273 鉄鍋餃子
さて、まずは焼き餃子の具であるが、リョウ以外は食べたことが
ないものなので、凝ったものはやめておいたほうがいいだろうと
いうことと、シスターたちにも作り方を覚えやすいようにと、
最もシンプルな豚ひき肉とキャベツにした。
基本の作り方を覚えれば、作っていくうちに勝手にアレンジを
するようになるだろう。
問題はニンニクである。
聖女様がニンニクの臭いをふりまいていたら、いろいろとまずいのでは?!
リョウのクリーンの魔法で何とかなるかもしれないが、試したことが
ないのでわからない。
ということで、ニンニクあり・なしの2パターンを作ることにした。
豚ひき肉とみじん切りにしたキャベツをのうち、1/3ほどを別にして
塩とすりおろしたショウガ、そしてすりおろしニンニクを加え
ねばりがでるまでよく混ぜるて、ニンニク入り焼き餃子のタネの完成である。
残りの2/3にも塩とすりおろしたショウガを加えよく混ぜる。
こっちは、ニンニクなし焼き餃子と小籠包用である。
ねかせておいた皮のタネを棒状に伸ばし、輪切りにする。
それを15cmほどの長さの小型の麺棒で中央を厚く、ふちの部分が
薄くなるように丸く伸ばしていく。
シスターたちにも練習としてやってもらう。
さすが調理係のシスターたち、すぐにコツをつかんで出来るようになった。
水で練ったほうの皮のタネは半分は同じように、もう半分は
薄目に伸ばしておく。
具の違いで区別ができるように、ニンニクありは普通のひだを作る形に、
ニンニクなしは単純に半分に折って半月型になるように包む。
こちらもシスターたちはすぐに出来るようになった。
はじめのほうに作った出来のわるいやつは、彼女たちの試食用にする。
焼くのは食べる直前にするので収納バッグに入れて、次は小籠包である。
さっき作ったタネに固めた鶏ガラスープを入れ皮で包む。
鶏ガラスープは、普通は粉ゼラチンで固めたものを使うのだが、
粉ゼラチンが見つからなかったので、魔法が使えるシスターに
凍らせてもらった。
雲吞の具は海老にした。
汚れと臭みを取るため、殻と背ワタをとった海老に片栗粉と塩を
加えて揉み、水洗いして水気を拭きとる。
それを包丁で叩いてミンチにして、すりおろしショウガ、塩、魚醤を加え
粘りがでるまで混ぜる。
餃子や小籠包の皮より薄めに作った皮に包んで海老雲吞の
準備OKである。
うまくプリプリになってくれればいいが。
いよいよ仕上げである。
小籠包と海老雲吞は、シスターたちにまかせて
リョウは餃子を焼く。
リョウはさっき市場で買ってきた小さめの鋳物のフライパンを取り出した。
いわゆるスキレットというやつである。
それを竈に乗せて油を入れてなじませる。
まずは、試食用にシスターたちの作った形の悪いものを焼く。
餃子を隙間なく並べ入れ、お湯を入れて蓋をして蒸し上げる。
そして、残ったお湯を捨て、油を入れて蓋をして、焦げ目をつける。
蓋をとって、全体をひっくり返して余熱で反対側にも焦げ目が
つくようにしたら、北〇州名物鉄鍋餃子の完成である。
「焼けましたよ~、試食どうぞ~」
リョウがそう言いながら小皿に取り分けると、待ってましたとばかりに
シスターたちが寄ってきた。
醤油がないので、タレは魚醤と酢を混ぜたものだ。
マーティアたちに出すときは、某くいしんぼドラマのマネをして
酢胡椒も試してみるつもりである。
「わちゃっ!」
シスターの1人が口の中を火傷したようだ。
「あらら、アツアツなので、気を付けてください」
その娘の口にヒールしながら、リョウが言う。
「おいひいれす」
「外のパリっと中のジュワっが」
「タレの酢で油っぽいのが緩和されますね」
好評のようだ。
「こりゃ!!リョウ!わしにもよこさんか?!」
ブレンダが文句を言うが、
「ダメですよ。あなたは後でたくさん食べられるんですから」
リョウは拒否する。
「う~~~・・・」
うらめしそうな目で見るブレンダだが、リョウは気にせず次の餃子を
焼いていく。
小籠包と海老雲吞も出来たので盛り付けて
マーティアたちの部屋に配膳する。
というわけで、この世界初の餃子尽くしの夕食会である。
これを書いてたら、我慢できなくなって
〇の〇の冷凍餃子を焼いて、ビールを飲んでしまいましたw




