50 ラスクとフライドポテト
『揚げる』という調理法がない理由がわかった。
料理に使えるような上質な植物油が高いのだ。
では、料理に使う油はというと、ほとんどが豚や牛の
脂身からでたラードやヘットだということだ。
それでは、少なくとも今回のお菓子には向かないだろう。
リョウが買ったのは、1Lで小銀貨7枚、約7000円であった。
日本の10倍ぐらいだろうか。
原料の植物を育てる技術や油をしぼる圧搾技術などの
違いがでてるのかもしれない。
この値段では、庶民は揚げ物なんてぜいたくすぎて
出来ないし、料理として発達もしないだろう。
ただ、情報や流通が遅れている世界なので、どこかに
揚げ物がある国や地方があるかもしれない。
オリーブの名産地とかあってほしいと思うリョウだった。
とりあえず、油2Lと揚げ物に使えそうな鍋などを
買って、領主館に戻る。
念のために、奥様方や料理長にベーキングパウダーのことを
聞いてみたが、知らなかった。
ホットケーキは、しばらくおあずけである。
調理室で揚げ物の用意をするリョウだが・・・。
「あ!俺、ジャガイモ持ってるじゃん」
重要なことに気がつく。
そう、ジャガイモ→揚げる→フライドポテトである。
ポテトチップスは次回にした。
ジャガイモをタワシで洗い、櫛形に切る。
ジャガイモが新しく、皮が薄かったので今回は皮付きである。
もちろん、芽はくりぬいた。
水にさらして、切り口についているデンプンを流し、
ざるに上げて、水をきっておく。
さて、本命のほうである。
パンを1.5~2cmのサイコロ形に切り油で揚げる。
そう、リョウはサンドイッチを作るときの副産物、
『食パンの耳を油で揚げたやつ』を上品にアレンジしたものを
作ろうとしていたのである。
正しくはラスクというらしいが。
今回はコッペパンのようなパンを使ったので
内側のきれいなサイコロ形のものをお茶の時間に出し、
外側は自分達用である。
このままメープルシロップをかけてもいいのだが
ひと手間かけることにした。
鍋にバターを入れて溶かし、そこにラスクを入れてからめて
バター風味を追加である。
半分は基本である砂糖をまぶしておく。
メープルシロップとの違いを楽しんでもらうためだ。
皮を剥いて切った桃とみかんのような果物と一緒に
皿にもりつけ、街で買っておいたおしゃれなガラス瓶に
入れたメープルシロップを添えて完成。
うん、簡単すぎ。
あとは、ざるに上げておいたジャガイモを揚げ、
塩をふって終了である。
フライドポテトは、庶民的すぎる感じがしたので
今回のお茶の時間にはださないことにした。
収納バッグに入れておけば、時間停止機能でいつでも
アツアツが食べられる。
そのうち、北海道民のおやつ『いももち』も作ろうと
思うリョウであった。
レイナにはラスクとフライドポテトを試食をしてもらった。
食べた後、空の皿とリョウを見るレイナの寂しそうな目に負けて、
試食の追加をするリョウ。
なんだか、レイナがじわじわと食いしん坊キャラに
なってきてるような気がする今日この頃である。




