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73 追走

リョウはバルダの北門から王都への街道を時速20kmほどの

速さで走っていた。

マラソンのオリンピック選手が走るぐらい速さである。


もっと早く走りたかったのだが、馬車や荷車、通行人が多く

これぐらいの速さにおさえていた。


そして、バルダからだいぶ離れて、通行する者もまばらに

なったところでスピードを上げ、時速50kmほどで走る。


追い抜かれた者がびっくりしているが、気にせずに走る。

カーブでインからアウトから、直線でブチ抜き、気分は

どこかの公道レース漫画の主人公である。


「ヒャッハ~~~~!!!」


・・・どこかの世紀末漫画の悪役のほうであった。




「ん?!」


リョウの前方に数人の騎馬の護衛をつけた馬車が走っていた。

馬車の作りからして、貴族のものであろう。


さすがに、お貴族様の馬車をブチ抜くのはまずいと

速度を落とすが、このまま付いていくわけにもいかない。

どうしようかと考えるリョウであった。




そして、貴族の馬車では、護衛の女騎士がリョウに気づいていた。

彼女の名はジュリア。視聴感覚強化スキルを持つため、

偵察や危険察知役として仕えている。

「オリビア様、後方から何かが付いてきています」


オリビアと呼ばれた貴族の娘が彼女の主人である。

ノーレッジ子爵の長女で15歳、王都の学園に在学中。

祖父の訃報で実家に帰って葬儀に出て、現在王都に戻る途中である。


オリビアは、後部の窓際に席を移り後方を見る。


「よく見えないわね。ジュリア、何が付いてきてるの?」

馬車や護衛の馬が巻き起こす土埃つちぼこりが邪魔して

いまいちよく見えない。


土埃つちぼこりではっきりとはわかりませんが、大きさから見て

馬ではないようです・・・あ!!」


「どうしたの?」


「人です。人が走って付いてきています!」


「人?!身体強化持ちの飛脚かしら?」


この国では、手紙や小物の運搬業として飛脚が存在している。

さすがに馬よりは遅いが、馬の費用がいらない分、安価で

あるため、近距離限定の商売として十分成り立つのだ。


特に走ることに特化した身体強化スキルの持ち主は

他の者の2倍以上の稼ぎがあるという。


もっとも、スキル持ち飛脚で最高クラスの者でも

最高時速30kmほどなので、リョウの身体能力と

身体強化がいかに桁外れなものかがわかる。


「1人なら盗賊が挟み撃ちをするためというわけでも

ないでしょうし、たまたま進行方向が同じというだけかしら?!」

オリビアが言う。


「この速さに付いてこれると言うことは、飛脚なら

相当優秀ですね」


現在走っている街道は路面の状態がいいため、馬車は最大巡航速度の

時速25kmほどで走っている。安定して付いてこられるのは

飛脚でもトップクラスだろう。


「とりあえず様子を見ましょう。ジュリア、念のため

他の方向にも注意しておいてね」


「了解しました」




リョウは5分ほど馬車に追走していた。

道が曲がっていれば、ショートカットして馬車の前に出て

そのままぶっちぎろうと思っていたのだが、あいにく

直線道路が続いている。


「う~~ん、参ったな。どうしよう?」

そう独り言を言ったときに、リョウのサーチにひっかかるものがあった。


「ありゃ!これは?!」

サーチの範囲を狭くして精査する。


「やっぱり教えたほうがいいか・・・」

決心して一気に速度を上げ、馬車に追いつく。


護衛の騎馬がリョウに気づき、近づいてくるので大声で叫ぶ。


「前方やや左にモンスターの群れだ!!20匹以上いるぞ!!」

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