269 和?洋?中?
リョウとブレンダの2人は市場の広場になった場所でベンチに座り、
休憩していた。
「いや~、ひどい目に会った・・・」
台詞とは逆に、何でもないことのような語調のリョウ。
「お主が悪いのじゃぞ!」
飲んでいた果物ジュースのストローから口を離してブレンダが言う。
リョウを突き飛ばしてしまったことは悪かったと思っているが、
原因がリョウなので謝る気になれない。
ということで、いまだにプンスコ状態である。
「ごめめ、ついスルメを見つけた嬉しさに舞い上がっちゃった」
謝りながらご機嫌をとろうとしているリョウ。
自分でヒールしてもう何ともないが、さっきまで胸にくっきりと
イカの跡がついていた。
しかも頭(正確には胴であるが)の三角形、エンペラと言われる
部分である。
北斗七星とかならまだしも、こんな胸の傷は嫌だ。
いや、北斗七星でもわりと嫌だが・・・。
この部分、ナポレオンの帽子に似ているので、皇帝→エンペラと
呼ばれるようになったという説が有力だそうだ。
(エンペラとエンペラー、棒線一つでここまで印象が違うというのも
珍しいな・・・)
などとアホなことを考えるリョウであった。
さて、買い物の続きである。
リョウは考えていた。
損なってしまったブレンダの機嫌を取り戻さなくてはならない。
となると、晩御飯と食後のデザートだが・・・片方ではダメだ、
両方ともブレンダが気に入りそうなものを作らなくてはならない。
まずは、料理だが和・洋・中・エスニック・・・どれにするか。
和は醤油がまだ見つかってない状況では選択肢が少なすぎる。
魚醤では限界が多いのだ。
改めて和食における醤油の重要性を感じるリョウである。
(焼いた餅を砂糖醤油で食べたいな~)
醤油欲しさに思考が変な方向に行ったりしていた。
洋は、この世界が洋風なのであまり珍しくないだろう。
エスニック・・・何それ?!
おしゃれなOLとかじゃあるまいし、知らんわ!!
というわけで、中華だな。
そして、中華でこの国で珍しそうなものといえば・・・、
「うん!餃子だな」
考えがまとまり、つい口にだしてしまったリョウ。
「ギョウザ?!何じゃそれは?」
ブレンダが聞く。
「うふふぅ~、夕食のときのお楽しみですぅ~」
口に手をあて、くねっと身体を曲げた変なポーズをキメながら
言うリョウ。
その変なポーズにもだが、台詞の中の小さい『ぅ』にイラッとした
ブレンダ。
顔を背け、頬を膨らませる。
リョウは、それに気づかず考え続けていた。
(水餃子に焼き餃子に蒸し餃子・・・水餃子は小さめにして
雲吞みたいにしてみるか。蒸すなら餃子より
小籠包だな。)
夕食の方針が決まった。
あとはデザートである。
『プンスコ』って『プンスカ』より発音がかわいくて、本気で
怒ってない感じがしていいですよね。
誰が最初に使ったんでしょう?




