日、母方の祖父母が様子を見に訪れる。



「これは酷いな……もう少し早く様子を見に来ればよかった」



 物がほとんどなくなってしまった家を見て祖父はつぶやいた。



「すぐにでも私たちのところに連れて帰りましょう。こんなところに凪を置いてはおけないわ」



 二人は凪を母のもとから引き離す決断をした。

 しかし……



「嫌だ、お母さんは悪くない!僕は絶対にお母さんと一緒に暮らすんだ!」



凪は母のもとを離れようとしなかった。

 そして凪の母も……



「どうして私たちを引き裂こうとするの!?私はこんなにも凪を愛しているのに!お願いだから凪を連れて行かないで!」



 と、必死に嘆願するのだった。


 このままでは埒が明かないと判断した祖父母は、抵抗する凪を抱きかかえて車に乗せ、そのまま2つほど県をまたいだ自分たちの家に連れ帰った。

 数日泣き続け、その後は半月ほどふさぎ込んでいた凪だったが、祖父母の言葉を徐々に受け入れるようになっていった。


 その後、地元の小学校に転校することになった凪。彼はとある決断をしていた。



「僕も神になるんだ。そして、お母さんをたぶらかした神を……殺してやる」


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。定期的に更新しますので、ぜひ次もお読み頂けると幸いです。


感想等があれば、気軽に送ってくださると投稿者が泣いて喜びます。

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