表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/520

68 カミーユ

メイフィールド伯爵夫妻が玄関ホールから自室へ向かう

廊下に出たところ・・・


「お母様!!」


7~8歳ぐらいの女の子がアンジェリカに抱きついてきた。


アンジェリカはしゃがんで女の子を抱きしめ頬にキスをする。


「私のかわいいカミーユ。なんでお出迎えして

くれなかったの?」

女の子の頭を撫でながら、アンジェリカが聞く。


「だって・・・」

「すまない、私のせいなんだ」

メイフィールド伯爵が代わりに答える。


「手紙に書いてあったリョウがオーガやリッチーを

倒した話をしたときのカミーユの反応があまりにかわいくてね、

リョウはどんな人かと聞かれて、トロルやサイクロプス

みたいかもしれないと言ってしまったんだ」


トロルやサイクロプスみたいなのは、すでに人じゃない

と思われるが。


「まあ、それで怖がって、出迎えにいなかったのね」

アンジェリカはあきれたように言う。


「まったく、あなたったら・・・、ま、いいわ・・・」

アンジェリカはカミーユを抱き上げる。


「誤解を解いてくるわね」

そう言って、夫と別れる。


「お母様、どこに行くの?」

カミーユの問いに答えずに、アンジェリカは歌を歌い始めた。


「雀の子~・・・ チュンチュン・・・♪」

うろ覚えだが、リョウが歌っていたものを真似してみた。


「お母様、何?その歌!」

カミーユが興味津々で聞いてくる。


「もっと聞きたい?」

「うん!!」


「今から会うお兄さんがいっぱい歌ってくれるわよ」


「ほんと?!!!」


カミーユ、わくわくである。


そうしているうちに、メイドがドアの横に立っている部屋に着く。


アンジェリカ目配せをすると、メイドがドアをノックして言う。

「アンジェリカ様です」


「どうぞ」


リョウの返事を聞いて、メイドがドアを開ける。


「リョウ、うちの末娘のカミーユよ」

アンジェリカが抱いていたカミーユを下ろす。


「カミーユです」

スカートをつまみ少し持ち上げるカーテシーと

言われる挨拶を決めるカミーユ。


そのあまりの愛らしさに一瞬固まるリョウ。


マリエールも十分に可愛いし大人になれば美人になることは

ほぼ間違いなしであるが、少しツリ目で、ジャンルで言えば

悪役令嬢タイプである。

しかし、カミーユは少しタレ目で大きな瞳の純真無垢じゅんしんむく

ヒロインタイプである。


(おっと、いけない)

あわててリョウは片膝をつき目線を合わせ、胸に手をあてて挨拶する。


「リョウ・F・カーラにございます」


「お母様、この方が歌ってくださるのですか?」

振り向きながらカミーユが言う。


「そうよ」

とアンジェリカ。

「そういうわけで、マリエールたちに歌ってあげた

歌を歌ってちょうだい」


何が『そういうわけ』なのかわからないリョウだが、

言われたとおり童謡を歌い始める。


「まあ、優しい声だわ」

カミーユ、リョウの歌声を気に入ったようだ。


喜ぶカミーユにのってきたリョウは、身振り手振りを

交えて、動物のマネをしながら歌う。


つられて、カミーユもそのマネをする。


5~6曲歌ったころには、リョウはすっかりカミーユに

気に入られていた。


「そろそろ夕食に行かないといけないわね。

リョウ、カミーユを食堂に連れていってちょうだい。

私は着替えてくるわ」

アンジェリカはそう言って、メイドに案内するように指示し

部屋を出て行った。


「カミーユ様、行きましょうか」

リョウが、左手を差し出す。


カミーユは、一瞬戸惑ったが、右手でリョウの左手を握る。


メイドに案内されながら・・・


「・・・衣まとわせ~♪ 揚げればトンカツだよ~♪・・・」

トンカツ行進曲を歌うリョウ。


「面白い歌!何の歌ですの?」

カミーユが聞いてくる。


「私の国でとても人気のあるトンカツという料理の作り方の

歌ですよ。ガリアでアンジェリカ様にも食べていただきました」


「え~~~、お母様、ずるい!」

ふくれるカミーユ。


「大丈夫ですよ。作り方のレシピを渡しましたので

そのうち、料理人が作ってくれます」


「リョウは作ってくれないの?!」


「私は、王都の冒険者ギルドから呼び出されてるので、

明日の朝、ここを発たないといけません」


「だめ。もっと居て!」


「用事が終わったら戻ってきますので、そのときは

ゆっくりお世話になりますから」


「え~~」


などと話しているうちに、食堂に着いた。

トンカツ行進曲


もちろん、そんなものはありませんw

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