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トリプルクラウンの争奪者  作者: 夏を待つ人


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55/57

55話 日本シリーズ第四戦

 カウボーイズが1勝、ウォーリアーズが2勝。

 ウォーリアーズがわずかに勝ち星を先行して迎えた日本シリーズ第四戦は、初回から動いた。


 一回裏のカウボーイズの攻撃、ウォーリアーズ先発右腕、グリッチは簡単にツーアウトを取る。

 ツーアウトとなった後、三番の陽翔は初球を叩いた。

 閃光の飛び散るような当たりがライト前へ痛烈なヒットとなった。


 続く四番、三浦は二球目を叩き、大きな飛球がドームを舞う。

 文句なしのホームランが、センターボックスクリーンに突き刺さった。


 このシリーズ四試合連続となる三浦のホームランに、割れんばかりの大歓声がドームを覆う。

 ツーランホームランで、カウボーイズが二点を先制した。


 カウボーイズ先発の川田は二回表の守りを三人で打ち取り、控えめなガッツポーズを右手で作りながら、ダグアウトに戻る。

 やはり、川田には割れんばかりの歓声が注がれる。


 ウォーリアーズの宮本秀高――FA(フリーエージェント)でカウボーイズから移籍してきた右腕は、大歓声を受けるかつてのチームメイトを複雑な胸中でブルペンから見ていた。

 宮本はこの日本シリーズベンチ入りメンバーには入っているが、ここまでの三試合で未だ出番はない。

 

 川田が感情を出すシーンを、宮本がチームメイトだった時代には見たことがなかった。

 川田だけでなく他のカウボーイズの選手たちも、かつてとはまるで別人のように見える。 


 宮本が所属していた頃のカウボーイズといえば最下位の常連で、リーグ優勝、日本シリーズ出場なんて、天と地が逆さまになったってありえない、プロ野球のお荷物球団だった。

 宮本がFAで移籍を決断した理由も、一番はもっとお金が欲しいというのだが、弱い球団ではなく強いチームで戦いたい、優勝を味わいたいというそんな想いもあった。


 ウォーリアーズに移籍して、カウボーイズにいたときは数千万だった年俸も、単年一億以上のお金も貰えるようになったし、強いチームで戦えているし、優勝を味わうこともできた。

 それでも、どこか心の底に拭えないモヤモヤを抱えている。


 はっきり言って、ウォーリアーズファンから自分は良く思われていない。

 先発ローテの一角として期待されながら、今の役割は敗戦処理。

 対して宮本の人的補償としてカウボーイズに移籍した五十嵐陽翔は、本塁打王、打点王の二冠を獲得し、新人王とMVPの受賞も確実視されている。


 その陽翔を代償に、さらに高い年俸を払った上で得られたのはただの敗戦処理。

 ファンから良く終われないのは当然だと宮本は思う。


 宮本は自分をただの社会人だと思っている。

 たとえファンから馬鹿にされようと、高い年俸を貰えればそれで良い。

 それでも、この日本シリーズ――カウボーイズと日本一をかけての戦いについては、正直言って現実に起こって欲しくなかった。


 二回裏、カウボーイズの攻撃。

 第二戦で上菅、第三戦でケントに抑えられた打線は、昨日までの鬱憤を晴らすかのように繋がっていく。


 六番の前川がピッチャーの足元を抜ける強烈な打球を放つ。

 セカンドの吉村は飛びつき、打球を確保し、素早い送球を行うが、間に合わない。

 ヘッドスライディングで一塁ベースに飛び込んだ前川は、“セーフ”の判定を聞くと、ガッツポーズを作った。


 七番の宗村もレフト前へのヒットを放つ。

 さらに八番の福田もヒットで、前川がホームに還る。

 九番の坂本もセンター越えへのタイムリーツーベースを放ち、宗村、福田と本塁を踏む。


 一気にこの回も3点を追加し、点差を5点に広げたカウボーイズは、ベンチも、ファンもお祭り騒ぎだ。

 先ほど四連打を放った彼らも、かつてチームメイトとして、宮本と共に最下位の苦渋を味わい続けた者たちだが、今はドームのど真ん中で大声援を浴び、日本一へひたすら邁進し、輝きを見せている。


