第二話 改心しないゲス王子
「な、何だ。今度は元第3王子様が来やがった」
俺はエコー、鉱山で支配人をやっている。国が不良貴族を、鉱山で労役を言いつけやがる。
全く困ったものだ。坑道でトンカンやってる奴らはエリート、掘る方向や岩盤の強度など、変な方向に掘られちゃたまらない。協調性も大事だ。元王子にはトロッコ押しも任せられない。
よし、お前、鉱山学校の教師をやれ
「平民、私に使用人の真似ごとをしろとほざくのか?」
「ああ、そうだよ。お前は使用人だ。だから教師をさせるのさ。税金で貴族学園にいったのだろう?」
「!!くっ。俺が復権したら、お前は島流しにしてやる」
「ああ、わかった。パラソル持っていくわ。お前が復権するまで、夜の部やれ」
俺は元王子、学園で数々の令嬢と浮名を流し、男爵令嬢と小姑みたいにうるさい婚約者を取り替えようとした。
しかし、隣国の王子がしゃしゃり出てきやがった。今、元婚約者は隣国の王族と結婚しやがった。俺を裏切ったな。
そして、俺はここに追放されてしまった。
きっと、父上は俺を見捨てていないはず。
取りあえず、さらっと平民に適当に教えてやろう。奴ら数も数えられないだろうな。
「おい、お前ら、俺が来たら、容赦はしねえ。今日はお釣り計算を教えてやる!」
シーーーーーーーン
「あのさ、先生、俺たち仕事終わって、来ている。あまり時間がないからわからないところを教えてくれないか?おつり計算は大事だけど日常でやってるからいいや」
「ふん。お前ら何やってるのだ」
「前にいたモーガン先生から微分積分を教えてもらってたよ」
「!なんだと、平民のくせにあの奥義を習っているだと、何故だ!」
衝撃の事実が判明した。奴ら、戦争に投石部隊として、参加する。軌道計算をしたくて、モーガンってやろうに相談して、微分積分だと、信じられない。クソ平民め。
・・・
「あのさ、お前、夜の部、評判悪いのよ。昼の部にいってガキに教えてあげてくれない」
エコーめ。俺の実力をわからせてやる。
☆☆☆昼の部
「な、何故、お前ら数学に大陸共通語のアルファベットを入れて計算している!!数字とアルファベットを交ぜるとは無知蒙昧め!」
「ええ、お兄ちゃんもういいや」
宿題は全て、侍従にやらせていた。授業は先生を脅して出席扱いにしていた。
こうなったら読み書きだ。難しい本を読んでビビさらせてやる!
「汝の敵を滅せよ・・え~と、え~と、何だこれ?」
「その後は、汝の敵は四本角、彼奴を討伐せよだよ。女神信仰圏内の国では、魔王と呼ぶ行為ははばかれるよ。王は人族や友邦のドワーフ族やエルフ族の長のみの呼称だからだよ。女神様や精霊様が王権を授与する建前がある。魔王にはいろいろ蔑称があるけど、今は休戦状態だから、比較的穏やかな四本角で統一している。そんなこともわからないの?」
「うっせークソガキ、お前こっちこい!」
グギ、ボキッ
「キャーーーー」
「やめてーーー」
「誰か、来て、お兄ちゃんが暴れているよーーー」
・・・・
「へえ、お前、何してくれちゃっているの?」
「縄をほどけーーーー俺は王子だ!俺を害すると父上が黙ってないぞ!」
「あ、そう、実はお前は永年労役なんだ。俺たちは投石部隊として戦争にもいくんだ。殺しは慣れているぜ」
「そんなー平民のガキを殴っただけで、俺を害したら大変なことになるぞーー」
「うるせー、今大変なことになってるんだ。お前が殴ったガキ、今、昏睡状態で寝ているぞ。最上級の治療魔法士を呼んでいるところだ。間に合わなかったら、お前」
エコーはクビを斬る仕草をした。
「お前、ここで縛られたまま待っていろ。俺はガキの家に見舞いに行かなくてな」
・・・・
「荒くれものの平民が、本当にやる気だ・・お、縄が解けた。あれ、机の上に金がある」
(逃げるぞ)
王子は金を盗んで逃げ出した。
何故だ。王宮で侍従を殴っても、メイドを暴行してもお咎めは数日間、自室謹慎だけだった。
下級貴族よりも更に低い平民のガキを殴って何故私が咎められなくてはいけない!
