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304 冗談

「な、な、な・・・、何をおっしゃるのです!聖女様!!」

シスター長が叫ぶ。

「聖女様にとって恋愛はご法度はっとなのはご存じでしょう?!!」


明文化されてはいないが、政治や利権の介入を防ぎ公平性を保つため

聖女は恋愛禁止ということになっている。


「もちろん、知っています」

マーティア、その大きな胸を張って言う。


「ではなぜそんなことを?!」

「結婚と恋愛は別物でしょう?!」


「「「「「 は?!!! 」」」」」

マーティアの言ったことに対して、また大人たち全員の目が点になる。


「そ、そんな『甘いものは別腹』みたいな言い方をされても・・・」

シスター長が困った顔で言うが、


「恋愛はしませんが、結婚をするというだけです」

マーティアは微笑みながら返す。


「「「「「 はあ?!!! 」」」」」


皆、わけがわからないという顔をする中で、コリーヌが言う。

「リョウ様をこの国に留めておくには一番いい方法かもしれませんね」



「なるほどっ!!じゃあ、恋愛のほうは俺が担当してやるぜっ!」

グレイシアがそう言いながら、リョウを後ろから抱きしめる。


「グエッ」

抱きしめられて変な声がでてしまったリョウ。


「何言ってるの!それは私よっ!!」

ジュリアはリョウの右腕をとって抱え込む。


「ほんとにモテモテですね。いっそのことモテと名乗ったらいいのに・・・」

シスターの1人が小声でボソッと言う。


それが聞こえたリョウは

(いや、将〇連〇の会長さんじゃないんだから・・・)

と心の中で思う。


「ダメじゃ!!リョウはわしと一緒に魔国に行くのじゃ!!」

ブレンダが主張するが、


「行くだけだろ?!また帰ってくればいいじゃん」

とグレイシア。


「だいたいブレンダ様はリョウの恋人にもなってないでしょ?!」

ジュリアが追い打ちをかける。


「うぐぐっ・・・」

その部分には自覚があるので何も言えないブレンダ。


実際リョウはブレンダのことは妹分としか思っていない。


「うふふふ・・・あははははは・・・」

いきなり笑い出すマーティア。

「冗談ですよ。ブレンダ様をちょっとからかってみただけです。

だいたいリョウ様にその意思がないでしょう?!」


「はい。というか、そんなこと考えたこともなかったので・・・」

そう言って、この場を収めるリョウだが、内心は冷や冷やだった。


以前、天界で創造神のライゼンが『リョウとマーティアが結婚するなら

反対しない』という意味のことを言っていたからだ。


地球と違って実際に神の加護があるこの世界で、聖女のマーティアが

『創造神様が許可した』と言えばまず疑う人はいない。

創造神の加護を受けている聖女ともあろうものが、創造神の名を借りて

嘘を言ったとすれば、どんな天罰が下るかわからないからだ。


なのでリョウはマーティアがそのことを言いだすのではないかと

思ったのだ。

だが、マーティアはそのことを言わなかった。

どういう意図があったのか、あとで聞いてみなければと思うリョウである。


「聖女殿!冗談が過ぎるぞ!!」

ブレンダ、プンスコである。


「おほほほ・・・、申し訳ありません」

とりあえず、表面上謝るマーティア。

実際、悪いとは思っていない。


冗談だということで胸を撫で下ろすシスターたち。


「ちぇ~~~っ。本当でよかったのに~~~」

グレイシアは、リョウを抱く腕にさらに力をこめる。


「あらあら、子供たちが待ちわびていますね。

早くおやつにしましょう」


聖女の微笑みで言うマーティアであった。

念のため

ご法度:法律違反、禁止事項

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