 自分も、あそこにいる未来があったのだろうか。

 いや、自分がカウボーイズに居続ければ、五十嵐陽翔はずっとウォーリアーズにいるのだから、少なくともカウボーイズが今年日本シリーズに来ることはなかったはず。

 考えれば考えるほど、今の自分はかつてのチームメイトたちの、そして五十嵐陽翔の引き立て役に過ぎない事実が浮き彫りになり、屈辱が心の中を支配する。


 四連打で3点を失ったところで、森田監督はグリッチを諦めた。

 二番手には、宮本と同じようにFAでウォーリアーズの移籍した野下が上がる。


 野下も埼玉ブロンコスとしてエース級ではないが、二番手クラスとして活躍後、ウォーリアーズにFA移籍をした。

 ブロンコス時代に貰っていた額の三倍にもなる年俸二億円での移籍も、ウォーリアーズでは先発でぱっとせず、この日本シリーズでは中継ぎの役目を担っている。

 なにもかもが、宮本と被る存在である。


 ウォーリアーズには宮本や野下のように選手が多くいる。

 とりあえず戦力補強のため、市場に出てきた――FA権を行使したエース投手や主軸打者よりは劣る微妙・…な選手を、他球団は出さないような高い年俸で獲得するものの、移籍後はパッとしない。


