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詩など(連載詩集/その他)

こぞのきみ、いまいずこ

作者: 檸檬 絵郎

 遥彼方さま主催「ほころび、解ける春」企画 参加作品。







 ほころびほどけたセーターの糸をまさぐりながら雪解けの庭に目を向けると、まぶしいくらいの陽光に満たされた視界にうんざりして、悲痛な小鳥の鳴き声に耳をかたむけることになった。


 ぴいぃぃぃいっ……!

 ぴいぃぃぃいっ……!


 我が身のきしむ音が聴きたい、メムノン鳥の哀鳴あいめいに……。今はただそう思うのだが、彼らはついに鳴きやんでしまった。


 過ぎゆく時はまぼろしかと、残像に問いかける。セピアがかったその残像には、アルカイックな笑みが浮かんでは私を魅了するばかり。目を閉じて、ジンジャーの香りがする辛口のココアにほっと息をつく。

 暖かな陽射ひざしは容赦なく近づき、青虫が現れて成虫になるころにはモンキチョウの奴らが黄色いひらひらを使って飛びまわり、私をひとりにさせるだろう。


 過ぎゆくものはまぼろしかと、残像に問いかける。




















 ぴいぃぃぃいっ……!






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― 新着の感想 ―
[一言] 春を迎える穏やかな光景と、なぜか物悲しく感じるセーターの糸を解く光景との対比が面白い作品でした。 ただセーターを解くだけだったら、今度は家人のために何に作りかえようか、とかみたいな明るい空…
[一言] 語られる情景の美しさに反して、主人公が過去を惜しむ姿が物悲しい。 まるで置いて行かれるような切なさを感じました。
[良い点] ぴいぃぃぃいっ……! がとても良かったです。
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