497 妖精(フェアリー)と行商人
あわてて荷馬車を急停車させる行商人。
「わわっ!なっ、なんだいあんたは!危ないだろ?!」
「そうだ!轢かれたいのか?!」
手綱を握っていた商人っぽい男とその横に座っていた
護衛っぽい男が文句を言う。
だが、リョウはそれに取り合わず、大きめの声ではっきりと言う。
「『魔物と思われるものであっても、意思の疎通が出来る者は
人種に準じるものと見做す』というこの国の法律は知ってるな?!」
「なっ、なんだよ?!いきなり!」
「いいから答えろ!!」
「ああ・・・、知ってるよ!これでいいかい?!」
不機嫌そうに言う行商人。
「何なんだよ?あんたは?!」
護衛の男がゆっくりと御者台から降りてくる。
「じゃあ、なぜ荷台に妖精が積んであるんだ??説明して
もらおうか!」
馬車の荷台を指さして言うリョウ。
「はあ?!妖精?!何のことだ?!変ないいがかりをつけると
いうなら、警吏を呼ぶぞ!」
語気を強める行商人だが、
「ああ、お前たちを捕まえてもらわないといけないからな、そうしようか」
と言ったリョウは周りを見渡しながら、
「お~~い!誰か警吏を呼んでくれ!ここに犯罪者がいるぞ~!」
大声で叫んだ。
「貴様~!」
護衛の男が剣を抜いたが、
キンッ
金属音が響いた後、彼は刀身のない柄と鍔だけの物体を
握っていた。
「へっ・・・?」
唖然とする護衛。
そして、何が起こったのかわからない周りの者たち。
リョウ得意の『刀身斬り』である。
(今、名付けました)
「お、おい、今のは・・・」
「ああ、すごいな・・・」
小声で話すイザベッラとヴァレンティーナ。
ジュリアはもちろん、彼女たちにもリョウが脇差の抜き打ちで
護衛の男の剣の刀身を斬るところが、ちゃんと見えていた。
リョウは、脇差をゆっくりと納刀しながら、
「おや、だめだよ!武器の手入れはちゃんとしないと。まあ、そんな
ナマクラじゃ、あんまり意味がないかもだけど」
からかうように言う。
そこに、
「何があった?!!」
誰かが呼んだのだろう、警吏が2人やって来た。
着ている制服から見て、ガリア領軍のようだ。
「あ、よかった!聞いてください!いきなりこいつに難癖を
つけられて困ってたんです」
馬車から降りてきた行商人が警吏に走り寄り、訴える。
「彼はそう言っているが?!」
警吏が、リョウに聞く。
「いえ、彼が違法に妖精を拘束しているので、それを
止めようとしているだけです」
「言いがかりだ!!そんな証拠がどこにある?!!」
リョウが言ったことに対して、かぶせぎみに抗議する行商人。
だが、サーチで確認済みのリョウは馬車の荷台を指さし、
「そこの樽の下の箱の中に妖精がいます」
自信満々に答える。
「えっ?!」
あっさりと、妖精の隠し場所を言い当てられた行商人。
「そうなのか?」
警吏に尋ねられて、
「そっ、そっ、そんなわけ、あっ、あるはず、なっ、ないですよ・・・」
面白いぐらい動揺していた。
「では、調べてもかまわないな。おい!」
もう1人の警吏に指示をして、調べさせる。
「ま、待ってください!大事な商品なんです!!」
「いや、このまま疑われたままじゃ、あんたも嫌だろ?!すぐに
終わるから待ちなさい」
止めようとする行商人を、もう1人の警吏は、とてもいい笑顔を
浮かべながら、間に入って押しとどめる。
「おいっ!止め・・・ぐえっ!」
護衛の男も止めようとしたが、イザベッラに後襟を掴まれ、喉が締まって
変な声を出す。
「ぐえぇ~っ・・・」
そのまま片手で持ち上げられ、さらに首が締まった後、ぽいっと路上に
捨てられてしまった。
「お前も、おとなしくしてろ!」
倒れた護衛の前に仁王立ちになり、凄みを利かすイザベッラ。
「いたぞっ!確かに妖精だ!」
その間に妖精を見つけた警吏が叫ぶ。
「おっと!」
逃げようとした行商人の腕をがしっと掴むもう1人の警吏。
「何処へ行こうとしてるんだ?!あんたがこれから行くのは、
詰め所だぞ!おとなしくしろ!」
警吏は、握った行商人の腕をそのまま後ろにひねりあげ、
膝の裏を足で踏みつけ跪かせ、もう片方の腕も後ろに回し縛り上げた。
見事な手慣れた技である。
ガリア軍にも『捕縛術』みたいなものがあるのかもしれない。
そして、さらにやって来た警吏たちに、行商人と護衛は
連行されていくのであった。
昨日(6/6)、コンビニ(セ〇ンとロー〇ン)に山〇と白〇の
180ml瓶が入荷するという情報が・・・。
試しに近所のロー〇ンに・・・本当にあるんかい!!w