 打者では八番レフトで出場の清川きよかわがこれに該当する。

 千葉オウルズ時代は一年だけ首位打者争いをするほどの活躍を見せたが、あとの年はパッとしない外野手を、三年総額六億円で獲得。

 案の定、打撃タイトル争いをするほどの活躍は見せず、下位打線でスタメンを張るか、代打要因に収まっていて、金の無駄だと揶揄するファンの声は多い。


 かつて球界の名手として君臨したウォーリアーズは、他球団の選手を金で引っ張り、チームの強さを維持してきた。

 ところが超一流どころの選手が皆、メジャー移籍を目指すこの時代において、そのようなチーム作りはできなくなっている。


 それでも今のウォーリアーズが強さを維持しているのは、阿田や坂根、上菅といった球団生え抜きたちがチームを引っ張っているからに他ならない。

 ファンが見たいのも、彼らのような生え抜きが活躍したうえで強いウォーリアーズだろう。

 では、自分たちのようなFA選手の存在意義はなんなのだろうか。


 二番手としてマウンドに上がった野下は、いきなりのランナー二塁という局面を迎える。

 一番の田中栞緑はセカンドゴロに打ち取り、二塁ランナーは三塁に進む。

 二番のパーキンスはショートゴロに打ち取ったが、三塁ランナーは生還し、カウボーイズに6点目が入る。


 ここで迎えるのは三番の五十嵐陽翔で、ドーム全体の歓声が一回り上がった感じがする。

 野下は陽翔相手に得意のカーブを連投し、ファーストゴロに打ち取った。

 ノーアウトランナー二塁、しかもカウボーイズの上位打線と対する状況での登板。

 二塁ランナーは還したとはいえ、これ以上ピンチを広げずにこの回を終えた。

 野下の投球は賞賛に値すると思うが、長い守りを見届けたウォーリアーズファンは、大した歓声を野下に与えなかった。


 ◇◇◇◇


 三回表も川田は無失点で終える。

 まるでドーム全体が川田を後押しするかのように、一球ごとに歓声を上げる。

 1勝2敗で迎えたこの第四戦、絶対に負けられないこの試合に、ファンの熱量はすさまじかった。


 三回裏のカウボーイズの攻撃。

 ウォーリアーズのマウンドには前の回に好投を見せた野下が上がる。


 野下は四番の三浦にフォアボールを与えたものの、五番のマイク・ハーパーを併殺に打ち取る。

 しかし、


「あ、いったわ」


 ブルペンでウォーリアーズ投手陣の誰かが言った。

 あまりに感情のこもっていない声色だった。


 六番の前川がレフトへのソロホームランを放ち、カウボーイズに7点目が入る。

 ウォーリアーズのブルペンも、ああそうですか、という反応である。

 序盤でのこの点差だ。

 この試合はカウボーイズにプレゼントしても良いか、みたいな感じにも見える。


 野下はその後も続投し、七番の宗村はサードフライに打ち取り、この回を終えた。

 やはり、ファンからのねぎらいの拍手みたいのは無かった。


 四回表も川田はランナーを出しながらもピンチを脱し、ゼロ点に抑える。

 四回裏、森田監督は投手交代を告げ、宮本秀高は、大阪ドームのマウンドに上がることになった。


 ◇◇◇◇


 宮本の登場がドームに告げられた時、カウボーイズのファンたちは惜しみない拍手と歓声を上げた。

 宮本がカウボーイズの一員だった頃すら、浴びたことのないほどの歓声だった。


 それは、単なる元チームの一員の凱旋を祝う者ではない。

 カウボーイズのファンにとっての宮本は、FAで金満球団に移籍した裏切り者ではなく、五十嵐陽翔の引換券となってくれた存在、感謝すべき存在なのだ。


 交流戦の時も同じような扱いをカウボーイズファンより受けたが、心に何も痛みを覚えなかったわけではない。

 だからこそ、カウボーイズと日本シリーズを戦うことなんて、現実に起きて欲しくなかった。

 このような光景が起きることが、目に見えていたからだ。


 それに今は7点で負けている状況で、ここでの登場は敗戦処理に他ならない。

 日本シリーズでの登板といえども、やる気十二分でマウンドに上がれるわけがない。


「まあ、ぼちぼちいこうや」


 キャッチャーの阿田が、宮本へそう声を掛ける。

 “まあ”ってなんだ、“ぼちぼち”ってなんだ。


 宮本は八番の福田に初球を投じたが、あっさりとライト前へヒットを打たれる。

 続く九番のキャッチャー坂本には死球デッドボールを与え、ノーアウトでランナーが一塁、二塁と、いきなりのピンチを迎える。


 先ほどまでのカウボーイズの攻撃より、盛り上がりが少ない。

 球場全体にはびこる、そりゃそうだろうな、という雰囲気を体中で感じる。

 古巣のカウボーイズファンもここで宮本は打たれるだろうなと思っているし、ウォーリアーズファンもここで抑えると思っていない。


 ああ、なんて惨めだ。

 こんなことなら、FAなんてしなければ良かったのか、いやそれだと年俸が……じゃあウォーリアーズに行かなければ……。


 なんてことをマウンド上で宮本が思っていると、いきなり真後ろから鋭利な声が飛んできた。


「おい宮本。ずっと思っていたが、お前まさか、自分のこと可哀想とでも思ってる?」


 声の主は坂根だった。

 宮本にとって坂根は、一つ年上で、ウォーリアーズのキャプテンであり、日本を代表するショートストップである。

 投手と野手というのもあるが、あまり積極的に声を掛けられる存在ではなかったため、ここまで大して話す機会はなかった。


「そんなこと……」


「まあ、確かにお前は可哀想だ。意気揚々とFAしたのに、ファンからも大して歓迎されず、今の立場は敗戦処理。入れ替わりでカウボーイズにいった陽翔はあの活躍で、挙句の果てにカウボーイズファンからもあの扱い。実に可哀想だ」


「で、ですよね……俺、可哀想っすよね」


「だがな、宮本。俺からしてみたら、ホームランを打ったのに監督に干され、二度と一軍に上がれず、挙句、お前なんかの人的補償にされた奴の方が可哀想だ」


「五十嵐のことっすか……」


「だが、あいつは、自分の実力と努力によって、今や、あいつのことを可哀想なんて言うやつはいない。そこらへん、よく考えろよ」


 坂根は続けて言った。


「俺らは試合を諦めちゃいない。もし逆転勝利したら、お前はヒーローだろうな。カウボーイズファンも、お前に歓声を上げる余裕もなくなるだろう」


 坂根は守備位置に戻っていった。

 宮本は投球の準備を整えながら、坂根の言ったことを反芻した。


 確かに可哀想な宮本は、FA移籍した瞬間に生まれたわけではない。

 宮本が大した活躍をせず、五十嵐があの活躍を見せたからこその今の立場がある。

 五十嵐のことは置いておいて、宮本が大した活躍をしなかったからこそ、ウォーリアーズファンは宮本を良く思っていない。

 脅威ではないと思っているからこそ、カウボーイズファンの連中は宮本に拍手喝さいを浴びせる。


 それに、坂根の言うことも一理ある。

 森田監督に干されていたときの五十嵐は、今の活躍はおろか、プロとしてのキャリアすら危ぶまれていたはずで、そこから今の華々しい活躍をするまでに至れたのは、間違いなく彼の努力と実力のおかげだろう。


