44 バカなの?死ぬの?
(土下座か~~~い!)
心の中でツッコむリョウ。
「ふむ、樹液の窃盗を認めるということでよいのだな?!
エイビス」
シュタイナーが聞く。
「はい、認めます」
エイビスが樹液泥棒を認める。
「メービス、お前はどうだ?」
「み、認めます・・・が・・・」
弟が認めてしまったので、仕方なく認めるメービスだが
まだ悪あがきをするようだ。
「我々の盗んだのは、ほとんど価値のない樹液です。
たいした罪になるとは思えません!」
「ほとんど価値のないものなら、なぜわざわざエルフの
自治区から離れたガリアの森に来て、採取したのだ?」
「う・・・」
シュタイナーの追及に、言葉が返せないメービス。
「やれやれ・・・」
リョウが呆れたように言う。
「エルフってバカなんですか?!それともこのメービス個人が
バカなんですか?!」
「なんだと!!」
怒るメービス。
「価値のないものを盗られたのなら、わざわざ領主の
シュタイナー様が司祭様を連れてきてまで取調べを
する必要がありますか?」
「「あ!!」」
気がつくメービスとエイビス。
「素直に白状すれば、シュタイナー様も温情をかけて
くださったでしょうに、植物学者だの瓶の区別をつける
魔法だの、バカなの?死ぬの?」
「ぐぐぐ・・・」
メービスはくやしさに顔を真っ赤にしながらも、
言い返す言葉が見つからない。
「言っておくが・・・」
シュタイナーが話す。
「リョウは、お前達エルフが束になっても敵わない大賢者だ。
しかも、単独でオーガやリッチーを倒すほどの強者でもある」
「「「え??!!!」」」
レイナ以外の者が驚く。
「縁あって、辺境伯家に迎え入れた客人である。
彼に対する無礼は、辺境伯家に対する無礼と知れ!!」
少しの沈黙の後、レオナール司祭がシュタイナーに尋ねる。
「今、おっしゃられたことは本当なのですか?」
「もちろんだ。現在、そのはかりしれない知識をこのガリア領で
役立ててもらう準備をしてもらっているところだ。
そして、オーガの討伐は我が姉が、リッチーの討伐は
このわし自身が、実際に見ておる。」
「そのとき、シュタイナー様は骸骨竜を
倒しておりましたが」
シュタイナーをたてるリョウ。これも処世術である(笑)。
「わっはっは・・・、まあ、そういうことだ」
機嫌よく笑うシュタイナー。
上司へのヨイショは大事である。
「そういうわけで、お前達の目的などは最初から
見抜かれていたというわけだ」
シュタイナーの言葉にがっくりとうなだれるメービス・
エイビス兄弟。
「処罰については、後ほど言い渡す。もちろん、
この樹液はすべて没収する。取調べは以上だ」
シュタイナーが取り調べの終了を宣言し、メービスと
エイビスは兵士に連れられて、拘置室に向かった。
そしてレオナール司祭が調書を読んだ後、サインをする。
「シュタイナー様」
リョウがシュタイナーに声をかける。
「マリエール様との約束のお菓子を作りたいので
大きい瓶を2本、いただいてもよろしいですか」
樹液に含まれる糖度にもよるが、メープルシロップに
するには、4~50倍に濃縮しなくてはならない。
2本で10Lでも、200ml前後である。
「ああ、それなら全部、リョウが管理してくれ。
半分ぐらい贈答用に残して、あとはうちで使おう」
「わかりました」
リョウは、樹液の入った瓶をすべて収納バッグに入れ、
領主館に向かった。




