502 姫と騎士
お待たせしました。
更新、再開です。
子供、特に女の子には甘々なリョウである。
普通の状況なら『うん、君が大きくなったときに私がまだ結婚して
なかったらね』なんてやんわりと言って、そのうちうやむやになるのを
待つのだが、貴族の場合は幼い頃から正式に婚約することは普通に
あることなので無理である。
まして、父親であるシュタイナーが同意しているのだ。
というわけでマーティアを口実にすることにした。
さすがに聖女であるマーティアを押しのけて正室にしてくれなんて
言えるはずがない。
リョウはマーティアに創造神からの使命を話したことはない。
しかし彼女は、ある程度見抜いていると感じている。
もともと頭のいいマーティアなので、神たちとの会話やリョウの
行動などで推測したのだろう。
実際に、リョウが実は黒髪黒目であることを見抜いていた。
リョウを貴族待遇であるAクラス冒険者に推薦したり、ツヴァイヘンダー
:ミーティアや防具の『黒』を作ってくれたりしたのも、リョウの
安全のためというのもあるが、創造神様からの使命を少しでも果たしやすい
ようにということではないだろうか。
さらに、リョウとマーティアは、共にめったにいない創造神の加護を
持つ者なので、ある意味、創造神を師とする兄妹弟子のようなものである。
なので今回のこともリョウとしては、後できちんと説明すれば彼女は
理解して協力してくれるだろうと思っていた。
結果的に、このことを利用すればリョウを取り込もうとする貴族への
牽制になるかもしれないとも思っていたリョウである。
翌日、このことがもとで、思いもしなかった展開になるのであるが・・・。
「聖女マーティア様です」
「「「「「 えええええ~~~~っ??!! 」」」」」
リョウの爆弾発言に、部屋の中の者たちは全て驚愕の声を上げた。
・・・いや、1人だけ反応が薄い者がいた。
ジュリアである。
その様子に気が付いたイザベッラ。
「あまり驚いてないみたいだな?!ジュリア」
「うん、まあ、そうだろうなと思ってたからね」
「「「「「 えええええ~~~~っ??!! 」」」」」
さらに驚く周りの者たち。
「聖女様、リョウが他の女の子と仲良くしてたら機嫌が悪くなってたし」
「「「「「 えええええ~~~~っ??!! 」」」」」
「視察の名目でリョウとデートしてたし」
「「「「「 ええええ~~~~っ??!! 」」」」」
「リョウに下賜した剣の銘を『ミーティア』なんていう聖女様の
お名前ともろかぶりの名前にするし」
「「「「「 えええ~~~~っ?! 」」」」」
そして、さすがに皆が驚き疲れて反応が薄くなってきたところに決定打がきた。
「だいたい、リョウが聖女宮に宿泊してる時点でおかしいわよね」
「「「「「 えええええええ~~~~っ?????!!!!! 」」」」」
「男性は聖女宮には、宿泊どころか立ち入ることさえ禁じられている
のではないのかね??」
シュタイナーがジュリアに尋ねる。
「そうなのですが、なぜか普通に宿泊してました」
理由を知らないジュリアは、そう答えるしかない。
「そうなのかね?!」
シュタイナーがリョウにも聞くが、
「なぜか普通に泊まってましたね・・・」
リョウもそう答えるしかない。
リョウは気にしていなかったが、最初にマーティアと会ったときに、
聖女宮に招かれたことが、そもそもおかしいのだ。
「そういうわけで、マリエール様、すみませんが結婚は無理です」
と言うリョウ。
「どうしてもダメですの?」
涙ぐむマリエール。
「すみません、でも、私がマリエール様の味方であることは変わりま
せんから。何かあったら必ずお助けしますよ」
マリエールの手をとり、片膝をついて言うリョウ。
姫君に忠誠を誓う騎士のようである。
「本当ですの・・・?!」
「はい!たとえ1万の軍勢を相手にしたとしても、すべて討ち果たして
みせましょう!」
「まあ!!」
マリエール、表情がぱっと明るくなる。
「約束ですわよ!」
「もちろん!」
リョウは、マリエールの手を両手で握りながら、彼女の目を正面から
見つめ、本気であることを示す。
「リョウ!」
嬉しさでリョウに抱きつくマリエール。
リョウの『1万人を相手にしても』という荒唐無稽な言葉に、
周りの者たちは、子供相手だから大げさに言ったと思って、
抱き合う2人を微笑ましく見ていたが、
「なあ・・・、あれって本気だよな・・・?!」
「ええ、リョウなら本当に1万人相手でもやってしまいそうね」
微妙な表情でリョウとマリエールを見るイザベッラとヴァレンティーナの
2人であった。




