33 本日の報告
「わっはっはっは・・・!!!!
10シル硬貨ハゲトリオだと!!」
誰かと同じような台詞を言って、シュタイナーが大笑いしていた。
似たようなタイプは、笑いのツボも似ているのかもしれない。
現在、領主館での夕食の席である。
彼に話をしているのは、冒険者ギルドマスターのエリックだ。
リョウがギルドを出た後、シュタイナーに緑茶の話の件について
使いの者に手紙を持たせたら、自分もその話を聞きたいので
夕食に来ないかと、誘いを受けたのである。
エリックがギルドを出るとき、突発事故などの連絡のために、
領主館にいるからと言うと、アンナがリョウに会いたいから
連れて行けとうるさかった。
もちろん、却下である。
そして今、ギルドでの出来事を話していた。
「まあ、その後、うちのアンナに捕まるんだけどねw」
「アンナ?!・・・ああ、あの剣好き娘か」
アンナはシュタイナーにまで知られているようだ。
「しばらく、リョウくん、つきまとわれるだろうねw」
「いえ、ギルドで、ちゃんと対応してくださいよ」
他人事のように言うエリックにリョウが抗議する。
「それから3人はギルドカードも受け取らないで、
そのままどこかに行ったそうだよ」
「10シル硬貨ハゲトリオ、ボクも見たかった。
やっぱり付いていけばよかった」
フェルナンデスくん、ちょっとふくれっつらである。
「それにしても、いきなりBクラスか。さすがだな」
「私はCと言ったんですが・・・」
シュタイナーにリョウが答えると、エリックが言う。
「Cクラスじゃ物足りないだろうと思ってね。
それに、すぐAクラスになるさ。私のカンが君は大事件を
解決してくれると言ってるんだよ」
「大事件って・・・」
「まあ、そんなものは起こらないほうがいいんだけどね」
「ああ、すでに小事件は解決してくれたな(笑)」
シュタイナーが冗談めかして言う。
「謎を解いただけで、解決は2~3日後ですよ」
「まあ、どんな事件ですの?」
アンジェリカが尋ねる。
レイナからそんな報告はなかったはずだ。
「うむ、さっきヨーゼフが森の木に変なものがあると言ってきてね」
「去年もそんなことを言ってなかったかい?!」
イレーネが聞く。
「ああ、去年と同じものがまたついてると。
それで、リョウに聞いてみたら、甘味料の原料になる樹液を
採ってるんじゃないかということでね」
「「「甘味料!」」」
女性陣が一斉に言う。
「そういうことなら、犯人を捕まえて製法を聞きだそうと
いうわけで、兵を派遣してある。2~3日中には捕まえ
られるだろう」
「樹液から甘味料か。リョウはそんなことまで知ってるんだね」
エリックが感心して言う。
「もちろん、特定の種類の木からだけですが。
私の国ではメープルシロップと呼ばれてます。
マリエール様、シロップが手に入ったら、私の国で人気の
お菓子を作って差し上げますよ」
「ほんと!!」
マリエールが満面の笑みで答える。
「はい。あ、もちろん他の皆様の分も作りますよ」
フェルナンデスや奥様方から『こっちにも作れ』オーラが
でていたので、すばやく追加する。
「もし、犯人の捕獲に失敗したりしても、別の甘味料を
作る準備もしてますので、大丈夫です。
そっちは作業小屋が出来てからになりますが」
「さらに他の甘味料もあるのか?!これは、緑茶の話も
いろいろありそうで楽しみだね」
エリックさん、ワクワクである。
「そうそう、酔拳とかいう格闘技でチンピラを叩きのめしたそうね」
アンジェリカが言う。
「「「すいけん???」」」
皆から疑問の声が上がる。
「実用でもあるんですが、本質は面白い動作や
派手な動作で観客に楽しんでもらうタイプの格闘技です。
見物人がいたので、つい遊んでしまいました」
「何それ、面白そう!!」
フェルナンデスの食いつきがいい。
「明日の朝の鍛錬でお見せしますね」
「それは、私も見たいな。シュタイナー、今夜は
泊めてもらっていいかな?!」
エリックが言う。
「もちろん、いいですよ。アルフレッド、部屋の用意を頼む。
では、そろそろサロンに移動しようか」
エリックさん待望の緑茶の話である。




