299 リリエンタール公爵家 その11
リョウから手鏡を受け取り改めて自分の顔を確かめる公爵夫人。
気になり始めていた小じわが消えて、肌に艶と張りがでたようだ。
これぐらいなら化粧や体調管理のせいだと言い逃れ出来る・・・
かもしれない。
「あと王母様にバレたときは、自己責任でお願いします」
リョウが公爵夫人に念を押す。
「あら?!そのときは賢者殿が王母様にエステをしてくださったら
いいのでは?!これぐらいなら大丈夫なのでは?」
公爵夫人、まさかこんなに簡単に短時間でエステというものが
ほどこされるとは思っていなかった。
王母にバレても、リョウに同じ程度のエステをしてもらえば怒りを
買わずにすむはずだ。
「アレン様の術後経過観察も終わったので、聖女様の依頼は完了です。
なので、ガリアに戻らないといけませんので近日中に王都を
出る予定なんですよ」
あとは、マーティアから報酬をもらえば、いつ王都を出てもいい。
(あれっ?!)
リョウ、何か微妙に心にひっかかったが、
(ま、イイカ)
気にしないことにした。
「そういえば、賢者殿はガリア辺境伯の相談役だったわね」
そう言う公爵夫人に、
(そこまで調べてたのか?!)
と思うリョウ。
「え~~~っ!リョウ、いなくなっちゃうの~?!!!」
悲しそうなアレン。
「アレンの治療のために王都に呼び出されたので、ガリアに仕事が
残っているんだよ」
少なくともウイスキーの蒸留所がどうなっているか確認したい。
「それにブレンダは学園に入る予定なので会おうと思えばいつでも
会えるよ」
「そうなの?!」
ブレンダのほうに振り返るアレン。
「うむ、この国のことを学んで、交流を深めるために半年から1年ほど
在学する予定じゃ」
学園は全寮制なので、きちんと連絡すれば会えるはずだ。
「それに学園の食堂には私が伝えた料理があるので、よかったら
召し上がってください」
「何じゃと?!!!」
リョウの言葉にブレンダが反応する。
「お主、教会だけではなくそんなところにも教えておったのか?!」
「おいしいものはみんなで食べたほうがいいでしょ?!」
笑いながら言うリョウ。
もちろん、自分の使命である文化を向上させるということの一部だと
いうのは秘密である。
「そういうことなら、アレンが学園に来たときは一緒に食事をしようの」
「うん、必ず行くね」
「そのときは、私もお邪魔しますわ」
ブレンダの誘いにアレンと公爵夫人が応える。
ほんと、この異世界、食いしんぼばっかである。