畜生、理不尽だ。隣国に行ってる元婚約者に保護してもらおう。結婚してやると言えば、あの王子など捨てて私のところにくるだろうよ!
「支配人良かったのですか?金まで持たせて・・」
「ああ、気持ちはわかるが、命令書には殺すべからず。害すべからずだ。元王子を殺したら、お前達も含めて処分される。それに奴がここにいたら、怒った皆は殺そうとするだろう。殺した者は殺人犯になる。近隣の村で強盗をされても困る。だから、金を少しだけ持たせた」
「それじゃ、支配人が・・」
「ああ、俺は首チョンパだろうな・・」
・・報告を聞いた国王は、
「王子を害しおったな!イジメにたまらず逃げたに違いない。しばらくしたら、恩赦にして王族に復帰させるつもりだったのに、支配人を縛り首の刑に処す。だれか命令書の文案を持って参れ!」
ドドドドドドドガチャ
「何じゃ。王太子に貴族ども近衛騎士団長まで、余は忙しいのだ。すぐに王子の捜索隊を編制せよ!」
「父上、もう、多くの令嬢が汚され、貴族や平民までもが被害に遭いました。父上が甘い判断を下されたからです。北の塔へご隠居下さい。貴族院で隠居が可決されました」
「なにーーー反逆罪だ。兵士よ。王太子を拘束せよ!」
王の言うことを聞く衛兵はいなかった。
即位した王太子は
「あの鉱山は国の宝だ。あの幾何学を地面に書いて公式を理解しようとしてる子供を見てぶったまげた。なあ、妃よ」
「ええ、陛下、我々貴族も負けてはいけませんわ」
鉱山の支配人エコーには異例の軽い処分、戒告のみが下された。
☆☆☆一ヶ月後隣国
元第三王子は、隣国の王宮、元婚約者に保護を求めたが、当然に、門衛長にすら会えず兵に門前払いをされた。
金がつき路頭に迷っている。
「オーナー食い逃げ犯を捕まえました!」
「おい、こら、俺は王子だぞ。この料理は我国の味だ。食って何が悪い!むしろ金を寄越せ!」
「無茶苦茶言ってるぞ」
「・・・・・・・・・・・うそ」
私は、この店のオーナー、元子爵令嬢だった。こいつ、元第三王子のせいで、私は祖国を追放された。
・・・
初めての夜会に出席したとき、私は浮かれていた。そこを、この元第三王子の目にとまってしまった。
「いい女だな。夜伽をせよ。おい、この女貸せ」
「無体な・・私は婚約者です。どうかご勘弁を」
「一晩も借りない。一時間で済むぞ。グヘグヘグヘへへへ」
誰も助けてくれない。婚約者は顔をうつむけて、父母も遠くから見ているだけ。
あの第三王子は末っ子で陛下の寵愛を受けている。
どんな暴虐でも逆らったら、ケンカ両成敗で、下手したら、被害者の方が処罰される。
過去に、被害者の方が処罰された
☆☆☆過去の出来事
『う~む。王子の暴虐もわかるがのう。そちが、穏健に断る方法はなかったかのう。服も男の性欲を煽っておったのじゃないかのう?よって、ケンカ両成敗、暴行された令嬢は、修道院へ行くように、令嬢の教育不届きにつき当主夫妻は隠居せよ。王子は自室で三日間の謹慎の処分じゃ』
『ぎ、御意(そんな~)』
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拒んだら暴力を振るわれる。被害にあっても泣き寝入りするしかない。ならどうせ被害にあうのなら暴力の方がいいと私は反抗した。
「嫌です。絶対に嫌!」
と私は王子の手を払ったが、勢い余って王子の顔をはたいてしまった。
「いてぇ~怪我をした。不敬罪だ。衛兵、この女を国外追放にしろ!」
そして、国境近くの森に捨てられた。夜会用のイブニングドレスをまとった私は、無頼者の格好の的になると思ったが、違った。
「何だ、何だ、姉ちゃん。寒そうだな」
「ヒィ」と叫ぶことしか出来なかった私に、冒険者は毛布を掛けてくれた。
「アミー、お前、女だろう、世話してやれ」
「あいよ。一言多いよ。言わなくてもあたしは女だよ!」
「え、襲わないのですか?」
「アホウ、俺は女房と薬草を採りに来ている。アミーは女房だ。するか!」
「あんたのヒゲ面じゃ、御姫様こわいよね。でも、優しいんだよ」
「・・すみません」
