60 樽
おかげさまで、60回連日更新できました。
これを期に数日間休ませていただきます。
再開したら、またよろしくお願いします。
「今日は、ハタクック醸造所とブンゲ醸造所に行って
話をして参りました。どちらも2~3日中に経営者が
来るとのことです」
サロンでアルフレッドが報告をしている。
「あと、樽ですが、普通のオーク樽のほうは問題ないですが
内側を焦がすほうは、やったことがないので待ってくれとの
ことです。とりあえず、5L樽を10個、買って参りました」
「わかりました。お疲れ様です」
リョウが返事をする。
ワインは瓶で熟成が進むが、ウイスキーやブランデーは
木の樽で熟成させる必要がある。
出来たてのウイスキーやブランデーは無色透明で
味気ないが、樽で保存することにより木の成分が
入り込み、色と風味をもたらすのだ。
このとき、樽の内側を焦がすことによって、木に細かい
ひびが入り、成分が染み出しやすくなるとともに
炭化した部分は不純物を吸着してくれる。
(匂いの吸着剤に使われる活性炭と同じ原理)
ちなみに、ウイスキーの種類として『スモーキー』と
言われる煙の匂いのするものがある。
たまに勘違いしている人がいるが、樽を焦がしても
このスモークタイプにはならない。
スモークタイプは、ピート(泥炭)と言われるものを
燃やして、原料の麦芽を乾燥させる。そのとき香りが
麦芽に移り、それがスモーキーな香りをもたらすのである。
「では、今日はこれで失礼します」
リョウは、サロンを辞して、部屋に戻る。
ベッドに横たわりながら考えるリョウ。
(明日は、アンジェリカ様のお土産のウイスキー蒸留と
夕食作りか・・・。俺、この世界に来てから働きすぎじゃね?!)
リョウが、この世界に来てからはや一週間。
いろいろと疲れがたまっているようだ、特に精神的に。
物も情報もあふれている日本に比べ、ここは娯楽も気晴らしも
はるかに少ない。いろいろと、いっぱいいっぱいであった。
(蒸留酒の件が一区切りついたら、ゴジール共和国に
物見遊山の旅行にでも行くか?!)
米があるなら、それに付随する食べ物や調味料、文化が
あるかもしれない。
日本っぽい文化は無理でも、中国南部やタイ、ベトナム、
東南アジアなんかに似た文化が期待できるのではないか?!
(うん!一週間から10日ぐらいかけて、食べ歩きしよう!
これだけやってるんだもん、それぐらい許されるよね!)
そう決めるリョウ。
しかし、それを許さない者がこの領都・ガリアに
近づいていたのであった。
翌朝、作業小屋で作業の用意をしているリョウたち。
今日の手伝いメイドの名前は、タクトである。
そこにアルフレッドに案内され、ガラントがやって来た。
「よう!追加の蒸留器、持って来たぞ」
「え?!もう出来たんですか?」
注文したのは昨日の昼すぎである。
「3個目だから、作り方も慣れたし、なにより美味い酒が
飲めると思ったら、一気に作ってしまっていたわい。
がっはっは・・・」
少しあきれるリョウだが、かまどは3つあるので、蒸留器が
3つになったのは、正直ありがたいことであった。
「リョウ様、ガラント様と今後の話や契約がありますので
いらしてください」
アルフレッドが言う。
「わかりました。レイナさん、タクトさん、追加の
蒸留器のセッティングをお願いします」
「はい」
「かしこまりました」
あとを2人にまかせ、リョウとガラントは、
アルフレッドについて行った。
日本のスモーキーなウイスキーといえば、白○ですが
原酒不足で販売休止になってしまいました。
冷蔵庫に入っている○州を飲み終えたら、
販売再開まで、何年かお別れです_l ̄l○




