82 黒幕
「何となく、うさんくさい男でしたね」
リョウがミックについての感想をもらすと、
「今回の事件の黒幕みたいなものですから」
オリビアがとんでもないことを、あっさり言う。
驚くリョウたちだが、オリビアは涼しい顔で言う。
「詳しくは、部屋に戻ってからで」
そして、こちらは、そのミックの部屋である。
吟遊詩人も同席している。
「どうして、さっさと殺ってしまわなかったんだ?!!!」
ミックが吟遊詩人を責める。
「無理だ!少しでも変なそぶりを見せたら、あの男に
斬られていた。あの男、とんでもない腕だぞ。
首根っこを掴まれたときは、死んだと思ったぐらいだ!」
実は、この吟遊詩人は、代々伝わる暗殺者の家系の1人である。
遅効性の毒のついた針でターゲットを刺すという手口で
依頼を果たしてきた。
「しかも、あの男、これを渡してきた」
吟遊詩人こと暗殺者は、リョウがピックにした牙を渡す。
「これは?」
「魔物使いが襲わせたブラッドウルフの牙だよ。
次はお前がこうなるぞという脅しだ。見抜かれていたんだよ!」
実は、リョウは単にピックによさそうな物はと思って
牙を選んだだけであった。
そして、これから歌や演奏に精進しろという意味で
渡したのだが、暗殺者は勝手に深読みをしている。
「俺は降りる!あんな化け物、相手に出来るか!」
そう言って、暗殺者は部屋を出て行った。
ミックは渡された牙をじっと見る。
「くそっ!!」
そして床に叩きつけた。
「あの小娘、いったいどこで辺境伯家の相談役なんていう
大物と繋がりを持ったんだ?!」
たまたま街道で出会っただけである。
「せめて、あの役立たずの魔物使いたちの口を
ふさがなくては・・・」
現在、リョウはオリビアの説明を聞き終わったところだ。
ジェシカやメイド、護衛たちも全員集まっていた。
要するに、オリビアの叔父が子爵家ののっとりをたくらみ
その援助をムラーズ商会がしているということだ。
でなければ、叔父に魔物使いや襲撃者である
ならず者たちを雇う金などない。
オリビアは一人娘であるため彼女がいなくなれば
叔父の息子が跡継ぎになる可能性が高い。
今までは、彼女の祖父である前子爵が抑えていたのだが
亡くなったため、ついに計画を実行に移したのだろう。
叔父の息子が子爵になれば、見返りにムラーズ商会は
子爵領の商業を牛耳ることになる。
「・・・というよくある話です」
オリビアがため息をつきながら言う。
「ミックは、こちらの状況を調べに来たのですね」
「失敗の原因を探りに来たのでしょう。リョウ様がいなければ
やられていた可能性が高いですから・・・」
オリビアはそう言って、少し考え、決心したように言う。
「リョウ様、たかが子爵家ではご不満かもしれませんが
私の伴侶となって、領を統治していただけませんか?!」
貴族の一人娘として教育を受けたとはいえ、15歳の少女
(この国では成年だが)から言われたのだ。
受けるつもりはないが、断わり方が大事だと思案するリョウ。
そして、
「・・・」
言葉を発しようとしたときに、部屋の隅から、
「それは無理!!」
断りの声がした。
キャラが増えてきたので、そろそろキャラ一覧を
載せようかと思ってます。