そして、アミーさんの代えの庶民の服をもらった私は髪飾りで礼をし、イブニングドレスを売ったお金でしばらくすごし、軍の糧食部隊で職を得た。そこで今の旦那様に見初められて戦争が終わってから結婚。
旦那様は平民兵士からのたたき上げ、一代限りの準男爵に叙勲され、多額の報賞金を渡されても使い道に困っていた。
貴族社会を知っている私は庶民がちょっと贅沢をしたいときに来れるレストランを思いつき開業し、ここまで成長できた。
旦那様はレストランの警備主任や、たまに冒険者として、盗賊や魔物の討伐に行っている。
適材適所だ。
お金が貯まり、国庫への献金、夫の冒険者としての功績で、すぐに男爵の爵位がもらえた。領地無しの爵位だが、重要な意味を持つ。
男爵なので、他の準男爵位を持っている商会からの露骨な物理的な営業妨害は減った。
今は、夫と子供がいる幸せだ・・・この男が現れるまでは。過去のことを思い出した。婚約者に、父母に見捨てられた悲しい過去・・
このまま見逃して、過去を忘却することも出来る。
しかし・・
「フフフフ、貴方は隣国の元第三王子ですね・・知ってますよ。赤点王子、賄賂王子、脅迫王子、暴行王子、さすがに侍従に代わりに試験受けさせようとして、バレて問題になったのは笑ってしまいましたわ!そこまで頭が悪いなんて、ハハハハァ!」
「お前、殺す!」
バキ、バキ
私は殴られたが、すぐに従業員が止めに入った。
「お、お前、この方は男爵夫人だぞ。貴族への不敬罪になる。衛兵に・・」
「衛兵に連絡は待って!」
私は数発殴られるぐらいで済んだ。この国では貴族への暴行は衛兵に引き渡さずに、私的で裁くことが許される。
「何が起きた。おお、ナタリーよ。その顔は、誰がやった!」
夫が異変に気づき奥の部屋から飛び込んで来た。夫は、私を溺愛している。
「貴様――――辛い目に遭わせてやる。剣で胴体の真ん中で斬ってやる。お前はしばらく生きたまま、胴体と足が別れた様を見て絶望せよ!」
(これで、少しは乱暴された女性や下級貴族や平民の気持ちわかるかしら、反省するかしら、いいえ、この男は絶対に反省しない。ならばせめて長い間苦しんでもらいたい)
「旦那様、私に考えがございます。この男を眠らせていただけませんか?お願い!」
「おお、愛しいナタリーよ。わかった。賢いナタリーの考えに従おうぞ!」
クボ、バキ
旦那様が、元第3王子を殴って眠らせてくれたわ。
☆☆☆森
「な、何だ。ここはどこだ!」
森の中か、あの後、気絶させられて、ここに置いておかれたか。
畜生、あのレストランの名前とされたことは記憶したぞ。父上に言って隣国ごと討伐させてもらおう!
「痛い」
何だ。股間に血が・・「ない。ない。ない!大事なモノがない!」
「へ、俺の格好、女物のカツラが、付けられている。取れない。何か薬剤で付けられているようだ?服もイブニングドレスだ?変態みたいだ。痛い。それにしても痛い」
「グギ、グギ、(おい、人間のメスだ)」
「グギグギ、グゲフー(巣穴にさらって饗宴だー)」
「ゴ、ゴブリンだとーーーー誰か助けて~~~~」
数ヶ月後、ゴブリンの巣穴を討伐した冒険者グループはそこで、一人の女の格好をした男を発見した。
その男は「ヒーヒー」と弱く息をしている・・・
「なあ、リーダーこれは何だ?!」
「ああ、もしかして、自らコブリンに襲われたいという変態じゃ無いか?気持ち悪い。うわ、大事なモノは斬ってあるよ」
「こいつ、手足ないよ」
「ああ、ゴブリンが腹を空かせて、生きたまま食ったのだろうよ」
「それにしても、ゴブリン発生から、村娘に被害がなかったのも、こいつがゴブリンの性欲を一身に受け止めたからじゃないか?」
「「「だとしても、感謝はできないな~」」」
・・・
フフフフ、私は、あの森で親切な冒険者にあった。
しかし、あの男はゴブリンにあった。
私も女神教徒の端くれだけど、慈悲は無理だ。でも、せめて、私と同じ目に遭わせたのよ。
但し、女の格好をさせてね。森に追放しただけ。大事なところを斬ったのは、旦那様のアイデアだけどね・・
報告を聞いた男爵夫人は、最後呟いた
「これでやっと、前に進める」
最後までお読み頂き有難うございました。




