276 フルーツパフェ
「うひょ~~~!!!」
テーブルの上に並べられたフルーツパフェを見て、ブレンダが
歓声を上げる。
他の4人もブレンダほど大きなリアクションではないが
思わず声を出したり、目を見開いたりしている。
「ニホンでも人気の果物を使ったデザートでフルーツパフェといいます」
リョウが説明する。
「これはわざわざ、わしのためにリョウが作ってくれたのじゃ。
皆、わしに感謝するがいいぞ。」
ブレンダが恩着せがましく言う。
「ありがとうございます、ブレンダ様」
マーティア、ブレンダの顔をたてて礼を言うが、
「いや、礼を言うならリョウにだろ?!」
グレイシアがあっさり否定したので、ブレンダの頬がぷくっと膨れた。
「ありがとな!リョウ、もう食ってもいいんだろ?!」
ブレンダを気にせずにグレイシアが言う。
「はい、どうぞ召し上がれっ」
変なポーズをつけて言うリョウ。
皆、『何だそりゃ?!』と思ったが、目の前のパフェのほうが
大事なので放置して一斉に食べ始める。
リョウ、ツッコミがなくてちょっとガッカリであったが、
マーティア、ジュリア、コリーヌが小さく『ありがとう』と
言ったのを聞き逃さなかった。
それで十分満足である。
「うひょひょひょぉ~~~!」
「まあっ!」
「むしゃむしゃ」
「ん~~~~!!」
「もきゅもきゅ」
全員、気に入ったようである。
「おいしい上に盛り付けが美しいですね。それに、この器は?」
マーティアがただの器でないことに気づいた。
「気が付かれましたか。ウィッツレーベン公爵家のご息女ユディット様が
お抱えの陶芸家のパキート・パスクアルという人の作品だそうです。
運よく市場で見つけました」
「なるほど・・・」
リョウの言葉にマーティアだけでなく、他の者もあらためて器を
見なおしている。
「リョウ様、この黄色い柔らかいものは何ですか?」
プリンを食べたコリーヌが、ちょっとびっくりした顔で言う。
「え?!食べたことなかったですか?」
作ったことがあるつもりだったリョウ。
「ありません。私は食べたことのあるお菓子は全て覚えてますので
間違いありません!」
コリーヌが自信たっぷりに断言するが、あまり自慢にならないような・・・。
ジュリアたちも『ないよ』というように首を振る。
「そうでしたか。
これはプリンと言って、ニホンでも人気の卵を使ったお菓子です。
今回は小さく作ってパフェの脇役にしましたが、主役として
大きく作って飾り付けたプリンアラモードというものもあります」
作ったのはガリアでだったと思い出しながら言うリョウ。
「何じゃと?!」
そんな物のことを聞いてブレンダが黙っているわけがない。
「明日じゃ!!明日は、そのプリンアランドロンを作るのじゃ!!」
「プリンアラモードね。めんどいから、ヤダ」
そんなフランスの2枚目俳優のような名前じゃね~よと思いながら
あっさり断るリョウ。
「え~~!!いいではないか!作るのじゃ」
「今日は特別ですよ。また何かあったらそのときに作ってあげますね」
そう言われてまたぷくっと頬を膨らませるブレンダ。
「そういえば、今日は鳥を見ないがどうかしたのか?」
グレイシアが聞く。
「鳥?!スツーカのことなら、魔国に使いじゃ」
「魔国に?」
「家出してきたようなもんじゃから、父王に一言謝っておいたほうが
いいと聖女殿に言われたのでの。手紙を書いたのじゃ」
そう言いながら何かに気づいて、リョウのほうを見るブレンダ。
「あ、そうじゃ!スツーカが戻ってきたら・・・」
「戻ってきたら?!」
途中で言うことをやめたブレンダに聞き返すリョウ。
「ふっふっふ~、そのときのお楽しみなのじゃ」
さっきのお返しというように、もったいぶるブレンダであった。




