57 命の水
翌朝、ガリア家の執事、アルフレッドはハタクック醸造所に
来ていた。
馬車から降り、従業員らしい若者に声をかける。
「すみません、責任者とお話がしたいのですが」
「は、はい!」
領主の紋章のついた馬車を見て、何事かと不安に
なっていた若者は、あわてて建物の中に飛び込んでいく。
「親方!!領主様のお使いの方が来てます」
「あん、領主様だぁ?!」
醸造所の責任者のグレンが出てくる。
「ガリア家執事、アルフレッドと申します。どうぞ、
お見知りおきを」
「どうも、ご丁寧に。ここの責任者のグレンだ。
ん~~と、すまない、丁寧な言葉使いは苦手なんで
そこは勘弁して欲しいんだが」
「いえいえ、かまいませんよ。とりあえず、落ち着いて
話が出来る所はありませんか」
「ああ、入ってくれ」
グレンは、この前、リョウと話した部屋に案内する。
「先日、リョウ様から、ある程度の話は聞かれていると
伺っていますが」
アルフレッドが話しを切り出す。
「ああ、ドワーフ酒を造ると言ってたが・・・」
「それが、これです」
アルフレッドは、200mlほどの瓶を2つ取り出す。
「どうぞ、お試しください」
「もう出来たのか!!」
グレンは席を立ち、グラスを持って戻ってくる。
「こちらが約20度、こっちが40度です」
「ああ、大丈夫だ。飲めばわかる」
グレンも酒神の加護持ちのようだ。
「熟成が足りないが、悪くないな。特にこっちの40度の
やつは、強い酒が好きな奴にはたまらないだろうな」
グレンが、それぞれを飲んで感想を言う。
「協力していただけますか?!」
「いや、一応ここを任されちゃいるが、こういうことは
オーナーの了解を取らなくちゃいけねぇ。2~3日待ってくれ」
「了解しました。よいお返事を期待しております」
「このドワーフ酒は、もらっていいんだろ?!」
「はい、オーナー様に試していだだいて下さい。
それから、この酒は、ウイスキーという名前ですので
これからはそう呼んでください」
「ウイスキー、・・・いい名前だな」
「はい、ある国の言葉で『命の水』という意味だそうです」
「『命の水』か。こりゃいい!!はっはっは・・・」
「では、失礼いたします」
その後、アルフレッドは、ブンゲ醸造所にも行き、
説明をした。
その頃、リョウはレイナと麦芽糖を作っていた。
一晩置いておいた麦芽糖は、ほぼ反応が完了しドロドロ
だったものが、サラサラになっていた。
それを布で濾した後、煮詰めて水分をとばすのである。
ついでに、樹液を煮詰めてメープルシロップも作る。
今日の手伝いメイドのココナと3人でそれぞれの
担当の鍋を焦げないようにかき混ぜている。
先に麦芽糖が出来たので、残りの2つの鍋のメープル
シロップを交代で混ぜる。
リョウは抜け番のときに、紅茶を淹れ、ミルクと
出来たばかりの麦芽糖を入れる。
「ココナさん、交代しましょう。お茶を淹れたので
どうぞ」
「ありがとうございます。いただきます」
ココナは飲もうとしてカップを見て、
「え?!このお茶、白く濁ってますが?!」
びっくりして言う。
「ミルクと今作った麦芽糖が入っています。
私の国で、ミルクティーと言われるものです。
心配しないで飲んでください」
おそるおそる一口飲むココナ。
「あま~い!おいしい!!」
気に入ったようだ。
「レイナさんも交代したら作りますので、もう少し
がんばってくださいね」
リョウは、おいしそうにミルクティーを飲むココナを
見ていたレイナに声をかける。
「は、はい!がんばります」
この日は、蒸留作業はないので、仕事は午前中で終った。
コミケ2日目終了。
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