286 トンカツとコロッケ
リョウがカテリーナに引っ張られて行ったため、取り残された形に
なったオリビアとジュリア。
しかしオリビアにとっては、リョウをノーレッジ領に引き込むための
話をするのに都合がよかったのだ・・・が、
「リョウをノーレッジ領に引き込める確率は、ほぼゼロです」
「ぐほぉ!!」
ジュリアに希望をあっさりと打ち砕かれたオリビア、ショックで
テーブルに突っ伏した。
「リョウの方にまったく利点がありませんから」
「あなたね~、もうちょっと柔らかい言い方はないの?!」
オリビアはテーブルに顔を伏せたままで言う。
ある程度は覚悟していたオリビアだが、やはり現実は厳しい。
「でも、協力はしてくれますよ」
「え?!」
伏せていた顔を上げてジュリアを見るオリビア。
「今回はガリア領へ帰る途中にノーレッジ領に立ち寄って、
困っていることや抱えている問題などの解消を手伝って
くれるそうです」
「まあ!」
笑顔になるオリビア。
「でも、なぜリョウ様はわざわざ遠回りしてまでうちの領に?」
オリビア、小首をかしげる。
ちょっとかわいい。
「それは私の働きを評価してもらえたからです!」
ジュリア、胸を張る。
「私のような有能な者を引き抜いてしまったので、その代わり・・・
ということだそうですよ」
(わ~、こいつウゼ~・・・)
オリビア、ジュリアの有能さはわかっているが、ちょっとイラっとした。
「あなた、性格変わってない?!」
オリビアのイメージするジュリアは、もっと控え目な性格だった。
「いろいろと鍛えられましたから」
筋肉大女に巨乳王女にロリスカウトと濃いキャラたちがリョウを
狙うライバルなのだ。
最近は、爆乳聖女もちょっと怪しい。
こんな状況で控え目キャラなんてやっていられない。
もっとも、その控え目な雰囲気が遥か異世界のニホンでリョウの
母と妹に好印象なのだが当人は知るよしもない。
「こうなったらやるしかないわね!」
立ち上がるオリビア。
何かを決意したようだ。
「何をするのですか?」
ジュリア、悪い予感しかしない。
「この私の女の魅力でリョウ様を堕とすのよ!!」
オリビア、自信満々である。
「ナルホドー、ソーデスカー・・・」
歳のわりにささやかなオリビアの胸(15歳です)を見ながら、
棒読みで返事をするジュリアであった。
そして、調理室のリョウ。
「小麦粉はできるだけ薄くつけるように。衣が剥がれにくくなります」
トンカツの作り方を料理長や料理人たちに教えていた。
「ジャガイモが茹で上がりました~」
料理人の1人が報告する。
「では、皮を剥いて潰したら、さっき炒めて塩コショウしたひき肉と
混ぜてくださいね。潰し方は、粗いものと細かくなめらかなものの
2種類お願いします」
今回コロッケは基本のポテトコロッケにした。
ジャガイモの潰し方は好みはあるので、2種類作る。
トンカツのほうもヒレとロースの2種類だ。
合計4つになるので、それぞれの大きさは小さ目にした。
「パン粉というのは、このような感じでいいですか?」
ちぎったパンをフライパンで乾煎りしていた料理人がリョウに聞く。
さすが学園の食堂だけあって、料理人に仕事を分担させられるので
今回は楽である。
「はい、そんな感じですね。軽く水分をとばすだけにして
焦げないようにしてください」
リョウはそう言いながら、出来たパン粉を受け取る。
小麦粉をつけた豚肉を溶き卵にくぐらせパン粉をつける。
潰したジャガイモのほうも同じように衣をつければ、
あとは揚げるだけである。
リョウがそう思ったとたん、
ガシャ~ン!!
大きな音が厨房に響いた。




