96 ハンバーグとクリームシチュー
追加のポップコーンを料理人にまかせ、リョウは最後の
ハンバーグにかかる。
「すみません、魔法で氷を作っていただきたいのですが」
料理人の1人に氷を作ってもらい、氷水を作り、残りの氷は
収納バッグに保存しておく。
氷も残り少なくなってきていたのでちょうどよかった。
「こうやって、肉に手の温度が移りにくいように冷やしたほうが
いいんですが、無理にすることはありません」
リョウはそう言いながら氷水で両手を冷やす。
ハンバーグに氷を入れて焼くといいとかいうのも聞いたことがあるが
今回はそれはナシである。
ハンバーグのタネを手に取って、軽く丸め、左右の手の間で
お約束のキャッチボールをする。
「こうすると、中の空気が抜けて崩れにくくなるのです」
説明して、熱したフライバンにタネを乗せる。
「中央が膨らむので、あらかじめ指で押してへこませておきます」
料理長に言われて、料理人がメモをとっている。
片面が焼ける間にソースを作る。
潰したトマトにワインとバターと水飴を加え塩コショウして
煮てアルコール分をとばす。
焼いていたハンバーグを裏返して、もう片面も焼いて、
中まで火が通ったら、盛り付けてソースをかけて完成である。
ハンバーグを焼くのは、難しいだろうから、料理人には
まかせないで、続けて焼いて、全部で10個できた。
3個は自分の収納バッグへ入れ、3個は手伝ってくれた料理人たちに
試食とお礼代わりに提供する。
そして、見物人たちへ、ポテチやフライドポテト、カラアゲ、
ポッポコーンをふるまうように指示する。
もちろん、自分用に確保したものはシチューも含めて
収納バッグに入れてある。
「カテリーナ様、出来ましたのでお席へどうぞ」
うながした席には、すでにウォルター、パルマ、オリビアが
座って待っている。
メイドたちに手伝ってもらって料理を運ぶ。
「今回の料理は、ハンバーグとクリームシチューです。
飲み物の果実ジュースにはお酒が入っていますので注意してください。
お好みでパンの代わりにフライドポテトもどうぞ」
4人とも期待に満ちた様子で食べ始める。
それを見ている周りのうらやましそうな目が怖いがポテチとかで
我慢してもらうしかない。
「うは!何だこりゃ!美味すぎる!!」
ウォルターが思わず叫ぶ。
観客の目がさらにうらやましそうになるからヤメロ!
「肉とタマネギの組み合わせがとてもいいですわね。ニホンでも
人気料理なのですか?!」
パルマが言う。
「はい、家庭料理としてはもちろん、専門店があるぐらい人気です。
簡単に見えて、おいしく作るにはいろいろと作り方にコツや工夫が
必要な料理ですね」
「専門店!いいですわね。このハンバーグ・・・でしたか、これなら
必ず繁盛しますわ」
さすがドミニク商会を経営するメイフィールド伯爵家の令嬢である。
商機には聡いようだ。
そういうことなら、ここではチーズ入りやハンバーガーなどの
バリエーションのことは言わないで、後で教えたほうがいいだろう。
「こちらの白いスープの名前は何でしたか?」
カテリーナが聞いてくる。
「クリームシチューと言います。今回は豚肉にしましたが
鶏肉や海老、貝なんかもおいしいですね。野菜も今回は
シンプルにしましたが、他の野菜やキノコとかを入れてもいいです」
「牛肉はダメなのですか?」
「ダメなことはありませんが、牛肉は別にビーフシチューという
料理がありますので、そちらにすることが多いようです」
「おう!!次回はそれを作ってくれ!!!」
横からウォルターが言うが。
「次回は、タコとイカを使った料理をとカテリーナ様が
ご所望ですので」
「そんなこと、望んでいません!」
カテリーナが言うが。
「さっき食べると言ったのは嘘だったのですか?!」
「うぐぐ・・・」
「タコとイカ・・・」
ウォルターも尻込みをしているが、
「タコやイカもおいしく料理できるのですか?」
パルマが食いついてきた。
「皆様のお口に合うかどうかはともかく、うちの国では
普通に食べております」
「わかりました。そのときはまた私も加わらせてください」
さすがミニアンジェリカ。好奇心と度胸は一番のようである。




