41 取調べ
翌朝、夜明けとともにリョウ、エリック、シュタイナー、
レイナの4人は馬に乗って領都へ向かった。
領軍騎馬兵50人と歩兵100人は、白銀の魂の残りの
メンバーの捜索である。骸骨竜が倒されたので
歩兵は森へ入って捜索することになった。
領都近くで、エリックは西門から入るために別れた。
少しでも早く冒険者ギルドに戻るためである。
残る3人が、南門から入ったところで、報告が入った。
ガリアの森で樹液を採取していた者が捕まったというのだが
それがエルフの2人組だというのだ。
「そういうことか。植物に詳しいと言われるエルフなら
今回のことを知っていても不思議はないか」
シュタイナーが言う。
「それが、司令官・・・」
報告した兵士が困ったように言う。
「彼らは、自分達は植物学者で、調査のために
樹液をとっていただけだと言い張っているのです」
「なんだと!」
シュタイナーがの機嫌が悪くなる。
「というか、司令官。樹液を取ったぐらいでエルフと
面倒を起こさなくてもいいのではないでしょうか?」
兵士が言う。
たしかにメープルシロップのことを知らなければ
そう思うだろう。
「エルフだと何かまずいことでもあるんですか?」
リョウがシュタイナーに聞く。
「差別をする国もあるが、この国では、人族も
エルフ族もドワーフ族も獣人族も法の下では平等だ。
ただ、エルフは自分達が一番知的で賢い種族だと
思っていて他の種族を見下している者が多いのだ」
シュタイナーが説明する。
そして、リョウにしか聞こえないように耳打ちする。
「たぶん、わしらがメープルシロップのことも知らないと
思って、言い逃れするつもりなんだろう」
「なるほど、ではどういう方向で問い詰めるかですね」
リョウも納得する。
「ああ、まずは対策会議だな」
シュタイナーはそう言って、司令官室に向かう。
当然、リョウとレイナもその後に続いた。
1時間ほど後、シュタイナーは、リョウ、レイナのほかに
教会の司祭を連れて、エルフが捕らえられている部屋に来た。
「開けてくれ」
「はっ」
シュタイナーに言われて見張りの兵士がドアを開ける。
中には2人の兵士に見張られたエルフが2人、
木製の椅子に座っていた。
エルフの1人は足を組み、もう1人はそっぽを向いて
どちらもふてくされたような態度をとっていた。
「立て!!!!!!!」
シュタイナーの恫喝に驚いて、エルフの2人は
椅子から落ちそうになる。
「領主であるわしを座ったまま出迎えるとは何事だ!!」
「ひぃ!」
あわてて立ち上がるエルフたち。
「領主のシュタイナー・E・ガリア辺境伯様です」
レイナが紹介する。
「辺境伯殿、我々は・・・」
エルフの1人がシュタイナーに訴えかけようとするが、
「誰が発言を許した?!!!!」
「ひっ!」
後ずさって椅子にぶつかり、こけそうになるところを
兵士の1人に支えられる。
「今回の取調べは、きちんと記録をとりますので
勝手な発言は謹んでください」
レイナが言う。
「こちらは、聖教会のレオナール司祭様です。
公平な取調べをするために、来ていただきました。
後で調書を確認・サインしていただきます」
「レオナールです。公平を期することを神に誓います」
司祭が右手を上げ、宣誓する。
「この方は辺境伯様の遠縁の方で、農林業の研究を
なさっているリョウ・F・カーラ様です」
「リョウです。今回はエルフの植物学の学者様が
来ておられると聞いて、ぜひお話を伺いたくて同席を
お願いさせていただきました。よろしくお願いします」
リョウは、わざと髪の毛をボサボサにして眼鏡をかけ、
庶民よりは少しいいが、どことなくやぼったい服装をしていた。
これが、貴族の変わり者の学者のイメージされるスタイルらしい。
「そして、私が今回の書記を務めさせていただく、
領主様の秘書のレイナと申します。よろしくお願いします」
レイナも冒険者ギルドの職員の制服に似た女性の文官スタイルである。
「では、座ってくれ、取調べを始める」
シュタイナーが宣言し、取調べが始まった。




