307 トンジル?ブタジル?
「う~~ん・・・」
大人たち、特にシスターたちの圧力に負けてとりあえず厨房に来たリョウ。
何を作るか思案中である。
(味噌は豚汁でいいとして、醤油を使った料理か・・・。
魚の干物を焼いて大根おろしと一緒に、という予定だったけど
干物は10枚しか買ってこなかったしなぁ・・・)
救済の旅の出発式のときのように100人分以上を作らなければ
いけないわけではないが、この聖女宮に仕えるシスターたちの分、
30人分は作らないといけない。
さすがに1人あたり干物を1/3ずつではダメだろう。
(もう一度、市場に行って干物を買い足すかなぁ・・・)
などと思いながら厨房にある食材をチェックしていくリョウ。
「ステーキを焼いて、和風大根おろし醤油ソースとかじゃ
あまり変わり映えしないし・・・おっ!!」
リョウ、いいものを見つけたようだ。
「これ使っていいですか?」
「はい、大丈夫です」
シスターに許可をもらってさっそく作りはじめる。
(豚バラのブロック、しかも皮付きときたらアレだよね)
まずは、皮の表面を直火で軽く焼いて毛を処理する。
そして豚バラのブロックを適当な大きさに切りフライパンで
軽く焦げ目がつくぐらいに焼く。
大きな塊のまま下茹でする方法もあるのだがリョウの家では
こちらの方法である。
プリンのために用意した卵がまだ残っていたので、シスターに
頼んでゆで卵にしてもらう。
焼いた豚バラ肉と殻を剥いたゆで卵を鍋に入れ、醤油、白ワイン
(日本酒の代わり)、水飴、しょうがの薄切りを加え水で適当に
薄めて火にかける。
あとは、シスターに頼んで、灰汁を取りながら煮汁が
いいかんじに少なくなるまで煮ていけば豚バラ肉の角煮・煮卵付きの
出来上がりである。
次は豚汁である。
豚がカブってしまった・・・。
しかし、おっさんが心の中で独り言を言いながら食事をする
某人気TV番組でもそんなのがあったし、気にしないことにする。
ちなみに、豚汁の読みであるが、『とんじる』が多くて『ぶたじる』は
数県だそうである。
リョウはその少ない『ぶたじる』派である。
豚汁についてリョウにはこだわりが1つある。
それは、里芋を使うということだ。
しかし、この異世界に来て里芋を見たことがなかった。
というわけで今回は妥協してジャガイモを使う。
いつか里芋を見つけると心に誓うリョウであった。
この異世界に里芋があるかどうかわからないが・・・。
あとゴボウがないのも残念だったが、こっちはあまりこだわりはない。
豆腐はそのうち自作するつもりだ。
コンニャクは最初からあきらめていた。
まずは、さっき買ってきた魚の干物を直火で焼く。
出汁にするためだ。
鰹節はもちろん昆布もないので代用である。
豚汁は具材から出汁がでるので入れないやり方もあるが、出汁を
入れるとやはり一味違う。
焼いた干物で出汁をとったら、薄切りの豚肉や乱切りにした大根、
人参などの具材を入れ煮る。
煮えたら、いよいよ味噌の出番である。




