80 略紋
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いつ途切れるのか?!
その後、護衛たちの怪我はもちろん、襲撃者たちもヒールした。
襲撃の証人にするためである。
結局、襲撃者で生き残ったのは5人と魔物使いであった。
そして現在、彼らをロープで数珠繋ぎにして
馬車でひっぱって、無理やり走らせている。
「おらおらぁ!走れ!!」
「倒れて、地面で摩り下ろされたいか!」
馬車の後方から護衛たちの襲撃者たちを追い立てる声が
聞こえてくる。
「やはり、命令したのは、身内の方でしたか?」
リョウがオリビアに尋ねる。
「ええ、思ったとおり叔父でしたわ。その息子も
共犯でしょうね」
死んだリーダー格の男は、オリビアの叔父の腹心で
面識があったそうだ。
そして、他の生き残りを尋問すると、命惜しさに
あっさりと白状したらしい。
元々、金で雇われた者たちなので忠誠心などない。
そして、叔父の腹心の首は切り落として、証拠として
収納バッグに入れてある。
あとは、オリビアの父である子爵に連絡して
襲撃者と首を引き取ってもらって、向こうで叔父たちを
処分してもらうだけだ。
リョウは、それ以上の事は聞かないほうがいいと思ってやめた。
もっとも、本当にこれで襲撃が終りなのかわからないので
学園にオリビアを送り届けるまでは、気を抜けない。
2時間ほどで、宿泊予定の街に着く。
街の警備隊に襲撃者たちを預け、監視を頼み、
いくばくかのお金を渡す。
賄賂のように感じるかもしれないが、今回は貴族の内部の
トラブルなので迷惑料と監視料のようなものだ。
そして、街の代官への書類を提出し、国許へ連絡の早馬を頼む。
宿にチェックインしたときは、とっくに日は落ちていた。
主に貴族や豪商などが泊まる宿で、護衛用の部屋が
主用の部屋の隣にあるものを選んだ。
ジュリアとメイドが主用の部屋なのはわかるが、オリビアに
懇願され、リョウも一緒である。と言っても、ソファーで
仮眠をとりながらの見張りであるが。
そして、リョウはまた着替えている。
オリビアが食堂に食事に行くのでエスコートしてくれと
頼んだのである。
オリビアに恥をかかせないように今回はイレーネから
貰った前ガリア辺境伯の服である。(結局、いろいろと
靴やベルトなども含め3セット分ぐらい貰ってしまった)
「まあ!!」
オリビアが感嘆の声をあげる。
ジュリアやメイド、そして今回の護衛(他の護衛は交代で
休憩や食事をとっている)も驚く。
「どこから見ても、上級貴族の御曹司ですわよ」
嬉しそうにリョウの左腕に右腕をからませるオリビア。
「前ガリア辺境伯の奥様のイレーネ様からいただきました」
「略紋入りの服を下賜されるなんて、
よほどリョウ様を気に入られたのですね」
「え?!!!」
オリビアの言葉に驚くリョウ。
「略紋って・・・?」
「この刺繍ですわ。ガリア家の紋を略したものですわ」
「そんなもの着て、問題ないのですか?」
「功績があったり長年勤めた家臣に服を下賜するのは
よくあることで、着るのも問題ありません。ただ、その若さで
もらうことは稀なので、本当に御曹司と勘違いするかも
しれませんが、勘違いするほうが悪いですわね」
オリビアの説明で、ほっとするリョウ。
まあ、問題があるならイレーネがくれるわけないのだが。
「では、リョウ様、参りましょう」
オリビアはリョウの左腕にからませた右腕にさらに
力を入れギュッと胸を当てる。
大きさは足りないが、これはこれでよいものであった。




