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42 追求

「レイナくん、今回の容疑を述べてくれたまえ」

「はい、シュタイナー様」


「エルフ自治区在住メービス・アリニュー及び

エイビス・アリニュー兄弟は、ガリアの森において

木に穴を空け、機材を設置し、樹液を盗んだ

窃盗容疑で昨日身柄を拘束されました」


「ふむ、そちらが兄のメービス、こちらが弟のエイビスでよいかな?!」

シュタイナーが2人を確認する。


身長がやや高く髪が茶色のほうがメービス、

髪がやや赤っぽいほうがエイビスのようだ。


「まず、メービス、このことについて申し開きはあるかね?」

シュタイナーにメービスが答える。

「確かに我々は樹液を採取しましたが、それは研究の

資料としてであり、窃盗などというものではありません」


「エイビスはどうかな?」

「兄と同じです」


「2人とも同じというなら、代表してメービスに答えて

もらおう。エイビス、意見があったなら申し出るように。

リョウ、研究者として、君の意見はどうかな?」

シュタイナーがリョウに意見を求める。


「たいへん興味深い話です。メービスさん、

樹液を採取して何がわかるのでしょうか?」

リョウは、いかにも教えを請うような態度で聞く。


「これだから人族は浅学だというのだ。樹液というのは

木の生長する養分となる。血液と同じようなものだな。

つまり、木の健康状態がわかるのだ」

リョウが下手にでているので、偉そうに答えるメービス。


「すみませんが、ガリアの森は辺境伯家のもので、

そこの木の健康状態を、あなたがたが気にする必要は

ないのではありませんか?」


「わ、われわれエルフにとって森は命の元とも言える

大事なものだ。所有など関係なく研究をしなければ

ならんのだ。病気などが発生したときには、防がないと

ならんしな」

メービス、苦しい言い訳だが。


「なるほど!とてもすばらしい心がけです!

研究者として見習わなくては!」

リョウ、思いっきりヨイショする。


メービスは、ほめられて少しテレている。

どうやらリョウを組し易い相手だと思ったようだ。


「それにしても、健康状態を調べるということは、

2年や3年の比較では無理だと思うのですが、いったい

何年ぐらい、あの森で研究をなさっていたのですか?」

感激したように、リョウが言う。


「そうだな、もう10年ほどになるか」

メービスが落とし穴に落ちた。


リョウたちの目的の1つは、彼らが何年間樹液泥棒を

したかを突き止めることであった。


もし、本当は去年からで、見得を張って多く言ったにせよ

証人の司祭が聞いているのでどうにもならない。

今度は嘘をついた罪を問われるだけである。


「それはすばらしい、ぜひその10年間の成果を

拝見させていただくわけにはいかないでしょうか」

しめしめと思いながら、演技を続けるリョウ。


「せ、成果をまとめたものはは自治区の自宅にあるのでな。

自治区には人族は特別な許可がないと入れんのだ。

お前なら見せてやってもよいのだが、残念だ」

そんなものあるはずがないので、見せられるわけない。


「では、せめて今回採取した資料を見せてください」

「そ、それは・・・」

メービスが口ごもる。


「彼らの所持品はどうした」

シュタイナーが兵士の1人に聞く。

「はっ、収納バッグを2つ、保管してあります」

「すぐに持ってくるように」


兵士の1人が部屋を出て、数分後に戻ってくる。


「これです。どちらもロックがかかっております」

テーブルの上に収納バッグが2つ置かれる。


「メービス、エイビス、ロックをはずすように」

シュタイナーが言う。


「断る!」

「私物まで押収するつもりか」

逆らう2人。


「私物であろうと見られるだけなら問題ないはずだが。

何か見せると都合の悪いものでもあるのか?!

公平のため、バッグから中身を出すのは、司祭殿にお願いする。

それでも断るなら、ロックを破壊することになるが」

シュタイナーがうながす。


エルフ兄弟は顔を見合わせ、しぶしぶロックをはずすのだった。

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