509 その後の2人
・ガリア蒸留所
「遅~~~~~~~い!!!」
アイオロスがリョウを怒鳴る。
「こういうときは、朝イチに来るもんだろうが~!」
「すみません、そのつもりだったんですが、急な来客があったもので・・・」
言い訳をするリョウ。
「ふん、まあいいわい。さっさと連続式蒸留器だったか、その説明をしろ」
アイオロスの言葉に、リョウは用意していた連続式蒸留器の図面を広げる。
「ほほう・・・!」
アイオロスは、その見事な図面に驚嘆の声を上げる。
創造神の加護や戦神の加護も、もちろんすごく役にやってはいるが、
リョウの使命である『文化を発展させる』ことに一番役に立っているのが
技芸神の加護である。
おかげで、リョウが自分でも驚くほどの見事な図面が引けた。
図面を前に説明をするリョウ。
「ふむ・・・、このモロミ(発酵した酒の原料)を冷却機で温めるのが
1つのポイントじゃな」
「はい、そうすることで燃料を節約することが出来ます」
「そして、窯の火を落とさずに続けて蒸留できるのか」
「うまくいけば、90度ぐらいまでアルコ-ル度数を高められますが、
50~60度ぐらいで十分でしょう」
「そうじゃな、あまり高くても蒸発するだけじゃし・・・」
2人は、食事も忘れて夜まで話をするのであった。
・王都教会
ガチャッ
ドアが開き、祈祷室からマーティアが出てきた。
「マーティア様、お疲れ様です」
「お疲れさん」
朝からずっと待機していたコリーヌとグレイシアが出迎える。
「2人とも、ご苦労様でした」
マーティアの言葉に2人は頭を下げる。
「グレイシア」
「はい」
ギュッ!
「えっ?!!」
いきなりマーティアに手を握られ、戸惑うグレイシア。
「リョウ様と同行させてあげられなくて、ごめんなさいね」
「い、いや、マー様には、命を助けてもらった恩があるし、最終的には
自分で決めたことだから・・・」
グレイシアがマーティアに仕えることになったのは、彼女が魔物に
襲われて負傷したときに救ってもらったことが、きっかけであった。
「それでもです」
マーティアはグレイシアを抱きしめる。
「でも、ずっと一緒ですからね」
「そ、それはもちろん・・・」
グレイシアもマーティアを抱きしめ返す。
「あ~~ん!グレイシアさんばっかり、ずるいです!」
コリーヌが文句を言う。
「うふふ・・・、もちろん、あなたも大事ですよ」
マーティアはグレイシアと離れてコリーヌの手を握る。
「でも、あなたは好きな人が出来たら、その人と一緒になっていいのよ」
「え・・・?!グレイシアさんは違うんですか?!」
と言うコリーヌに、
「俺にはリョウがいるからな」
と答えたグレイシアだが、
「えっ・・・?!」
「あれっ・・・?!」
2人とも違和感を覚えた。
「それって、まるで・・・」
「マー様も、リョウと・・・」
「うふふふ・・・」
2人の疑問を放置して、微笑みながら立ち去るマーティアであった。




