314 円盤
「これ、ひどく傷だらけですねぇ」
リョウは、そばにある丸テーブルを撫でながら職員に話しかける。
グラスを乱暴に叩きつけたようなへこみ。
ナイフで削ったような跡。
4つ並んだ小さな穴は、フォークを突き立てたのだろう。
リョウの言うように、テーブルの表面には無数の傷がついていた。
「冒険者は乱暴な方が多いですから・・・」
いきなり話しかけられてとまどいながらも丁寧に対応する職員。
「鉋とかをかけて、表面を削って平らにしたらいいのに・・・」
独り言のように言うリョウ。
「修理にだす予算も時間もないもので・・・」
職員、さすがにイラッとしたのか、口調に怒気が混ざる。
それよりもこの雰囲気を何とかしろよ?!と思っているようだ。
近くにいた他の職員や冒険者たちも、『何を言ってるんだ?!』
という顔つきである。
ただ、ジュリアだけは今までの経験により『あ、リョウは何か
やらかすつもりだな?!』と、さっきまでの不機嫌はどこへやら、
期待に満ちた笑顔を浮かべている。
「よかったら私が表面をきれいにしましょうか?
あ、時間なら大丈夫ですよ、たぶん1秒もかからないかと」
「「「「 は?????!!!!! 」」」」
もう完全に訳が分からない周りの者たち、目が点である。
「じゃ、いいですね、やっちゃうよ~」
どこかのラッコの妄想の中にいるおじさんが言う『しまっちゃうよ~』
みたいな言い方をしたリョウは、テーブルを開いているスペースに
移動させる。
そして、右手を軽く上げ、
「スリー、ツー、ワン」
指を3本、2本、1本と立てながらカウントしていく。
「ゼロ」
最後のカウントとともに収納バッグから剛斬丸を抜き出し、
「ふんっ!!」
水平に一閃する。
そして、頭の上で剛斬丸を旋回させ収納バッグに入れた。
何が起きたのかよくわからない周りの者たち。
だが視覚強化スキル持ちであるジュリアはしっかりと見ていた。
彼女がテーブルに近づいて表面をツ~と撫でるようにすると・・・
するっ
テーブルの表面、2~3mmの厚さの部分が移動した。
「「「「 え????!!!! 」」」」
周りの者たちが驚く中、その直径1m余りの円盤は空気抵抗をうけて
ゆっくりと下降しながら空中をすべるように移動していき、
エドガーの足元に落ちて、パリンと木の繊維の方向に沿って
いくつかに割れた。
それを指でつまんで拾い、顔の近くに持ってきて確認するエドガー。
「何だこりゃぁ~!」
お約束のような台詞を叫んだ。
「ね、きれいになったでしょ?!」
とてもいい笑顔ですべすべになったテーブルの表面を撫でながら
職員に話しかけるリョウ。
横に立つジュリアは、ドヤ顔で室内の冒険者たちを見渡す。
「あ・・・あ・・・」
職員、口を開けたまま言葉がでない。
他の者も同様に驚いていたが、特にリョウの足をひっかけようと
した男の仲間たちは青ざめていた。
あの後、トラブルになって今の剛剣(ちらっとしか見えなかったが)が
自分たちに襲い掛かってきていたら・・・。
ギルド職員が望んだように確かに雰囲気は変わったが、今度は
別の雰囲気が支配するギルド内。
パチパチパチ・・・
そこに拍手の音が響いた。




