94 学園で調理
とりあえず、汚すとまずいので貴族服から平民服に着替える。
そして、調理室にどんな材料があるかをチェックするリョウ。
まず肉である。
鶏肉と豚肉は好きに使っていいが、牛肉はステーキ用の
いいやつは勘弁してくれと料理長に言われた。
リョウとしても、そんなにいい牛肉は、ステーキか焼肉ぐらいしか
使い道を思いつかないので問題ない。
野菜のほうも、タマネギ、トマト、ジャガイモ、キャベツなど
普通に揃っていた。これらは市場で朝、仕入れられるので
好きに使っていいそうだ。
リョウが、穀物らしい袋を開けて見ようとすると、料理長が言った。
「ああ、すまん。それは仕入れに失敗したやつだ」
「これ、トウモロコシですよね?!どこが失敗なんですか?」
リョウが聞く。
「珍しい品種だというんで買ってみたんだが、皮が硬くて
煮るのにも時間がかかるし、味も薄くていまひとつなんだ」
料理長の言葉に、リョウはピンとくる。
「まさか爆裂種?!」
「何ですの?!その物騒な名前は?」
スポンサーとしての権限だと、調理室についてきたカテリーナが言う。
「トウモロコシの品種の1つです。もし、これが爆裂種なら
失敗どころか、大当たりかもしれませんよ」
「ほ、ほんとか?!」
料理長が驚いたように言う。
「まだ、そうとは決まったわけではないので・・・」
そう言ってリョウは何を作るか考える。
食堂にいる見物人たちは、期待した眼差しで調理室を見ていた。
(見物人たちにはポテチとかをふるまって、カテリーナ様たちには
メインディッシュっぽいものを食べてもらうか)
まずは、料理人たちにジャガイモの切り方の見本を見せて、
同じように切ってもらう。
鶏肉も下ごしらえして、赤ワインに漬け込んでおく。
これで、ポテチとフライドポテトとカラアゲの用意ができた。
次は、豚肉、にんじん、タマネギ、ジャガイモを角切りにして
鍋に入れ、少量の油で軽く炒めてから水を入れ煮込む。
ローリエがあったので包丁で傷を入れて香りがでやすく
したものを2枚入れる。
タマネギをみじん切りにしてフライパンでしんなりするまで炒め
冷ましておく。
牛肉と豚肉を細かく切り、7:3ぐらいの割合で混ぜ、さらに
包丁で叩いて細かくする。
それに冷ましたタマネギ、卵、牛乳、細かくちぎったパンを入れ
塩コショウをして混ぜ合わせる。
ナツメグはないみたいなので、少量の赤ワインを入れてみた。
そう、今回のメインはハンバーグである。
次に、フライパンにバターを入れ、火にかけて溶かし、
ふるいにかけた小麦粉を入れて炒める。
焦げ付かないように休みなく混ぜなければいけない。
そして、料理人に指示して、牛乳を少しずつ入れてもらい
ダマができないように注意して混ぜる。
これで、ホワイトソースが出来た。
煮ていた鍋からローリエを取り出し、そのスープでホワイトソースを
のばしていく。
充分に混ざったら、のばしたホワイトソースを鍋に入れ、
塩コショー白ワインで味を整えてクリームシチューの完成である。
収納バッグから、揚げ物用具セット一式を取り出し、油鍋を火にかける。
この国には、油で揚げる調理法が一般的ではないようなので
どこでもポテチやカラアゲなどが作れるように揃えておいたのだ。
案の定、料理長から『それは何だ?』という質問が出る。
「熱した油で食材に熱をとおす『揚げる』という調理法の道具です」
「先ほどのカラアゲもこれで作ったのですね」
カテリーナが言う。
「はい、食材をそのまま揚げるのを『素揚げ』、小麦粉をつけるのを
『カラアゲ』と言います。他にも『テンプラ』や『フライ』などが
ありますね」
そう言いながら、油の温度が上がってきたので、切ったジャガイモを入れる。
「まずは、ジャガイモの素揚げですね。薄く切ったものはポテトチップス、
略してポテチ、厚く切ったものはフライドポテトと呼ばれます」
揚げたポテトを荒い網を乗せた皿にとって塩をまぶす。
この網と皿も揚げ物用に買って組み合わせたものだ。
下ごしらえした鶏肉も水分を軽くとって小麦粉をつけて揚げていく。
「鶏肉はカラアゲですね。略すときはトリカラが正しいはずなんですが、
この調理法は鶏肉が一番人気のためか単にカラアゲというと、
鶏肉のカラアゲのことになってしまいました」
「では、他の材料のときは何と言いますの?」
カテリーナが質問する。
「そのときは、材料の名前をつけるだけですね。『鯵のカラアゲ』
みたいなかんじです」
そして、残りのジャガイモと鶏肉を料理人に指示して揚げてもらう。
ハンバーグは最後に焼くとして、いよいよ爆裂種の出番である。




