69 第2回リサイタル
「なぜカミーユがお前と一緒にいる?!」
エドワードがつっかかってくる。
「アンジェリカ様に言われたからですが」
めんどくさいな~と思いながらも、感情を出さないように
リョウが答える。
「お前のような平民がカミーユに触れるんじゃない!」
エドワードはそう言ってリョウと繋いでいたカミーユの
右手をとろうとするが、
「いや!!」
カミーユはリョウの後ろに隠れる。
「カミーユ!なぜ逃げる?!」
そう言いながら回り込もうとするエドワードの額に、
リョウは右手の人差し指をあてると、押し返す。
「え?!!!」
そのまま、指一本でさらに押し返され、困惑するエドワード。
さらに押され、仰け反る体勢になり、ついにこらえきれず
尻餅をつく。
その場の執事やメイドたちが信じられないものを
見たかのような顔をする。
一番信じられない顔をしているのは、エドワードだが。
「カミーユ様が嫌がっておられますよ、エドワード!さ!ま!」
あくまでも普通に話すリョウだが、最後だけわざとらしく
区切って強く言う。
「あらあら、どうしたのかしら?!」
アンジェリカがわざとらしく明るく言う。
今、夫のクロードと一緒に食堂に来たようだ。
「ほらほら、遊んでないで、席に着きなさい」
何もなかったことにするようだ。
「失礼しました。カミーユ様のお席はどこですか?」
「お母様とリョウの間に座る!」
カミーユが元気に答える。
「じゃ、こちらにいらっしゃい」
リョウは、アンジェリカの隣の席の椅子を引き、
カミーユを座らせ、その隣の席に座る。
クロードは俗に言うお誕生日席に、エドワードは
アンジェリカの向かい側に座る。
メイドが食事を運んできて、夕食がはじまる。
そして、特に何もなく終った。
というより、メイフィールド夫妻によって、何も
ないように押さえられた。
エドワードがリョウに対して敵意を持っていることは
明らかだった。
彼にしてみれば、確かに剣や格闘の腕は超一流かもしれないが、
たかが平民ではないかという考えが、ずっとつきまとっていた。
平民なんぞ、貴族の言うことを聞くのが当たり前だ。
なのに、なぜ母はリョウに気を使うのか?!
しかもカミーユと仲良く手をつないでいたこと、
指一本で尻餅をつかされたことなどで、さらに敵意が高まった。
そして、食事中もリョウを貶めるようなことを
言おうとしたが、全てシルフィード夫妻に止められ
たしなめられたのだ。
リョウにしてみれば、特にエドワードに思うところも
ないし(面倒だとは思っていたが)、カミーユと
楽しくおしゃべりするほうが大事だったので無視である。
そのことが、ますますエドワードを不機嫌にさせていたのだが
リョウとしてみれば、明日になれば王都へ出発する身であるので、
気にしないことにした。
そして今、サロンで第2回リョウ・F・カーラ・リサイタル
童謡部門が終ったところである。
カミーユ・この愛らしい少女にねだられて、断ることなど
できなかったし、メイフィールド家全員、彼女を溺愛して
いるので、止める者など皆無であった(執事・メイド含む)。
カミーユはリョウの歌に合わせて楽しそうに飛び跳ねる。
結局、リサイタルはカミーユが疲れて眠くなるまで
1時間ほど行われた。
そしてカミーユは、メイドに寝室に連れられて行った。
「ご苦労だったね、とりあえずお茶でも飲みたまえ」
メイフィールド伯爵がリョウに声をかける。
「ありがとうございます」
さすがにリョウも疲れていた。
「礼を言うのはこっちだよ。カミーユがあんなに
楽しそうに踊るなんてね。ますます、可愛さアップだったよ」
間違いなく、相当な親バカである。
一休みした後、蒸留器の説明や麦芽糖の作り方、料理や
お菓子の作り方の説明が始まった。




