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解決しなきゃいけない?  作者: ホタル
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朝礼後のひと時

「おはようございます!」職場での1日は挨拶から始まる。


僕は保険会社に勤めている。朝礼を終え仕事に取り掛からねばと早速取り掛かる。

別に僕はまじめではない。むしろ、朝礼後くらいはぼんやりする時間があってもいいはずなんて持論を持っているようなやる気のない部類の男である。


先輩たちは、こんな僕をゆとりと呼ぶのだろう。

実際にゆとりと名指しされた事はないのだが、先輩たちと話をしている時に気付かされてしまうのだ。

あぁ、自分の考えはとても甘いんだなと――

そして、そんな自分に嫌悪感を抱いていることに。

しかし、そんな僕でも昨日のやり残した仕事を片付けるため、今日も机に向かわなければならないという事くらいは思うようで少し安心した。

そもそも、仕事をやり残すなという話なのだが、それには訳がある。。


「カズ!おはよう!」 

朝からとても爽やかに近づいてくる。

一人の女性、同期の絵美さんである。

自分からコミュニケーションを取ろうとしない僕にも色々と話しかけてくれる数少ない人物であり――

余裕のない朝を過ごさなければならない原因の1人である。

こうやって、仕事が溜まっていくのを他人のせい、ましてや、数少ない話し相手のせいにしているようではゆとり脱却には程遠い。


とりあえず、返さなきゃ・・・

「絵美さん、おはよう~」

「また、眠そうな顔して・・・ちゃんと寝てるの?」

「はは・・・今日は8時間も寝たんだけどね。――そんな僕の顔って覇気がないのかな?」

何気なく聞いただけなのだが、彼女は真剣な顔で――

「・・・潰れたブルドック・・いや、ビスカッチャ。」


「・・・ん??」

「なんてね!冗談だよ。普通の顔してるのに何かとぼけてるんだよね!」

何でそんな悲しいことを満面の笑みで言うのだろう・・・


そんな絵美さんは、朝礼後にみんなと顔を合わせ話をするのが習慣だ。その中でも同期と話をする姿は良くみられる。

仕事の確認がとれたり、先輩との距離も縮まるしで良いこと尽くめというのが彼女の考えらしい。

怠け者で自分からコミュニケーションを取ろうとしない僕にはとても真似できない芸当で憧れの念すら抱いてしまう。

また、彼女の本当にすごい所は話している相手を皆楽しませるコミュニケーションの高さである。

だからこそ、コミュニケーション能力の低下などの話題で、『ゆとり世代』と一括りにされるのが彼女に申し訳なくなる。


「何かごめんなさい。」

「いや!何があった!?」

「いや、ちょっとね。――ところで、絵美さん友達100人いる?」

「いやいや!そんないるわけないじゃん!本当にどうしたの?」

「絵美さんなら面白いし話し上手だしそのくらい余裕でいるかなって」

「いや、それならカズの方が変で面白いから!」

聞き捨てならない言葉が聞こえた気が・・


「・・・変?」

「え?・・・自覚・・・あるよね?・・・」

「・・・う、うん。」

「ごめん。」

「いや、別に・・・わかってたから。僕ちょっと、トイレに――」

「待って!冗談だから!てか、トイレそっちじゃないから!!!」

「ふぅ~。ごめん。取り乱しちゃって。それで、今日は『変な僕』に何の用??

・・・根に持ってるじゃん


そ、それなんだけどさ――

『人の心ってどうやったら読めるのかな?』

んっ??

「ん?だから、人の心だよ~!

・・・彼女はこんな突拍子もないことを当然のように聞いてくる。

いや、聞こえてはいるんだけど。今回は何を考えてるんだ・・・

だけど、彼女の質問にも慣れてきた――

「恐らく詐欺・・」

「カズもたいがいひどいよね。」

「え!でも、誰か騙したい人がいるんじゃ――」

今日イチのいい顔で何を言ってるんだろう。。

「もちろん冗談で聞いてるんだよね!?」

「も・・もちろんだよ。じゃあ、なんでこんな質問を?」

こいつ・・・少し本気だったな。

「お客様に商品をお薦めしたいの。」


今日も僕は、こういった質問に頭を悩まされ時間を搾取されてしまうのだ。


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