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いにしえのまじょ  作者: 凡人(ぼんど)
4/5

4話 バラの庭

「ネオジムーー!、ネオジムいるーー?」


昨日、魚を運び終えた後、ロージーに紹介された宿にとまった、

そこでの朝だった


「なーんだ朝っぱらから、ロージーじゃねえか、どうしたよ」


「あ、ネオジム、アギも、昨日のことでさ

 ヘンリーム様が直接お礼を言いたいからお屋敷に来てほしいって

 さっき使いの人が来たんだよ、今滞在されてるベリリーム侯爵様と

 そのご令嬢のナトリーヌ様からも直接お言葉をいただけるって、

 ご褒美までいただけるってーー、」


「あーー、そうかよ、良かったじゃねえか、いってこいよ、じゃあな」


「じゃあな、じゃなくて、ネオジムとアギもーー!」




「何でオレ達まで・・・朝飯も食ってねえってのに、

 しかも雨の中、めんどくせえ」


結局ロージーに無理やり起こされて、また領主の屋敷まで

つれてこられてしまった


「あ、ヘンリーム様だ、ほら、ネオジム、アギ、あいさつ」


「へいへい」


屋敷の中へと通され待っていると、執事長のプラセジオともう1人、

貴族らしい者が現れた、ここの領主のヘンリーム伯爵だそうだ、

ロージーに言われ、頭を下げて、とりあえず挨拶をする


「そなたたちが今回尽力してくれた者達か、

 プラセジオから話は聞いた、礼を言う、

 そしてロージー、お前も良い働きをしてくれた、礼を言う」


「も、もったいない、あたしはただ、

 ヘンリーム様のお役に立てればと思っただけで・・・」


オレ達は昼飯のためだったけど・・・ネオジムは思った


「そうか、いつもすまないな、助かる、

 実はな今回当家に滞在いただいているベリリーム侯爵様とナトリーヌ様も

 昨晩の新鮮な魚料理をたいへん喜ばれてな、

 お前達に直接お声をかけたいと、そうおっしゃるのだ」


「そ、そ、そんな、こ、侯爵様があたし達に・・・」


「そんなに畏まらないで下さいな、

 私も父も、昨晩の魚料理、とても美味しくいただきました

 きけばヘンリーム様のため、不断の努力をなさっているとのこと

 それほど慕われていらっしゃるヘンリーム様のお人柄に感銘を受けました

 そして、ヘンリーム様の大切な民であるあなた方に直接会って、

 お礼を申し上げたいと思ったのです、

 ほんとうにありがとう」


ヘンリーム伯爵の横に立っていたナトリーヌがロージーに言った


「い、いえ、そ、そんな、もったいない・・・」


「ヘンリーム卿、ワシからもこの者達に礼がしたい、

 何か望みのものを与えたいのだが、聞いてはもらえんかな」


ベリリーム侯爵が、ヘンリームに言った


「ベリリーム様、畏まりました・・・

 ロージー、侯爵様からのせっかくのお申し出だ、

 望みのものを申し上げてみよ」

 

