315 資格試験
リョウが、拍手の音のしてきた方を見ると、中年・・・というより
熟年のおっさんが拍手をしながら階段を降りてきていた。
王都ギルド本部のギルドマスター、グランツである。
「やあ!リョウ。会うのは2度目だね。ガリアのエリックからの報告で
聞いてはいたんだが、さすが聖女様にA級に推薦されるだけはあるね」
グランツはリョウの前まで来ると、話しかけてきて右手を差しだした。
「A級・・・?!」
「聖女様・・・?!」
「推薦・・・」
グランツの言ったことが聞こえた者たちがざわつく。
「この前は、まともに挨拶もしないで失礼しました。
改めて、よろしくお願いします」
そう言いながら、リョウはグランツの右手を握って握手をする。
「ああ、よろしく。それにしても、困ったな・・・」
苦笑いしながら言うグランツ。
「何がですか?」
頭の上にハテナマークを浮かべながら聞くリョウ。
「いやぁ、聖女様や神殿騎士隊長殿を信用しないわけではないんだが、
やはり君の腕を見ておきたいと思って降りて来たところ、それだろ?!」
グランツはリョウが表面を削ったテーブルを指さす。
「あにゃ?!器物破損とかで捕まるんですか?!」
「いやいや、そういう意味じゃないんだ・・・」
グランツは苦笑いをしながらリョウの言ったことを否定する。
「君の腕を見るために、模擬戦の相手をする者を募ろうと
思ってたんだが誰も引き受けてくれそうにないな・・・と」
そう言いながらギルド内を見渡すグランツ。
グランツにつられてリョウもギルド内を見渡すが、誰もこちらと
目線を合わせようとしない。
「そりゃそうでしょ」
近くにいた職員が言う。
「バリバリの現役組は、ほとんど依頼を受けて出てるんですから」
職員が言うように、この時間にギルド内にいる冒険者は、
エドガーのように半分引退したような者か、依頼にあぶれて
暇している者かと相場は決まっている。
「う~ん、仕方ねぇなぁ・・・エドガー、お前も付き合え」
グランツ、いきなり乱暴な言葉使いになる。
「おいおい、何で俺が・・・」
指名されたエドガー、迷惑そうである。
「仕方ねぇだろ、Aクラスになろうかという奴なんだぜ。
俺たちみたいなロートルじゃ、2人でも相手になるかわからねぇぞ」
「す、すみません、おっしゃってる意味がわからないんですが・・・」
リョウは雰囲気の変わったギルドマスターにとまどいながらも
話しかける。
「俺たち2人がかりで、あんたの模擬戦の相手をするということさ。
まあ、Aクラスになるための資格試験みたいなもんだ」
思わず
『じゃ、Aクラスにならなくてもいいので』
とか言って帰りたくなったリョウだが、さすがにこの状態で
そういうわけにはいかないだろう。
ジュリアはと見れば、ワクワク顔でこちらを見ていた。
ギルド内の冒険者たちは、
「ほんとかよ、あの2人を同時にって・・・」
「伝説のコンビの復活だぜ・・・」
「オイオイオイ、死んじゃうよ、アイツ」
「ほう、炭酸抜きサイダーですか・・・」
などとヒソヒソ話をしている。
この2人、最強と言われたAランクパーティー『テンペスト』の
中心メンバーであった。
その実績と実力を見込まれて5年前にグランツがギルドマスターに
就任したためパーティーは解散した。
エドガーは事務仕事なんてまっぴらだと断ったが、ほぼ毎日ギルドに
顔を出して、冒険者たちのトラブルを収めたり、新人の面倒を
見たりしてサポートしていた。
「ま、そういうわけだから修練場に行こうか」
とてもいい笑顔でリョウを誘うグランツ。
(何が『そういうわけ』なんだよ)
とツッコみたいリョウであるが、黙って2人に付いていくのであった。




