316 邪魔者
「お偉いさんになっちまって鈍ってるかと思ったら大丈夫な
ようだな」
「当たり前ぇだ!聞き分けのねえバカどもをブチのめしてでも
言うことをきかせねえといけねえんだ。
お前こそ、ホールで飲んだくれていたわりには、まだまだ現役でも
いけそうじゃねえか」
「ああ、俺だって、ケツの青いヒヨっ子どもに、なめられるわけには
いかねえからな」
お互いに軽口を叩きながら、練習用の武器を持って
素振りをするグランツとエドガー。
長年の付き合いから、準備運動の動きで相手の調子がわかるようだ。
(う~ん・・・2人相手なら何がいいかな?!)
訓練用の武器を物色するリョウ。
(ん?!あいつは大剣使いじゃないのか?2人相手だと隙が
大きいので不利だとでも思ったか?!)
リョウの様子を見てエドガーが疑問に思う。
そして結局、
(やっぱりこれが無難だよね)
リョウが選んだのは大剣であった。
(結局、大剣か~~~い!!!)
心の中でツッコむエドガー。
実は、リョウが武器に悩んでいたのは有利不利の問題ではなく、
エドガーとグランツのためだったのだが、そんなことが
エドガーにわかるはずもない。
武器選びを済ませたリョウ、準備運動をする。
修練場には、ホールにいたほとんどの冒険者が見物に来ていた。
今から始まる試合についての話でワイワイガヤガヤと騒がしい。
ジュリアは他の見物の冒険者たちから離れた修練場の隅で
それらの様子を見ていた。
一つは、この試合を監視するため。
もう一つは他の者に邪魔されずじっくりと見物するためである。
幸い、視力強化スキルによって多少離れても問題ない。
ジュリアはリョウの戦う姿が好きであった。
ブラッドウルフとの戦いを見てリョウに一目ぼれしたようなものである。
なので、この試合の邪魔をしそうな者は、『即・排除』である。
しかし邪魔が入ったのは、リョウたちの方ではなくジュリアの方だった。
「よう、姉ちゃん」
男が声をかけてきたのだ。
ギロッと男を睨むジュリア。
「ま、待て!待ってくれ!からんだのは悪かったよ!謝る!
謝るから~!!」
ジュリアに殴られると感じた男は、あわてて謝る。
話しかけてきたのは、リョウの足をひっかけようとして、ジュリアに
蹴り倒された男だった、
蹴られたときに鼻血がでたのか、無精髭に拭き残しの血がついている。
「いや~、参ったぜ。金持ちのボンボンかと思ったらA級候補の
冒険者だったとはな・・・」
リョウが上質な平民服、ジュリアが護衛スタイルだったので、2人は
裕福な商人の息子と護衛だと思われたようだ。
足をひっかけていちゃもんをつけて金をせびろうとでもしたのだろうが
ああいう結果になってしまった。
なのに、話しかけてくるとは、なかなか根性があるのかもしれない。
「だから?」
とりあえず殴るのはやめたジュリア、ゴミクズを見るような目で
男を見る。
「い、いや、違うって、あんたたちのためになる情報があるんだよ!」
何が違うのかよくわからないが、男はあわてて本題に入った。
「いらん!」
即答するジュリア。
「ぜ、絶対に役立つって!とにかく聞いて・・・げほっ!!」
男はジュリアに耳打ちしようと近づいたところ、彼女のスナップを
利かせた裏拳をもろに顔面にくらって倒れた。
「馴れ馴れしく近づくな!」
ジュリアはそう言うが、裏拳をまともにくらった男は気絶して
しまったので聞こえるはずがない。
反応がない男を見て、ちょっとため息をついたジュリアは、
男の腕を掴んでひきずって移動させ、修練場の壁際に転がした。
とりあえず、邪魔者を1人排除のジュリアであった。




