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302 カップリン

「そう、ちゃんとしてくださいね。食べたときのなめらかさが

違ってきますよ」


リョウの指示で卵液を目の細かいざるに通すシスターたち。

それでもざるでは目が粗いので、さらに茶こしでしてもらった。


裏ごし器があればいいのだが、残念ながらさっき行った市場では

見つからなかった。

機会があれば、職人に作ってもらうのもいいかもしれない。

たしか、馬の尻尾の毛を使うとか聞いたことがあるので、

まずはそれを試してもらおうかと考えるリョウである。


した卵液にミルクと今朝作った水飴を混ぜ、均一になるように

混ぜたら買ってきた容器に注ぐ。


「のう、ふと思ったのじゃが・・・」

横で見ていたブレンダがリョウに話しかける。

「そんなのを50個も作るより、もっと大きいやつを作って

取り分けたら楽なのではないかの?!」


「ああ、それ子供には一番やっちゃダメなやつだよ」

作業をしながらリョウが答える。

「子供って基本的に自分勝手だから、それをやっちゃうと気の強い子や

力の強い子がたくさん取ってしまって弱い子や小さい子にいきわたらなく

なるのよ」


「子供には、『自分の分はこれだけだ』ときちんと決めてやらないと

いけないのね。取り分ける形は分別のある大人になってからだね」

そう言ってリョウはシスターたちの方を向く。

「ね、そうですよね」


「は、は、はい、そ、そのとおりです」

同意を求められ、シスターの1人が応えるが歯切れが悪い。


それもそうだろう。昨日、彼女たちは大盛りプリンアラモード

争奪戦を演じたばかりなのだから。


「ん?!どうしたのじゃ?顔が赤くなっておるぞ」

ブレンダがシスターたちを見て言う。


「い、い、いえ、な、何でもありません。ほらほら、用意の出来た

ものをオーブンに入れて」


こんな感じでプリン作りは順調(?)に進んでいった。




「で、これでは量が少ないのではないか?!」

出来たプリンを見てブレンダが言う。


容器の半分ほどしかプリンが入ってなかったからである。


「ふっふっふ、仕上げはこれからですよん。始めてください」

ちょっともったいつけて言ったリョウは、シスターたちに指示をだす。


シスターたちは、手分けして果物を切ってプリンに飾り付け、中央に

生クリームを絞りだしていく。


「はい、出来上がり~。

今回は、容器のまま、つまりカップのままなので・・・」

シスターから出来上がったプリンを受け取った右手を高く掲げるリョウ。


「カップリンアラモード~!」

なぜか変な声色で言った。

タラタタッタタ~~~♪という効果音が聞こえてきそうだ。


「なるほど、プリンアラモードの手間を少なくした廉価版ということか」

「そそっ。ガ〇ダ〇とジ〇みたいなもんですな」

「いや、その例え、わけがわからんのじゃが・・・」

「まあ、味見してちょ」

ブレンダにカップリンを渡すリョウ。


「ふむ、カラメルシロップはかかってないのじゃな・・・」

受け取ったカップリンを見て言うブレンダ。


「子供にはカラメルシロップのほろ苦さより、生クリームの素直な

甘さのほうがいいと思ったのよ」

リョウはブレンダにスプーンを渡しながら言う。

「あと、容器からプリンを取り出す手間も省けるから形を崩す心配もないね」


「なるほど・・・うむ・・・もきゅもきゅ・・・」

味を確かめるようにプリンを食べるブレンダ。

「前に食べたプリンアラモードより豪華さがないだけで、これでも

充分じゃな・・・」


「まあ、材料は同じだしね。

じゃ、私たちは孤児院に行くのでブレンダは戻ってていいよ」

「何を言っておる、わしも行くぞ」

「子供の相手、出来るの??」

「わからんが、こういうことも知っておくべきじゃろ?!」


目的のプリンを食べたので、もう用事はないかと思ったが、ブレンダは

ちゃんとこの国や人族について知ろうとしているようだ。


そして、出来上がったプリンを持ってリョウとブレンダは、シスターたちと

一緒に孤児院に向かうのであった。

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