 宮本は目が覚めた気がした。

 日本シリーズの真ん中で、自分が可哀想とか、FAしなければよかったとか、何を考えているのだ。

 重要なのは今で、五十嵐のようにといかないまでも、これからの活躍で、自分の扱いをどうとでも変わるはず。

 ついでに、自分のことを舐めきっているカウボーイズファンへ、痛い目を合わせたい。


 宮本は田中栞緑に向き合い、自身の渾身の球を投じた。

 二球で簡単に追い込み、一球のボールを挟んだ後、四球目で空振り三振を奪った。


 二番のパーキンスも、直球で押し、サードフライに打ち取った。

 ツーアウト一二塁で、宮本にとっては因縁深き相手を対する。


 今シーズン、五十嵐陽翔が大活躍を見せ始めてから、今日に至るまで、ずっと彼の存在が不快だった。

 それでも、今日だけは少し違う感情を持っている。

 まさか、自分が、五十嵐の話で心を揺さぶられるとは。


 宮本は感謝の思いも込め、魂を込めた投球を続けた。

 最後はフォークボールで空振り三振に切って取り、宮本は大きくガッツポーズをした。

 これにはカウボーイズファンも沈黙で、ウォーリアーズファンも沸いた。


 ◇◇◇◇


 宮本は五回も、六回も続投し、それぞれ三人でカウボーイズの攻撃を終わらせた。

 おそらくは今シーズンの宮本のベストピッチになろうかという、素晴らしい投球が続いた。


 ウォーリアーズ打線は七回、ついに反撃に転じる。

 カウボーイズのピッチャーは勝利の方程式の一角、ベテランの平山が上がっていた。


 平山は回の先頭、八番の清川にレフト前ヒット、九番の権田に代わって出た代打、長原ながはらに四球を与える。

 さらに打順は上位に戻り、一番の吉村がセンター前へのタイムリーヒットを放つ。

 ようやくスコアボードに刻まれた一点に、ウォーリアーズファンは今日初めて盛り上がった。


 二番の松井は三振に打ち取るものの、ここで三番の坂根はレフトスタンドへ直接着弾するホームランを放つ。

 スリーランホームランで一気に三点を加え、点差は4-7。


 ここでカウボーイズ大黒監督は平山を諦め、サウルポーの宮田を投入する。

 しかし、


「おお!」


 宮本はダグアウトで立ち上がった。

 四番の阿田がライトスタンドへの一発を打ち、さらに一点を追加。

 さらに五番の岡村も続く。

 レフトスタンドへのソロホームランで、これで三者連続ホームランだ。

 一気に点差を1点差に詰める。


「うおおー! すげー」


 興奮気味に無意味な言葉を発している選手たちが、ダグアウトに何人もいる。

 三者連続ホームランなど、滅多にない。

 しかも敗色濃厚だった0-7の試合を、一気に1点差まで詰めた。

 ウォーリアーズベンチが盛り上がらないはずがない。

 そんなお祭り騒ぎのダグアウトの中、投手コーチが宮本の元へ来て、


「宮本、交代だ」


「あ、はい」


 おそらくこの回こんなに点を取っていなければ宮本は敗戦処理・・・・として続投だっただろう。

 しかし、もう試合はどっちに転ぶかわからないということで、宮本に投げさせず序列の高い勝ちパターンの投手たちを投入していくということだろう。

 なんだが、もやもやとした想いはあった。


 それでも、坂根が宮本へ、


「ナイスピッチ。これは、お前が作った流れだ」


 と言ったことで、宮本は自身の投球が報われた気がした。


 七回裏、ウォーリアーズは勝ちパターンの一人、山居を投入するものの、五十嵐陽翔にツーランホームランを浴び、さらに前川にタイムリーヒットを浴びる。

 この回ウォーリアーズは3点を失う。

 試合は6-10で、八回に進んでいった。


 ◇◇◇◇


 八回表、カウボーイズのマウンドは、前の回から続投の宮田が上がる。

 宮田はウォーリアーズ打線をきっちり三人で抑え、ゼロに抑える。


 八回裏、ウォーリアーズのマウンドには150キロを超えるストレートとスプリットが武器の戸村が上がる。

 戸村はカウボーイズの下位打線をきっちり三人で抑え、試合は、最終回の攻防へと移る。


 4点差と“セーブ”がつかないシチュエーションではあるが、カウボーイズ大黒監督は守護神のアレンビーを投入した。


 陽翔はどこか不安を思いながら、ショートの守備についた。

 4点差といえど、まだまだ安全圏ではないと陽翔は思った。

 

