62 カラアゲ
さて、正解率100%のカラアゲである(笑)。
部位は、モモと胸肉にした。
変化をつけるために胸肉にはパセリのような香草を
カタクリ粉に混ぜて揚げた。
モモ肉は普通に小麦粉である。
手羽などの、その他の部位も揚げておく。
メイドたち用である。
千切りにしたキャベツを乗せた皿にカラアゲを盛り付け
トマトソースを添えて3品目の完成である。
あとはパンをそえればいいだろう。
メイドたちに食堂まで運んでもらう。
「今日はレイナさんの分もありますので、食べてください」
料理人たちの分と合わせて4人前を調理台に置いて
リョウも食堂に行く。
食堂には全員揃っていた。
「今日のメイン料理は、鶏肉のカラアゲです。
トンカツと並ぶ人気料理で、単にカラアゲとも呼ばれます。
こちらのスープは、鶏の骨から出汁をとって
鶏の団子を入れています。こっちは、茶碗蒸しと言われる
料理でプリンに似ていますが、甘くないです。プリンは
冷たいほうがおいしいですが、茶碗蒸しは暖かいほうが
おいしいので、冷めないうちに召し上がってください」
「うむ。では、いただこうか」
シュタイナーの言葉に一斉に食べ始める。
「ああ、やさしい味だねぇ。食欲のないときでも
食べられそうだね」
茶碗蒸しを食べたイレーネが言う。
「このスープ、深い味わいだわ」
と、アンジェリカ。
「何?!この団子、コリコリしてますわ!」
マリエールが驚く。
「団子には、そのコリコリとした歯ごたえを楽しんで
もらえるように、軟骨を混ぜています」
リョウが説明する。
「まあ、そんなことまで考えて作るの?!」
マーガレットが驚く。
「カラアゲおいしい!トンカツと同じぐらい好き!」
フェルナンデスも気に入ったようだ。
「このカラアゲも、うちの食事のメニューに加えないと
いかんな。リョウ、料理人たちに教えてやってくれ」
シュタイナーが言う。
「はい。先ほど見ておりましたので、たぶん作れると
思いますが」
「旦那様」
メイドがシュタイナーに報告する。
「お食事中、申し訳ありません。フォートラン様が
いらしております。リョウ様に緊急の知らせが
あるとのことです」
「エリックさんが?!・・・食事が終わってからでも
いいだろう。とりあえず、サロンで待っていただきなさい」
シュタイナーが指示する。
急いで食事を済ませ、先に1人でサロンに向かうリョウ。
「お待たせしました。緊急の知らせとは何でしょう?」
「その前に聞きたいのだが、君のフルネームは、
リョウ・F・カーラで間違いないかね?!」
エリックが聞く。
そういえば、ギルドの登録のときも、エリックに
自己紹介するときもリョウとしか名乗っていなかった。
「すみません。私の国では国民すべてに苗字があるのです。
この国では貴族と間違えられるようなので、リョウとしか
名乗っていませんでした。
確かに、フルネームは、リョウ・F・カーラです」
「いや、確認のためで、責めているわけじゃないんだ」
そう言いながらエリックは、居住まいを正して懐から
取り出した書類をリョウに見せる。
「Bクラス冒険者リョウ・F・カーラ殿、王都ギルドから指名依頼だ」
「え!!王都?!指名依頼?!」
リョウは、書類を受け取り、それを見ながら言う。
確かにリョウ・F・カーラと書いてあった。
「先ほど、早馬がそれを持ってきた。君に王都の冒険者ギルドまで
来てほしいとのことだ」
冒険者登録をして、というかこの世界に来てまだ1週間ほどしか
たっておらず、当然王都に知り合いなどいない。
「なぜ王都の人が私を知っているんでしょう?」
「わからん。骸骨竜事件の報告書は昨日出したばかりで、
王都にまだ着いているはずがないし・・・」
王都まで早馬でも2日かかるという。
報告書は緊急ではないので、3~4日はかかるそうだ。
「第一、私は君のフルネームを知らなかったんだ。
王都に、君のフルネームを知っていそうな人はいないのかね?」
エリックが聞く。
「この大陸に着いて、はじめて会ったのがアンジェリカ様の一行で、
そのままこの領都ガリアに来ましたので・・・。
しかも、私がフルネームを名乗ったのは、ほんの数人で
全員、ここにいます」
わけがわからないリョウであった。




