95 爆裂種
今日も更新しちゃいますよv
蓋付きの深めの鍋を用意するリョウ。
そして、トウモロコシの袋を手に取る。
「ふっふっふ・・・これから何が起こっても、あわてて
騒いだりしてはいけませんよ」
カテリーナに向かって、わざと怖さを煽るように言うリョウ。
とても悪い顔である。
「な、何が起きますの?」
「それは、起きてからのお楽しみです」
トウモロコシを鍋に一掴み入れ、バターを入れて蓋をし、
弱火~中火ぐらいの火にかける。
数分後、鍋の中から「ポンっ」と何かが破裂するような音がした。
「今、なにか・・・?!」
カテリーナがそう言ったとたんに続けて、「ポンポン」と
連続して音がする。
「ひっ!」
思わず後ずさるカテリーナ。
リョウはと見れば、音を気にしないで鍋を軽く揺すっている。
ポンポンポンポンポンッ・・・
さらに破裂音は続く。
「こんなものかな?!」
音がしなくなった鍋を火から下ろし、蓋を開けるリョウ。
鍋の中を見て、満足そうな笑みを浮かべたリョウは、鍋に塩を入れ
かき混ぜた後、大皿に出す。
そこには、白く膨れた物、そうポップコーンがあった。
やはり、このトウモロコシは爆裂種だったのだ。
「トウモロコシは少ししか入れなかったのに、なぜそんな量に?!」
カテリーナが言ったことは、見ていた者全てが思ったことだった。
「爆裂種という名前のとおり、こうやって炒ると破裂して
何倍にも膨らむのです」
そう言ってリョウは毒見のために1つ食べる。
「カテリーナ様、味見をどうぞ」
そう言われたカテリーナは、恐る恐る1つ摘んで口に入れる。
「んっ・・・変な感触ですわね?!」
そう言って、さらに摘んで食べるカテリーナ。
「私の国では、ポップコーンと呼ばれる庶民のお菓子です。
トウモロコシの中でもこの爆裂種と言われるものじゃないと作れません」
正確には、ポン菓子機があれば出来るが、この世界にそんなものはない。
「おっと、あまり食べるとメインの料理が入らなくなりますよ」
カテリーナが止まらなくなっていたので、ポップコーンを
取り上げるリョウ。
そして料理長にも皿を差し出し、食べるようにうながす。
つまんで食べる料理長。
「そういうわけで、このトウモロコシはポップコーン専用の
品種だったのです。失敗どころか大当たりですよ」
リョウにそう言われた料理長だが、あまり嬉しそうではない。
「参ったな・・・」
「え?!」
「料理においてはそれなりに自信があったんだが、こんなことさえも
知らなかったとは・・・」
自嘲ぎみに言う料理長。
「見向きもされない食材が、調理しだいでおいしくなるのは、わりと
よくあることですから。・・・タコやイカは食べたことがありますか?」
「「「「 え?!!!!! 」」」」
料理長ばかりか、カテリーナや料理人たちも驚く。
「ああ、やっぱり食べないんですね。もったいない・・・」
「タコやイカを食べるのか?!あの海の悪魔を!」
料理長が言う。
「おいしいですよ。機会があれば、そのうち・・・」
そう言ってリョウはカテリーナの方を向く。
「カテリーナ様もそのときはぜひ食べて下さいね」
とてもいい笑顔で言うリョウ。
「い、いや・・・私は・・・その・・・」
はっきり嫌だとは言えないカテリーナ。
「これはぜひ次回のためにタコやイカを仕入れておかないと
いけませんね」
これで、また作ってくれとは言われないだろうと思うリョウだが。
「・・・ってやる・・・」
「え?!」
「食ってやるから、また来て料理を作るんだぞ!!」
気合を入れて言ったためか、口調まで変わっているカテリーナ。
(ありゃ~~、失敗だったか。また来ることになっちゃった・・・)
心の中で思うリョウだが。
(だったら、本当に食べてもらおう)
悪い笑顔で、タコとイカの仕入れを決めたのだった。