 昨日は決勝点となる点を許したアレンビーだ。

 カウボーイズリリーフ陣では最も信頼の高いピッチャーではあるが、その一人目、またしても不安な立ち上がりを迎える。


「ボールフォアっ!」


 二番の松井相手にファウルで粘られ根負けしたか、四球を与える。

 そして迎える今シリーズ絶好調の三番の坂根の、初球だった。


 アレンビーの初球を叩いた坂根の打球は、センター後方へのフェンス直撃の二塁打となった。

 はっきり言って()ストレートで、坂根相手である。

 ホームランにならなかっただけ、ありがたい投球だった。


 一塁ランナーの松井がホームを陥れる。

 点差は3点。


 たまらず投手コーチは通訳を伴い、アレンビーの元へ迎える。

 まだ点差はあるけども、ここから阿田、岡村と続く。

 勝っているのに、ドーム全体に暗雲とした雰囲気が少し漂う。


「ここからうちが勝てば、流石にこのシリーズは決まりよな」


 坂根が足と肘のレガースを外し、二塁上で陽翔へ声を掛けてくる。

 陽翔はそんなことよりと、気になっていたことを聞いた。 


「この前言ってた、僕が干されたのが勇気さんのせいっていうのは……結局なんなんですか?」


 坂根は、「ああ、あれな」と言って、続けた。


「お前が成長したら、俺のポジション奪われそうだったから、監督に言ったんだよ、あいつを干すのを辞めろって」


「えっ、でもそれなら……」


 それなら、さっきと言っていることが逆になる。

 むしろ、坂根は陽翔の“干され”を止めようとしたことになる。


たかが(・・・)選手の俺にそんなこと言われたら、あの頑固おやじなら絶対逆効果だろうなって。案の定、お前は一軍に俺の目論見通りってわけだ。」


 坂根が陽翔のことを脅威に思い、あえて頑固な森田監督に“干すのをやめろ”と進言し、ずっと一軍に上がってこないようにした。

 そのような話、陽翔はいろんな意味で信じられなかった。


「そんなの、信じませんよ」


「まあ、半分は嘘だ。半分は本当だけどな」


「半分って……何が?」


 さっきの坂根の話で、どこまで本当で、どこまでが嘘かまったくわからない。

 この前と一緒で、プレイが始まり、これ以上は聞けなかった。


 アレンビーはその後も苦しんだ。

 2点を奪われ、それでも最後は速球でごり押し、この回の4点目は許さなかった。


 最終スコアは10-9でカウボーイズの勝利。

 カウボーイズとウォーリアーズの対戦成績は二勝二敗の五分へと変わる。


 圧勝ムードだった試合が中継ぎ崩壊で一点差まで詰め寄られた事実は、今後に向けて不安ばかりが募る結果となる。

 しかしそれでも、明日はあの森本玲央が先発だ。

 一進一退、五分となった日本シリーズのこの場面において、絶対的エースが登場するという事実は、選手にとってもファンにとっても、大きな希望となる。


 薄氷の勝利であっても、勝ち星を一個積み重ねることができた。

 明日、森本が先発するカウボーイズにとっては、その事実がなにより大事だった。


 ◇◇◇◇


 119.牛を飼う名無し


 アレンビーwwwwwwwwwwwwww


 123.牛を飼う名無し


 昨日からアレンビー劇場やん


 139.牛を飼う名無し


 勝ったけど心臓に悪すぎて草


 170.牛を飼う名無し


 これじゃ投げる球ナインビーじゃねえかwwwwwwww


 191.牛を飼う名無し


 >>170

 死ね


 234.牛を飼う名無し


 打線は好調

 中継ぎ陣やばすぎ

 坂根相手に勝負するな


 こんなところやな


 259.牛を飼う名無し


 三回裏7-0   勝ったか風呂入るか

 七回表7-6 は?


 271.牛を飼う名無し


 >>259

 2時間風呂入ってて草


 303.牛を飼う名無し


 第5戦 森本VS横峯

 第6戦 山上VS上菅

 第7戦 結木VSケント


 うーん


 332.牛を飼う名無し


 リリーフ不安すぎなんやが明日から誰投げさせばええんや


 357.牛を飼う名無し


 >>332

 そりゃ全部森本よ


 370.牛を飼う名無し


 第5戦 森本VS横峯

 第6戦 森本VS上菅

 第7戦 森本VSケント


 いけるやん!

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