05 深浦家にて2
リョウがナミカに連れて行かれて、一ヶ月ほど後、
「ども~~、にーこーぷの中川ッス」
ナミカは深浦家を訪れていた。
”にーこーぷ”とは、”ニート更生プログラム”の略であろうが
知らない人が聞いたら、どこかの生協かと思いそうだ。
「中川さん、お兄ちゃんは!お兄ちゃんは大丈夫でしょうね!!?」
あわてて出てきた恵がナミカに聞く。
この一ヶ月、ずっと心配だったのだ。
「もちろん大丈夫ッスよ。お母様にも報告したいので
上がらせてもらっていいッスか。」
「あ、はい、どうぞ」
「お邪魔するッス」
通された客間で、真理子と恵に報告するナミカ。
「研修ももうすぐ終って、まもなく現場に配置される予定ッス」
「現場って?」
「詳しい場所は言えないッスけど、田舎のほうで農家の手伝いや
害獣の駆除みたいなことをやる予定ッス」
異世界は日本より文明が遅れているので、田舎と言っても嘘ではないはずだ。
「猟師みたいなこと?」
恵は、近年猟友会などの高齢化・後継者不足がすすみ、
農家の鳥獣被害が増えているというニュースを聞いたことを思い出した。
「そうそう、そんなところッス」
「お兄ちゃん、鉄砲なんて撃てるの?!」
「あ、鉄砲は使わないッスよ。」
というか、異世界にそんなものを持ち込まれたら大変である。
「ああ、罠師ですね。」
恵は、女子高生が罠を使って害獣駆除をする漫画も読んでいた。
「そんなかんじッス」
基本は剣や魔法だろうが、罠を使うこともあるだろうからこれも嘘ではない。
そういう感じでゆるい説明をしたナミカは、封筒を
取り出し、母の真理子に渡す。
「今月の給料の仕送り分ッス」
「研修中で仕送り出来るほどもらえるんですか?」
聞き返す真理子。
「というか、研修中の衣食住は全て支給されてて、他にお金を
使うこともないので、今回は研修中の報酬全部ッス。
現場で働くようになったら働きに応じて報酬も上下するので、
仕送りも変化するッス」
「わかりました。あの子に無理だけはしないように伝えてください。」
「了解したッス。こちらとしても、大事な人材なのでたいせつに扱ってるッスよ。
研修の担当にも気に入られて、だいぶかわいがられているようッス」
にっこりと、いい笑顔をするナミカであった。