310 約束
「却下!!」
「え~~~~~~っ!!!」
リョウが、『明日、王都を発つ』とマーティアに言ったところ
却下されてしまった。
現在、夕食後のティータイム。
アレンの治療の報酬をもらったところである。
救済の旅への同行やマーティアへの聖魔法の指導などの分も
割り増しされていて、最初に契約した金額の倍近くもらった上に、
個別にジュリアにも報酬が支払われた。
「却下と言われても、依頼は完了したわけですし・・・」
リョウの言うとおりマーティアに止める権利はないはずだ。
「あ、言い方が悪かったですね。実は、お金とは別の報酬を
用意させているところなのですが、もう2~3日かかるようなので
待ってもらえないかということです」
「別の報酬・・・?」
「はい。リョウ様のこれからの旅に間違いなく役にたつものなので
ぜひ受け取っていただきたいと・・・
あ、ジュリアさんの分もありますよ」
マーティアにそう言われたので、リョウがジュリアの方を見ると、
小声で『まかせます』と言った。
「・・・そこまでおっしゃるのなら、有難くいただきますが
一体どういうものなのでしょうか」
少し考えて、申し出を受けることにしたリョウ。
「ふふふ・・・それは秘密です」
楽しそうに言うマーティアであった。
「さて、予定変更になったがどうしよう・・・」
自分にあてがわれている部屋に戻るために、リョウは廊下を
歩いていた。
明日王都を発つので、今夜はブレンダとグレイシアのために
料理やお菓子を作り置きしておくつもりだったのだ。
しかし、予定変更で時間に余裕ができたので、どうせなら
昼間にシスターたちに作り方を教えながらのほうがいいだろう。
「リョウ!」
ジュリアが声をかけてきた。
このタイミングで声をかけてきたということは、
(うっふふぅ~~~、もしかして・・・)
昨夜のグレイシアとのこともあり、エロいことを考えてしまうリョウ。
「とう!!」
「あたっ!!」
リョウの頭にチョップをするジュリア。
「いきなり、何?!!!」
痛くはなかったが、びっくりしたリョウ。
「いや、何か邪悪なものを感じたから・・・」
ジュリア、リョウの心の中の妄想を感じ取ったようだ。
「もう・・・それで何か用?」
思ったことと違ったみたいなので、ちょっと不機嫌なリョウ。
「リョウは約束を守る男だよな?」
「は?!」
リョウ、思ってもいなかったことを言われ目が点になる。
「そのつもりだけど・・・」
「じゃ、ウィッツレーベン公爵のところで会ったヨハン?!
だったか・・・音楽師との約束はどうするんだ?」
「・・・あ~~~~~~っ!!!!」
リョウは、彼が弟子入りをあきらめる代わりに、王都を出る前に
もう1度ウィッツレーベン家に行って演奏するという約束を
していた。
先日から何か忘れているような気がしていたのはこれであった。
決して約束の相手が男だからどうでもいいと無意識に
考えないようにしていたわけではない。
ホントダヨ~~~。
あわてて、ウィッツレーベン家に使いの者を送るリョウであった。




