508 聖女の寄り道
神界に転移したマーティア。
「上手くいったようじゃの・・・」
「はい、おかげ様で・・・」
創造神ライゼンの言葉に頬を赤く染めながら答えるマーティア。
「ちょっと強引じゃったから、リョウが反発しないか心配じゃったが、
上手くいってよかったわい」
「まあ、リョウさん、押しに弱いッスからね。それに、ああいう場面で
マーティアさんの名前が出るということは、わりと意識してたという
ことじゃないかと思うッス」
「それもそうじゃの。あとは、リョウがこの世界に残ってくれれば
一番いいのじゃがのう・・・」
(あ!またですわ!)
ライゼンの言ったことに、マーティアが違和感を覚える。
以前にあった会話の中でも、ライゼンは、『この国』でも『この大陸』
でもなく『この世界』と言った。
まるで、この世の中が他にいくつもあるような言い方だ。
だが、他の世界といっても、マーティアには想像もつかない。
(まあ、そのうちリョウ様が話してくださるでしょう・・・)
とりあえず、そういうことで自分を納得させるマーティアである。
「まだ、時間に余裕があるようじゃの。このまま王都の教会に戻っても
よいが、どうせならついでにどこかに行ってみないかの?!」
ライゼンがマーティアに言う。
「おっ!それはいいッスね。マーティアさん、お役目で色々大変ッスから
たまには羽を伸ばしたほうがいいッスよ」
ナミカも同意する。
「いいのですか?!」
「もちろんじゃよ。食べ歩きでもショッピングでも好きにしたらいいのじゃ」
「行くのなら、危険がないように、あたしが同行するッスよ」
「ありがとうございます。では・・・」
マーティアは、少し考えて言った。
「・・・会いたい人がいるのですが・・・」
港町サタルナの教会に併設された孤児院。
いつものようにロビンは子供たちの相手をしていた。
「ちわ~~っ、ロビンさん、ご無沙汰ッス」
「わぁ~~~!!!」
ナミカに挨拶されたロビンが、叫びながらバックジャンプして距離をとる。
「な、な、な、何をしに来たぁ~っ??!」
ロビンは、前回、ナミカに会ったときに腹筋を撫でまわされたのが
軽いトラウマになっていた。
「そんなに警戒しないでくださいッスよ。リョウさんから、あたしが
味方だって聞いてるッスよね?!」
「そ、そりゃ、聞いてるけど・・・」
信用できないという目でナミカを見るロビン。
「今日は、この人を紹介しに来たッスよ」
「へ?!」
「今日は、ロビンさん」
マーティアが、ナミカの後ろから出てくる。
「わぁ~~・・・」
「おっぱいデカっ!」
「すげえ!」
「きょぬーだ!」
子供たち、というか男の子たちから声が上がった。
女の子たちは、思っても我慢して口には出さない。
こういうとき、この年頃の男の子は基本的にアホである。
マーティアは、子供たちの声を気にせず一気にロビンとの距離を詰める。
「ティアと申します。よろしくお願いします」
そしてロビンの手を握りながら言う。
「は、はいっ・・・!」
「ライナちゃんの言ったとおり、ステキな方ですのね」
「えっ・・・?!あんた、ライナを知ってるのか?!」
ライナとは、以前、この孤児院にいた女の子で、魔力視のスキルを
持っていることがわかったため、保護と教育のため、王都の教会の
孤児院に移されたのだ。
「はい、私は王都の教会から参りました。実はナミカさんも教会の関係者
でして、ここに来たついでにロビンさんにお会いしたいと・・・」
ナミカは創造神の部下であるから、当然、創造神を祭る教会の関係者でもある。
「ああ、そういうことか・・・」
微妙だが、とりあえず納得したロビン。
「これからも来ますので、仲良くしてくださいね」
「ああ、よろしくな」
そして、マーティアとナミカは、この教会の責任者である司祭の部屋に行く。
「 !!!!!! 」
聖女が来たことに驚く司祭に口止めをして、これからもロビンに会いに
ここに来ることを言う。
そして、その後、リョウの知らないところでロビンと仲良くなる
マーティアであった。




