エピローグ 下
チェルさんからもらった謎の水を飲んだ翌日の朝。
起きて一番に腕を確認したが人の肌だった。鱗がないし、まだ人なのかな。
明日って何時間後だろう。一日? 二十四時間? なら後十五時間くらいかな。凄く長く感じる。
「エル。どうした?」
見上げるとチェルさんが不思議そうにじっと私を観察していた。見られていたのが少し恥ずかしい。
「えーっと、まだ竜になれていないみたいです」
なんとなく気まずくなって、チェルさんに恐る恐る言うとチェルさんが不思議そうな表情をした。
「なっている」
「え? まだ手は」
「竜の匂いがする」
匂い? とりあえず腕をかいでみるが、わからない。
「そうなんですか。竜になっても姿は人と変わらないんですね」
目が覚めたらヘビになっていたくらい考えていたのに、人っぽい。
ちゃんと竜になれているか、最終確認をするようにチェルさんへ伝える。
「そこまではない。長寿になるのと、俺の子を産めるようになるくらいだな」
「え? チェルさんの子? 産めなかったんですか」
知らなかった。確かにチェルさんは子供を産むには魔物にするか、人間になるかと言っていた。そういう事だったんだ。
「俺の子は蛇だからな」
ヘビの子供を産めるようにかわるんだ。
長生き出来て、チェルさんの子供を作れる。更に竜のメリットが増えた気がする。
「どうした?」
「あっ。いえ。えーっと、私もチェルさんの赤ちゃんを産めるんですね」
同意をするようにチェルさんを見るとチェルさんの視線がそれる。
「子供」
「あっ。いえ。急いで欲しいとかではないです。ただ、嬉しいです。チェルさんと同じになれたようで」
これから一緒に過ごしていくんだな。改めてそう思う。
嬉しいな。そのまま伝えるとチェルさんが固まったように動かなくなる。どうしたんだろうと見つめているとゆっくりと抱き寄せる。
「人でも蛇でも関係ないと思っている。だが一緒だと嬉しいな」
「はい。これからは一緒に暮らしていきますからね。一緒の方がきっと便利です。チェルさんが竜にしてくれてとっても嬉しいです」
そう言うとチェルさんの顔がゆっくりと近づき、そのままキスをした。それはいつもよりも甘くて幸せの味がするようだった。
勇者の誕生阻止のために蛇神様と姫が人々を救う話をちょっとだけ挟むけど、私はチェルさんともう少し後に産まれる子供達と魔王城でのんびりと幸せに暮らしていくんだろうな。
魔王が平和に生きる世界はどんな世界だろう。この後は誰も知らない。このゲームに続きがないことを祈ろう。
勇者様とマリーさんとどこかで幸せになれると良いな。魔王様を倒さないハッピーエンドはみんなで作ったんだから。
エリーゼとチェル達はこれからもちょこちょこ出てくる壁を魔王城のみんなで解決してのんびりと暮らしていくのかなと思っています。
ここまでお読み頂きありがとうございました。無事完結が出来て良かったです。
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