30 鍛冶屋
混乱しそうなので、重さや長さなどの単位は現代日本と
同じにしました。それによって、22話を少し変えてます。
「それほど緑茶が浸透しているのか」
エリックの希望で、緑茶についての話になっていた。
「料理屋では、無料で緑茶がでてくるところが普通ですね」
「無料?!」
「もちろん、安いお茶ですよ。1杯あたりの原価は数シルです」
「そんなに安いものまであるのか」
「もちろん、とんでもない値段の高級品もありますが
庶民が普段から飲むのはそんなものです」
「なるほど。それで、緑茶の木は、紅茶の木と
どう違うのかね?」
エリックが尋ねる。
「う~~ん、これ以上の話は、まずいかな?!
ね!レイナさん!」
リョウは、レイナに同意を求める。
「え、は、はい。リョウ様の知識は大変貴重ですので
無闇に披露しないほうがよいと思われます」
レイナが、答える。
レイナの今日の役目の1つは、リョウの有用な知識が辺境伯家以外へ
流出するのを防ぐことであった。
リョウは、それを察して『わかっているから安心してくれ』
と示したのである。
エリックも少し考えそして、
「そうだね、今度シュタイナーに会って、話をしておこう」
と言った。
「では、今日はこれで失礼します」
「ああ、いろいろと楽しかったよ。今度はもっとゆっくり
緑茶の話を聞かせてくれ」
「はい、それなりにお役にたてると思います」
2人は受付でリョウのギルドカードを受け取り、
次の目的地、金物屋に向かう。
受付にアンナの姿は見えなかった。
「ここが、辺境伯家御用達の鍛冶屋です」
レイナに連れられて行った金物屋の主人は、お約束のドワーフであった。
身長が150cm余りの筋肉ヒゲおやじである。
「こんにちは。やかんを見せてください」
「おう、どんなのがいいんだ?」
「5リットルぐらいの容量で、なるべく口がやかんの
上のほうについてるやつがいいんですが」
「何だ?!変な注文だな。とりあえず、そこの棚にあるやつを
見てくれ。気に入ったのがなかったら、2~5割増しぐらいの
料金で作ってやる」
とりあえず、やかんで間に合わせようと思っていたリョウだが
注文できるのなら専用の道具を作ったほうがいいと考えた。
「辺境伯家の用事で来てるんですが、特別注文の内容を
秘密に出来ますか?」
「お?!領主様のお使いか。もちろん大丈夫だぞ。
御用達の看板は伊達じゃねえ」
「では、人に聞かれない所で説明します」
「おう、そっちの部屋に入ってくれ」
作業場らしい部屋にリョウたちを案内するドワーフ。
そこでは、10代後半に見える若者が作業をしていた。
「ケント!領主様のお使いと話がある。店番してくれ。
大事な話なので、ここには誰も入れるんじゃねえぞ」
「へい!親方」
ケントと呼ばれた若者は、リョウたちをちらっと見て、
店のほうに出て行った。
「お弟子さんですか?」
リョウが聞くと。
「ああ、筋は悪くねえんだが、覚えが悪くてな・・・
そっちに座ってくれ」
部屋の隅にある机のそばの椅子に座るリョウ。
レイナは入り口の近くで立っている。他の者に聞かれたり
しないように警戒しているようだ。
「改めまして、リョウと言います。このたび辺境伯様のところで
技術的なことを開発・指導する役目をおおせつかりました」
「ガラントだ。敬語やまわりくどい話し方は苦手なんで
普通に話してくれ。名前もお互いに呼び捨てで頼む」
「わかった、よろしくガラント」
「よろしく、リョウ。それにしても、技術を開発とかってのは
どういうことなんだ?」
「新しい物を作ったり、今までのやり方より楽に簡単に
出来るようにしたりするということですね」
「ほう、それで俺に何を作る道具を作れというんだ?!」
「あなたたちの大好きなものですよ」
「何!!」
「ドワーフ酒です」
「ドワーフ酒だと!」
ガラントが立ち上がる。
「貴様!製法を盗んだのか!!」
「盗むほどの技術でもないでしょう」
「何?!!」
「私の国では、蒸留酒と呼ばれて、いろいろな原料から
作られ、普通に買えますよ」
「蒸留酒?!」
「しかも、ここではドワーフたちで飲んでしまって、他にはなかなか
出回らないとか。ならば、人族が作っても問題ないでしょ?!」
「本当に製法を知っているのか?」
「もちろんです。そのための道具を注文に来たんですから」
リョウの顔を少しの間見てから、ガラントは椅子に座る。
「詳しい話を聞こう」
そして、リョウは蒸留の原理と必要な道具の仕様、そして
量産された場合どうなるかをガラントに説明したところ、
快く協力を約束してくれた。
なにしろドワーフ酒は、ドワーフの里で作られそこで
ほとんどを消費されるため、同じドワーフとはいえ、
領都暮らしのガラントのところまでは、なかなかまわってこなかった。
それが、今回の仕事を請ければ、それなりの収入はもちろん
できた蒸留酒を優先的に手に入れられる権利をくれるというのだ。
協力しない理由がなかった。
「では、そういうことで」
「おう、3日後までに2セット、間違いなく作っておく」
「よろしくお願いします」
リョウはご機嫌で鍛冶屋を後にした。
今回で30回。一ヶ月毎日更新出来ました。
がんばったよ、俺v
今後もなるべく毎日更新したいですが、
ダメだったときは、ごめんなさいです。
今後ともよろしくお願いします。




