311 焼いちゃうよ~
そして翌朝、リョウは厨房に来ていた。
ここのところ忙しかったが、予定変更で時間が出来たので
のんびりとエールを飲むことにした。
その肴を用意するためだ。
王都に帰ってきた日にのんびりしようとしたら、ウィッツ
レーベン公爵家のユディットのせいで中途半端に終わったやつの
やり直しみたいなものだ。
「おはようございま~す。ちょっとこれを焼かせてください」
「「「「 ひいっ!! 」」」」
厨房に来たリョウを、期待に満ち溢れた笑顔で迎えた
シスターたちの顔が一瞬にしてこわばる。
リョウが見せたのはスルメであった。
しかも、カラアゲのときのように形がわからなくなっているなら
まだしも今回は丸のままである。
足が10本もついているうえに変な丸い物、吸盤が無数に
ついている不気味な物体。
その物体をリョウは、竈に置いた網の上に乗せる。
それを心配そうな顔で見ているシスターたち。
「ひっ!」
すると見ていたシスターの1人が小さく叫び声を上げた。
網の上で焼かれているスルメが、まるで苦しみもだえるかの
ように動き、クルクルと丸まったのだ。
「おっと」
リョウは何事もないようにスルメをひっくり返し、丸まって
いたのを伸ばすように菜箸で押さえつける。
(そういえば、丸くならないようにスルメをはさんで固定する
クリップとかあったな~・・・)
などと思いながらのんきにスルメを焼いていくリョウ。
シスターたちの反応なんてまるで無視である。
「もういいかな・・・あちゃちゃっ・・・」
「「「 ひいっ! 」」」
今度は完全に悲鳴、しかも1人ではなかった。
なんとリョウは焼けたスルメを素手で引き裂きはじめたのだ。
足が10本ある不気味な物体を焼いて引き裂く男。
ある意味ホラーかもしれない(笑)
そんなに怖ければ、見なければいいのにと思いながらスルメを
裂いていくリョウ。
熱いうちじゃないと固くなって引き裂きにくくなるので、
急いで裂いていく。
(この様子だとさすがに今回はおねだりはないよね)
と思っていたリョウだが。
「リョウ様、味見に少しくださ~い!」
元気な声でヒルダがおねだりしてきた。
ほんとにチャレンジャーである。
「はいはい」
リョウは、スルメの足2本と裂いた胴体を少し渡す。
「固いから気を付けてね。固すぎたら、金づちで叩いて
柔らかくするのもアリだよ」
「ありがとうございま~す」
そう言いながら早速スルメの足を口に運ぶヒルダ。
「それじゃ~、お邪魔しました~」
そう言いながらリョウもスルメの足を1本咥えて、噛みながら
厨房を出る。
(ちょうど醤油も手に入ったことだし、やっぱスルメには
醤油マヨだよね~)
なんて思いながら部屋に戻るリョウであった。
「却下!」
「またか~~い!!」
部屋に戻ってのんびりしようとしたリョウだが、マーティアに
呼び出された。
「ジュリアさんと一緒に冒険者ギルドに行ってください」
マーティアがそう言うと、コリーヌが封筒を2通差し出す。
「これは、Aクラス冒険者への私とリオン隊長からの推薦状です」
「別にBクラスのままでもいいんですが・・・」
受け取った封筒を見ながら言うリョウ。
「Aクラス冒険者は貴族に準ずる立場となりますので、
いろいろと融通が利いて便利ですし、信用されますので
これからの旅に役立ちます」
「すごいことなんですよ。Aクラス冒険者で現役の方は
10人いるかどうかだそうですし」
コリーヌが興奮したように補足説明してきた。
「でも、義務とかも生じるんじゃ?!」
「それは特にありません。有能な人材を外に出さないための
制度ですので。逆になったからといって報酬もありません。
そっちは、『自分で稼げ』ということですね」
「ふむ・・・」
少し考えたリョウだが
「まあ、詳しいことは行ってから聞けばいいか・・・」
すぐにあきらめた。
「では、行ってきます」
そして、ジュリアと一緒に冒険者ギルドに向かうのであった。
醤油マヨ?マヨ醤油?
どっちの言い方が多いんでしょ?




