294 リリエンタール公爵家 その6
更新再開です。
翌朝、昨日仕込んでおいた水飴の出来をシスターたちと確かめるリョウ。
「こんな感じで透明になっていたらOKです」
シスターたちに説明しながら布で濾していく。
「じゃ、煮詰めてください。焦げないように気を付けてくださいね」
「「「あのう・・・」」」
指示をするリョウにシスターたちが遠慮がちに声をかける。
「「これでプリンを作っていただけませんか?!」」
2人のシスターがそれぞれ卵の入った籠と瓶(『プリンを』という
ことなのでたぶんミルクが入っているのだろう)を差し出した。
教会内にある孤児院の子供たちにプリンを食べさせてあげたいと
シスターたちが自費で買ってきたということだ。
彼女たちには作り方を教えてあるが、まだ細かい部分が不安らしい。
そういうことならリョウも協力することにやぶさかではない。
リョウは女性に甘いが子供にはもっと甘いのだ。
が・・・
「今から出かける用事がありますので、午後からでいいなら」
リョウはこの後、ブレンダと一緒にアレンの術後経過観察に行くことに
なっていた。
ということでリリエンタール公爵家の応接室である。
「タイガ殿の見立てでは、もう大丈夫だそうじゃ」
リョウの代わりに闇巫女アレッタが、先ほど行ったアレンの体内サーチの
結果を伝える。
「まあ!よかったわね、アレン」
喜ぶリリエンタール公爵夫人。
「はい!お母様!」
アレッタにじゃれついていたアレンが答える。
そしてアレッタの顔を見上げ言った。
「ねえねえ巫女様、ボクが大人になったら結婚して!!」
年上の異性に結婚を申し込むという、純真な子供あるあるである。
ちなみに、リョウも10年ほど前に妹の恵の友達の女の子から
言われたことがあるが、その子は現在そんなことはまるっきり
忘れて同じ歳のボーイフレンドと仲良くやっている。
「それはちと難しいかのう・・・」
アレンの頭を撫でながら言うアレッタ。
「え~~~っ、何でぇ~~~っ?」
頬をふくらませ、口を尖らせるアレン。
「お主は公爵家の嫡男なんじゃから、しかるべき相手と結婚せねば
ならんじゃろ?!」
アレッタは膨れたアランの頬を指で突きながら言う。
「じゃ、側室になって!!」
と言うアラン。
「それはもっと難しいのう」
「え~~っ、何でぇ~~?!」
「わしにも立場があるでのう・・・ちと早いが、よいかの?」
アレッタはタイガの方を向いて許可を求める。
タイガは少し考えて、うなずく。
アレッタはうなずき返すと
「公爵夫人殿、人払いをお願いするのじゃ」
と言った。
夫人の指示で部屋にいた使用人全員が退室するとアレッタは仮面をはずし
髪飾りなどの頭部のアクセサリーをはずして言う。
「公爵殿にはすでに話してあることじゃが、わしは魔国の第一王女
ブレンダじゃ」
「「 え?!!! 」」
公爵夫人とアレンが同時に変な声を上げた。
2人の反応を見ると、リリエンタール公爵はブレンダのことを
黙っていてくれたようだ。
「そ、その角は・・・?!」
アレンがブレンダの頭を指さして言う。
飾りの一部のように見せかけていた角が本当に頭から生えているので
驚いたようだ。
「ああ、本物の角じゃぞ。触ってみるかの?!」
ブレンダはそう言って軽く頭を傾けて角を触りやすいようにした。
おそるおそる触ったアレン・・・、
「わ!本当だ!!」
思わず叫んでしまう。
「はっはっは、まあそういうわけで、わしにも立場があるということじゃ。
それに、そなたもこんな角の生えた女は嫌じゃろ?!」
「え~~~?!かっこいいよ!!」
ブレンダの言ったことに、食い気味に答えるアレン。
「ははは・・・、そうかそうか・・・」
そう言ってアレンの頭を撫でるブレンダ。
そのとき、公爵夫人がふと思いついた。
「ということは、神使様も魔国の・・・?!」
「あ、私は普通の人間ですよ。リョウと申します」
仮面を取りながら言うリョウ。
「そうなんですか、てっきり・・・」
そこまで言った公爵夫人、
「ええ~~~?!!」
思わず叫んでしまうのであった。




