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39 討伐

「変な声が聞こえた気がしたが、勘違いだな」

「ええ、『もう遅い』なんて声、まったく

聞こえませんでした」

エリックのボケにリョウがのっかる。


「ふん、そんな挑発には乗らんぞ、エリック」

「おや、私を知ってるのかね?!」

声の主は、エリックを知っているようだ。


「私の知り合いには、ネクロマンサーなんていう

根暗職はいないんだが?!」

「とぼけるな!お前がわざわざ出てきたということは

わしだとわかってたんだろう?!」


「ああ、死んだと聞いていたんだがね。ダニエル・グリワルド」

「お前に借りを返すまでは、死んでも死にきれんよ」


ダニエルと呼ばれた者は、エリックと因縁があるようだ。


「ダニエル・・・、ああ!ゴジールとの紛争で

親父とエリックさんに、大負けしたネクロマンサーか!」

シュタイナーが叫ぶ。


「黙れ黙れ!!あれは、上層部の作戦ミスだ!

わしの力を生かしきれなかったアホどものせいだ!!」


「いや、お前が命令を無視して突っ込んで、エリックさんに

アンデッドを焼き払われたんだろ」

「ああ、自信過剰のバカなんですね」

シュタイナーのツッこみに、リョウが追い討ちをかける。


「ふ、バカはお前らだ!!!何のためにわしが無駄話に

付き合ってやったと思う?!」

「そりゃバカだからだろ?!」

リョウが挑発する。


「ふはははははははは・・・・・・・!!!!!

すでに囲まれているのがわからんか!」

リョウのサーチには200近いアンデッドの反応があった。


「いや、それを待ってたから」

リョウが軽く返す。


「すみません、エリックさん」

「ん?!」

いきなり謝るリョウ。


「私、嘘をついてました」

「何??!!」

「ターンアンデッドの範囲は半径30mじゃありません」

「何だって!!」


リョウが、無駄話の間に溜めていた魔力を発動させる。


「ターンアンデッド・マキシマム!!」


一気に放出される魔力。


周りが聖光で覆われる。


「半径100m以上です」


「「「何だって~~~~!!」」」


エリックばかりか、シュタイナーとダニエルまで

驚きの声を上げる。


辺り一面が「ぐぎゃ」だの「ごぉぉ」だの、気持ち悪い

うめき声のようなものであふれる。


そして、10数秒後、周りにいたアンデッドは全て

塵になって消えていた。


どすっ

「ぐおっ」

何かが落ちた音と声がした。


どうやら、木の裏側に隠れていたようだ。


見てみると、ローブを纏った骸骨が黒コゲになっていた。


「くそう、な、何だ今のめちゃくちゃなターンアンデッドは・・・」

骸骨がダニエルの声で言う。


「ダニエル、貴様、リッチーに身を落としていたか」

エリックが骸骨に言う。


魔法使いが自ら望んでアンデッドになった魔物、リッチー。

その魔力は生前より数段上となる。

あれだけ多くのアンデッドを使役出来たのも、そのためだろう。


「言ったろう、貴様に借りを返さんと死んでも死にきれんと」

「素直に死んでろ!!」

エリックはファイアーボールを唱える。


しかし、打ち出されたファイアーボールは、ダニエルの前で

壁にさえぎられたように、爆発消滅する。


「魔法障壁!ターンアンデッドもそれで防いだのか」


「あまりの威力に、防ぎきれなかったがな。

まあ、いい。いでよ骸骨竜スケリトルドラゴン!!」

地面を割って骸骨竜スケリトルドラゴンが出てくる。


「次こそは、殺してやるぞエリック!!」

捨て台詞を残して空中に舞い上がるダニエル。

骸骨竜スケリトルドラゴンを足止めに逃げるつもりのようだ。


「逃がさん!! ホーリーレイ!!」


リョウの突き出した人差し指から、直径10cmほどの

光線が打ち出され、ダニエルを貫く。


「ぐはあぁ・・・」

地面に落ちるダニエル。


そこにダッシュしてきたリョウは、剛斬丸を抜き、

脳天から真っ二つに断ち切る。


「死ぬのはお前だ!!」

さらに止めのターンアンデッド。


「ぐおおおぉぉぉ・・・!!」

ダニエルは塵となって消滅する。


「おおっ」

近づいてきたエリックが歓声を上げる。


「エリックさん、骸骨竜スケリトルドラゴンは?!」

尋ねるリョウに、エリックは後ろを指差す。


そこでは、シュタイナーが楽しそうに戦っていた。


「一人でやらせてくれってさ」

エリックがあきれたように言う。


そして2人は、シュタイナーが骸骨竜スケリトルドラゴン

粉々にするまでをのんびり見ていた。

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