1話 猫ちゃんが女の子に
その日は、いつものように学校をサボってネットを見たりゲームをしたり、猫とたわむれていたりした。
「セイ、また学校休んだの」
母さんが、大きな声で俺に問いかけてきた。時刻は、もう17時だ。母さんは、仕事でいつもこの時間帯に帰ってくる。父さんはもっと遅い。
「熱あったから」
そう答えると、母の大きな声がまた響く。
「いつもそれじゃん、まぁいいわ」
俺は、寝る時間まで余裕があるので、だらだらしながら本を読んだり、ゲームをしたりしながら過ごしていた。
「ただいまぁー」
渋くて、低い声が1階から聞こえてきた。俺は、父さんが帰ってくるといつも布団にくるまってスマホをいじる。そうこうしているうちに、気づいたら、24時だった。俺は、スマホを持ってベットに行き、布団を被り目を閉じると、白猫が布団に入ってきた。
「ニャー」
白猫が布団に入ってくるのは、いつものことだ。
「そうか、そうか、一緒に寝たいか」
そう言って俺は、猫のスペースを開けた。
「また、一日が終わったなー」
鳥のさえずりが聞こえ、ジューという目玉焼きを作る音が聞こえる。朝がきたのだろう。
「起きろ、ガキ」
女の子の声が、聞こえる。俺は、少しねぼけていた。
「はぁー誰ー」
俺は、そう問いかけながら起き上がろうとしたら、何かと頭がぶつかった。痛みが、頭の脳内を駆け巡り、俺は完全に目が覚めた。目を開けるそこには、少女がうずくまっていた。短い白髪に、白い肌、俺が見惚れていると少女がこちらに駆け寄ってきた。
「おい、セイお前何してくれるんだ」
少女は、頭をさすりながら怒っていた。その時、俺は疑問に思った。なんで知らない少女が俺のへやにいるんだ。それに、さっき俺の名前を呼んだ。俺は、急に混乱しだした。
「君は、いったい何者」
俺は、少女に聞くとポカーンとした後にため息混じりにこたえた。
「いや、お前が5歳の時から一緒にいる猫だが」
どうしてか、この女の子は、うちで飼っている白猫について詳しい。シロがうちに来た時に俺が何才かなんて家族しか知らないはず。さっきは、うずくまって見えなかったが、女の子の瞳の色は水色だった。瞳の色は、シロによく似ている。
「私は、シロっていう名前のお前さんの家の白猫だよ!」
女の子は、手の傷を俺に見せてきた。それはシロと同じに傷だ。
「これで、分かっただろう」
女の子、いやシロは、そう言って手を隠した。
シロは、少しいや、けっこうふてぶてしい。猫の姿の時からそんな感じだ。シロと話しているうちにまた、母さんの声が聞こえてきた。
「ご飯、出来たから降りてきてー」
目玉焼きやパンのいい香りが2階まで漂ってきた。とりあえず、朝食を済ませることにしようと思い、部屋のドアに手をかけた。
「私も、食べてやってもいいぞ」
どこまで、殿様気分なのだろうか。そんな事より、大事な事がある。シロを見て家族はどう思うのだろうか。
「お前、その姿で食べるのか?」
猫なんだから、キャットフードでいいんじゃないのかと思った。するとシロは、人差し指を左右に動かしながら、俺を煽っているようだ。
「じゃー、対抗策を聞こうじゃないか!」
俺は、片目を閉じながら聞くと、予想外の答えが帰ってきた。
「今日は、キャットフードじゃなく、お前と同じ物を私の部屋に持ってこい」
そんなの家族に、怪しまれると思った。
「てか、ここ俺の部屋だからな」
俺が、少し怒りながら答えると、少女は何か独り言を言い出した。
「痛っ」
俺は、思わず大きな声を出してしまった。全身が急にビリビリしだした。
「どうだ、我が魔法の効き目は!」
シロは、誇らしそうに答えて、喜んでいた。
「セイ、大丈夫か?」
これは、父さんの声だろう。父さんにしては、珍しく俺を、心配してくれているのだろうか。
「大丈夫だから」
俺は、痛みのに耐えながら、震えた声を、絞り出す。さっきシロは、魔法とか言ってたがそんなもんあるはずがない。俺は笑いながらシロに話しかけた
「お前、なに言っんの、魔法なんてあるわけがーー」
俺は、言葉に詰まった。何故ならシロは自分の片手に、炎の塊を右手に、水の塊が浮いている。これは、もう信じてやるしかないかと、思った。
「固まってないで、私の朝食を早く」
俺は、言いなりになる事にした。これ以上、痛い目をみるのは、御免だ。俺は、そう思い、ドアを半分開いた。
「後、言い忘れてたけどーー」
シロは、そこで一度言葉をきった後、軽い口調で二言目を喋り出した。
「この世界、2年後に滅ぶから」