308 試食だよ~
味噌を入れたときに煮えすぎないように火から鍋を下すリョウ。
そして鍋の中の具材を端に寄せて、中央部分にできた窪みに味噌濾しの
代わりの目の細かい笊を設置したら、いよいよ味噌の出番である。
ということは・・・
また『う〇こじゃないよ~』という説明をしないといけないと
いうことである。
(あ~っ!めんどくさっ!)
これから味噌を出すたびに説明しなければならないと思い、
うんざりするリョウである。
(う〇こだけに・・・って、うるさいわっ!!)
ついでにセルフツッコミもやっておく。
「えっ!どうしたんです?リョウ様?!」
びっくりした顔で1人のシスターがリョウに聞く。
リョウの心の声が外に漏れていたようだ。
「い、いえ、今からこのスープに味噌という調味料を入れるんですが・・・」
リョウ、お約束の説明とお願いをする。
シスターたち、『何を言ってるんだ?!』という顔をしながらも
了承したが、味噌を見てお約束の反応をする。
「「「「「 うぐぐぐぐ・・・ 」」」」」
味噌を取り出し笊に入れて溶いていくリョウを見ながら
『う〇こじゃないか?!』と言いたいのを必死に我慢するシスターたち。
微妙な空気が厨房にただよう・・・。
「何だ?!そのう〇こみたいなのは?!!!」
シスターたちの後ろからその空気をぶち壊す女性の低い声がした。
「「「「「 ぶっ!!!!!! 」」」」」
シスターたち噴き出した後に振り向き、
「「「「「 言うなよ!!!! 」」」」」
合唱ツッコミをする。
声をかけてきたのは、アルトの声の大女、グレイシアであった。
「何が出来るか待ちきれなくて覗きに来たんだが、そんな物を入れて
大丈夫なのか?!」
シスターたちの頭ごしにリョウに尋ねるグレイシア。
「ていっ!!!」
ドシュッ
「あたっ!」
リョウのジャンピングチョップがグレイシアの額にヒットした。
「い、いきなり何をするんだ?!」
リョウは余り力を入れてなかったし、グレイシアは元々防御力が高いので
全然痛くなかった。
ちょっと、びっくりしただけである。
「私の努力や皆さんの気づかいを無にしたのでグレイシアは夕食抜き!!」
「え~~~~~~~~!!!!」
リョウの理不尽ともいえる言葉に驚くグレイシア。
「でも・・・」
もったいをつけて言うリョウ。
「このスープを試食したら許します」
「は?!」
グレイシア、わけがわからない。
実は味噌を見たシスターたちが豚汁を飲むのに抵抗があるのではないかと
心配していたリョウ。
そこで試食をしてもらって、彼女たちの不安を取り除こうと思っていたのだが
誰に試食してもらうか悩んでいた。
そこに、やって来たグレイシア。
ちょうどよい犠牲者であった。
「というわけで、はい、召し上がれっ!」
豚汁を器によそいでグレイシアに差し出すリョウ。
「うっ」
反射的に受け取るグレイシア。
しかし、さっきう〇こみたいなものを溶いているのを見たので素直に
口をつけられない。
躊躇した後、決心して飲もうとするグレイシア。
しかし途中で止めてしまう。
ということを3回ほど繰り返した。
「大丈夫だよ~、おいしいよ~」
と言うリョウだが、あまり真実味があるように聞こえない。
そこに、シスターたちの中から声が上がる。
「私が代わりに食べます!」