「のぞみと、言われましても・・・あたしはただ、

 今までと同じにヘンリーム様の治めるこの土地で

 魚を売って生きていきたいだけなんです」


「ふむ、魚か、たしか川の上流に何やら魔物が住みつき

 魚が減っていると聞いた、

 その魔物を討伐すれば、お前への褒美となるか?」


「そ、そんな、ヘンリーム様に討伐依頼なんて、

 おそれおおいことです」


「いや、かまわん・・・、

 どうでしょうかベリリーム様、誰ぞ冒険者を雇い、

 これを討伐することで褒美としたいと存じますが」


「うむ、良い考えだ、そうさせてもらおう」


「その魔物ってのは、どんな奴だい?」


話を聞いていたネオジムが、言った


「こ、こら、ネオジム、勝手にしゃべっちゃダメだって」


ネオジムの背をコツコツとつつきながらロージーが小声で言った


「ああロージー、かまわない、しかし、困った 

 その魔物のことを私もよく知らないのだ、

 ロージー、代わりに答えてくれないか」


「は、はい畏まりましたヘンリーム様、

 で、では、ネオジム聞きなさい!」


「ロージー、なんでお前が偉そうなんだよ」


「だ、だまって聞くように!、ウオッホン、

 その魔物とは大きなヘビの形をした魔物で川の上流に住みつき

 魚を食べてしまう恐ろしい奴だ、

 その大きさは、なんと50メートルにもなる大蛇なのだ」


「へーー、50メートルか、ずいぶんでっけえな、

 でもまあ、なんとかなるだろうよ」


「そ、それは、当然だ、侯爵様が雇い入れる冒険者だ

 もう、討伐したも同然だ」


「だから何でお前が偉そうなんだよ、

 それに誰かを雇う必要はねえ、

 この町から出るとき、ついでだ、オレが斬ってやる」


「な、な、な・・・えーー!?、ネオジムが?なんでーー!?」


ロージーは声を裏返して驚いている


「なんでじゃねえ、オレは冒険者だっつったろうがよ」


「そなた腕におぼえがあるのだな、ならば任せてもよいか?」


「ああ、まかせてもらっていいぜ、領主様よ」


「そうか、しかしひとつ困ったことがあるな、

 これではロージーへの褒美をもう一度考えねばならぬな」


「あの、あの、あ、あのですね、も、もしも

 あたしの望む褒美をいただけるのでしたら・・・

 一つお願いがございます」


「ん?、なんだ、申してみよロージー」


「はい、実はその・・・ナトリーヌ様、よろしければまた、

 ヘンリーム様のお屋敷に魚料理を

 食べにいらしてはいただけないでしょうか」


「まあ、私を?、ご招待下さるのですね、はい喜んで」


「あ、あり、ありがとうございます、ナトリーヌ様」


「ヘンリーム様、ご迷惑でなければ私、またあなた様のお屋敷に

 おじゃまさせていただいてもよろしいでしょうか?」


「あ・・・は、はい!もちろんでございますナトリーヌ様」


ナトリーヌの言葉に応えるヘンリームはすこし緊張している様子だった


「父上、よろしいでしょうか」


「ははは、ああ、もちろんだともナトリーヌ、

 よろしくたのむヘンリーム卿」


「は、はい、ベリリーム様」


ヘンリームは緊張した面持ちで侯爵に応えた、そしてこちらに向き直した


「ふう、さ、さて、最後になったが、こちらの若い魔法使い殿への褒美が

 まだであったな、私にできいることであれば、そなたの望みをかなえたい

 遠慮なく申してみよ」


「うむ、ならばこの屋敷に魔導書の類があれば、それを見たい」


「そんなことでよいのか?」


「うむ、他に望みはないのでな」


「・・・そうか、プラセジオ、どうだ?当屋敷にそのようなものはあるか?」


「はいヘンリーム様、書庫の中にそれらしいものがあったかと存じます」


「そうか、あるか、それは良かった、では早速持ってきてはくれぬか」


「畏まりました」


プラセジオは部屋を出て、奥へと歩いていった


そして、数分の後、古めかしい書物をその手に持ち、戻ってきた


「こちらでございます、たいそう古い書物で、

 書かれている文字も古代のものらしく、

 当屋敷にもこれを読める者がおりません」


「そうか、それほどに古いものか・・・

 どうだ、アギと申したか、これはそなたの望むものか?」


「うむ・・・なるほどのう、」


「アギ、読めるか?」


ネオジムが聞いた


「もちろんじゃ、どれ試してみるか」


パタンと本を閉じ、アソウギは言った


「何?ここでか?」


「さて領主殿、今ワシらがいるこの場所の目の前にある美しい庭

 秋のバラが満開で近くで見ればさぞ素晴らしかろう」


今いるこの部屋からは外にあるバラの庭が一望できる、

その庭へと直接出られるようにもなっていた


「うむ、そうだな、このバラは当家の庭師が丹精込めて育てたもの

 是非、ナトリーヌ様に近くで見ていただきたかった、

 しかし、あいにくの雨、いたしかたあるまい・・・」


「まあ、私に?、でもヘンリームさま、ここからでもその美しさ、

 十分に分かりますわ」



「風となるすべてのものよ我が声をきけ、

 我が声につどい、理を守り、我が声に従え

 空間障壁魔法陣、展開・・・

 我が名はアソウギ、発現せよ!」


その魔法は空気で壁を作り、この庭そのものを

まるごとドーム状に覆い、雨を遮断するものだった

その効果によって、雨は遥か頭上で何かに遮られよけていく


「まあ、なんてことでしょう」


ナトリーヌは驚きの声をあげ、夢中で庭へと進み出た


「なんて素晴らしい・・・雨が、雨の粒がこの庭をよけて・・・

 なんて美しいのでしょうヘンリーム様、

 このバラ達を近くで見れば、雫の一粒一粒がバラの花びらの上で、

 まるで宝石のよう、

 これほど美しいバラを私、初めて見ましたわ」


「ナトリーヌ様・・・あなたに見ていただきたかったのでございます」


「・・・ヘンリーム様、」



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