65 盗賊
「うん?!これは・・・?」
ガリア領からメイフィールド領に入ったところで、
リョウのサーチにひっかかるものがあった。
「どうしたの?」
アンジェリカが聞く。
リョウは、さらに細かくサーチして言う。
「1.5kmほど先で、誰かが盗賊に襲われてるようです」
「え?!あなた、そんなことまでわかるの?!」
リョウのサーチについては、シュタイナーから聞いていたが
そこまでの距離と精度があるとは思わなかった。
「サーチ範囲を狭くすると、同じ魔力でも距離と
精度が上がるんです。それで、どうしましょうか?」
リョウが対応をアンジェリカに聞く。
「クラリス、全体停止の合図を!」
アンジェリカの指示で、メイドのクラリスが窓に近づき笛を吹く。
ピィーーーッ!ピピーー!!
馬車と護衛の馬が速度をゆるめる。
そして、停止した馬車に護衛隊長のデルムッドが
近づいてきた。
「何かありましたか?」
馬車から降りながらリョウが言う。
「1.5kmほど先に、盗賊に襲われてる人がいます。
襲われている人は2人で、盗賊の数は11人です」
「え?!何で、そんなことがわかるんだ?!」
驚くデルムッド。
「私の魔法です。とりあえず先行しますので、
奥様と対応を相談して下さい」
そう言って、身体強化をかけ、走り去るリョウ。
「ええっ・・・?!おい!待てよ!!」
デルムッドが止めるが、そのときにはリョウは
数10m先であった。
2人の男女が抱き合って震えていた。
年齢はどちらも30歳ほどであろうか。
たぶん、夫婦であろう。
2人は荷物の積まれた馬車を背にしており、そこを
10人ほどの男達に取り囲まれていた。
男達は、それぞれ武器を持ち、下卑た笑いを浮かべている。
「ここんとこ、獲物がいないので仕方なく襲ってみたが、
こんな上玉が隠れていたとはな」
盗賊の頭らしい男が好色な目で女性を見ながら言う。
「積み荷も金も全部やる!妻だけは見逃してくれ!」
夫が盗賊に訴える。
「ああ、もちろん貰うさ。お前の命もな!」
ケッケッケという下品な笑い声を上げながら
頭らしい男が言う。
そのとき、盗賊の1人が土煙をたてて近づいてくるものに
気がついた。
「お頭!何かく・・・ぶぎょっ!!」
その盗賊が言い終わる前に、その何かは盗賊にぶつかり、
ぶつかられた盗賊は進行方向にいた2人の盗賊を巻き込みながら
ふっとんでいった。
残りの盗賊たち全員が、その何かを見る。
何かは、人、リョウであった。
身体強化をかけたリョウの走る速さは時速60kmをこえる。
その速度をのせた上に強化された肉体の体当たりである。
某大学アメフト部の反則タックルなどの比ではない。
わかりやすく言うなら、ビ○・ゴ○ルド○ーグのスピアーの
10倍の衝撃である。わかりやすいのは、ごく1部の人だけだが。
唖然としている盗賊たちを尻目に、リョウは、
しゃがみこんで抱き合っている夫婦にゆっくりと近づき、
片膝をついて目線を合わせ、尋ねる。
「お怪我はありませんか?」
「は、はい。かすり傷ぐらいです」
夫が震えながら答える。
妻は、夫の胸に顔をうずめ、横目でリョウを見ていた。
「それはよかった」
リョウが人なつっこい邪気のない笑顔を2人に向ける。
それを見た2人は、まだ危機が去ったわけではないのに
なぜか『助かった』と安堵した。
そして、立ち上がりながら振り向くリョウ。
「たぶん、偶然だろうが今回は、ほぼ被害がないということで
武器を捨てて降伏するなら、命だけは保証はしてやる」
リョウは、そう言いながら収納バッグから剛斬丸を引き抜く。
剛斬丸を見て、ひるむ盗賊たち。
「だが、抵抗したり逃げようとしたら・・・死ぬぞ!」
笑顔をうかべながら言うリョウ。
それは先ほどとは真反対の邪悪な笑顔だった。




