90 子息と令嬢
「リョウ様、ずるいですわ!」
オリビアが文句を言ってくる。
もちろん、ジュリアとのデートの件である。
「では、オリビア様が何とかしてくれるわけですね。
ジュリアさんは、ノーレッジ子爵家に仕えてるわけだし、
私は護衛の依頼は終了したので、もう関係ないですよね?!」
「うぐぐ・・・」
リョウにそう言われては、どうしようもない。
正直、オリビアもデートしてくれと言いたかったが、
今回のお家騒動が収まるまでデートどころか、
学園の外に出ることもできない。
「あと、なぜここにいるんですか?」
ここは学園の面会室。
リョウが、ウォルターとパルマに面会を申し出たところ
事務員に、ここで待っていてくれと、通されたのだが、
なぜかオリビアとメイドがついてきた。
「いいではありませんの、ここまで一緒に来たんですから
最後までお付き合いするのが、筋というものです」
オリビアはそう言うが、いったいどういう筋なのか?
そのとき、ドアがノックされた。
「どうぞ」
リョウが声をかける。
「失礼する」
「失礼しますわ」
男女の学生とメイドが入ってくる。
男の学生は。、身長175cmほどの筋肉質の美丈夫で、
顔はフェルナンデスによく似ている。
女のほうは、アンジェリカをそのまま若くしたような
ややタレ目で色白の美少女である。
「お初にお目にかかります。リョウと申します。
ご実家から手紙を預かって参りました」
リョウは、椅子から立ち上がって挨拶をする。
オリビアは立ち上がり、会釈だけした。
「ウォルターだ。その服は、おじい様のものではないか?」
手紙を受け取りながらウォルターが言う。
「はい、イレーネ様からいただきました」
「ほう、おばあ様が・・・」
そう言いながら、椅子に座るウォルター。
「パルマですわ。略紋入りの服をいただけるなんて、よほど
気に入られたのですわね。しかも名前呼びを許されるなんて。」
「はい、お会いしたガリア家、メイフィールド家の方々全て
名前呼びを許してくださいました」
「うちの両親まで?!それはすごいわね」
パルマが驚く。
「ところで、なぜオリビア様までここに?
たしか、ご不幸があってご実家に帰られていたと・・・」
パルマは椅子に座り、オリビアに話しかける。
「はい、葬儀も終ってこちらへ帰る途中にブラッドウルフに
襲われまして、それをリョウ様に助けていただきました」
「まあ、それは大変でしたわね」
「はい。そして、ここまでの護衛を依頼したのですが、
おかげで無事に着くことができました」
「それは、よかったですわね」
そう言って、手紙を読み始めるパルマ。
2人が手紙を読む間、メイドさんたちが淹れてくれた紅茶を
飲みながら待つリョウたち。
ポテチが残っていれば、だしてあげられたのに残念である。
カラアゲはあるが、紅茶にカラアゲって、どこのデブキャラだと。
「ほほう、オーガとリッチーを討伐・・・か」
ウォルターが手紙を読みながら言う。
「さっきブラッドウルフも倒したと言ったな。何匹だ?」
「全部で22匹ですね」
「22匹?!!」
ウォルターたちが驚く。
「先ほど、その倒したブラッドウルフをドミニク商会で買い取って
いただきました。ありがとうございます」
リョウがパルマに礼を言う。
「1人でやったのか?」
「はい、私が斬った以外は、矢の穴も火魔法で焦げた跡もないからと
高く買ってくださいました」
リョウがウォルターに答える。
「あと、こちらをどうぞ」
リョウがお土産を取り出す。
500mlほどの広口瓶に入った水飴、100mlほどの
おしゃれなガラス瓶に入ったメープルシロップ、そして
500mlほどの瓶に入ったウイスキーである。
「私が協力してガリア領で作り始めたものです。
こちらのメープルシロップはまだ量産に何年かかかりますが、
このウイスキーという強いお酒と水飴という甘味料は
数ヶ月で特産品になる予定です」
説明しながら、2人にお土産を渡す。
「ウイスキーは、ワインよりも3~4倍強いので気をつけてください。
今回の物はまだ熟成が足りないので、果実水などで割るほうが
いいと思います。
水飴は、甘さを加えるために、飲み物や料理に入れてください。
また、このように・・・」
リョウは別の水飴を収納バッグからだすと、2本の棒で水飴を
すくいとり、お約束のコネコネをはじめた。
「こねて白くして舌触りをよくしたものをそのまま舐めてもよいかと」
そう言って、2人に水飴のついた棒を1本ずつ渡す。
受け取り、舐めはじめる2人。
その間に、リョウはもう1回コネコネして、棒を2人の
メイドに渡す。
「「ありがとうございます」」
嬉しそうに受け取り舐めるメイドたち。
そのとき、オリビアがリョウの服のすそをツンツンとひっぱった。
オリビアの顔を見て、『はいはい、わかりましたよ』という感じで
またコネコネしてオリビアとメイドに渡す。
満足そうに水飴を舐めるオリビアであった。




