27 ○○ハゲ
3人一緒でいいと聞いたとたんに、ハリーが元気になる。
リョウの狙いどおりである。
「この2人はDクラス冒険者だぞ思い上がるな!!」
「そして、あなたがFに近いEクラスと(笑)」
思いっきり挑発するリョウ。
「貴様、オーガを倒したなんてハッタリが通用すると思うのか!」
「まあまあ、とにかく修練場に行きましょう」
受付嬢のアンナに案内され、リョウとレイナ、3人組、
エリックの順で歩いていく。
その後ろを、ヤジ馬の冒険者たちが、ぞろぞろとついて行く。
修練場は、ギルドの建物の裏にある15m×25mぐらいの
長方形の広場で、木の板塀で囲まれていた。
端のほうに、直径15cm高さ180cmほどの杭が5本
打ち込んである。剣の打ち込みの練習や飛び道具の的に
したりするようだ。
リョウが、修練場の中央付近に行くと、3人組も付いてくる。
リョウは振り向いて、エリックに聞く。
「あ、エリックさん、こういうとき武器とかが壊れたら
誰の責任になるんですか?」
「それは、当人の自己責任だな」
「じゃ、私が彼らの剣をへし折ったり、鎧ごと切り捨てても、
弁償しなくていいんですね」
「お前の剣で、そんなことが出来るわけないだろう!」
ハリーが大声で言うが、
「誰がこの剣を使うと言った?!」
リョウが、ドスを効かせた声で答える。
そして、収納バッグから剛斬丸を抜き出し、右手一本で
振り上げる。
「「「え?!」」」
剛斬丸の迫力にひるむ3人組。
観客もレイナ以外全員、驚きの声を上げる。
「剣を抜け!!お前らがオーガより固いか試してやる!!」
リョウ、いきなり殺戮モード。
放たれる殺気に、圧倒される3人組。
左手を前に突き出し、手のひらを上に向け親指以外の4本の指を
クイクイと曲げる、いわゆる『かかってこい!』のアクションを
するリョウ。
気分はもうザ・ロ○クである。
「どうした、さっさと剣を抜け!!」
剣を抜くということは、戦いを始めるということになる。
ということは、剣を抜いたとたんに、あの豪剣が
襲い掛かってくるということだ。
ビビりまくっている3人組が、抜けるわけがない。
「すごいね。確かにあれならオーガを縦に真っ二つに
できても、おかしくない」
エリックがつぶやく。
「縦?!」「真っ二つ?!」
それを聞いた冒険者たちに戦慄がはしる。
「掛かってこないなら、こっちから行くぞ!!」
リョウは、一歩踏み出す。
「ぼぼぼ、ぼっちゃん、こ、こいつは、ダダダダ、ダメだ」
供の1人が腰を抜かしながら言う。
「ああ、あんなもの見掛け倒しだ、さ、さっさと掛かれ!」
もう1人の供のかげに隠れるようにしながらハリーが言うが、
「む、無理です、し、死んじまいます」
そっちも思いっきり逃げ腰だ。
「行くぞ!!」
かかってこない3人組に対して、リョウはさらに一歩踏み込むと
「キェエエーーーイィ!!!」
気合とともに剛斬丸を一閃させる。
「ヒィイイーーー!!」
声にならない声を上げ、気絶するハリー。
ズボンの股間部分が濡れて、湯気がたっている。
供の2人も完全に腰が抜けたようだ。
供の2人が、どこを斬られたのかと、自分や仲間の
身体のあちこちを見ていると、上から細くて軽いものが
無数にハラハラと落ちてくる。
よく見ると、髪の毛だった。
「ハッハッハ・・・!!、10円ハゲ・・・じゃない、
10シル硬貨ハゲトリオ、ここに結成!!」
リョウが笑いながら叫ぶ。
リョウが言うように3人には、見事な10円ハゲができていた。
リョウは剛斬丸をバッグに収納し、エリックたちのほうに
戻っていきながら声をかける。
「エリックさん、こんなものでどうでしょうか?!」
「ああ、じゅうぶ・・・」
「キャァアアアアアア!!!!!」
エリックの返事は、アンナの声にかき消される。
アンナはリョウに向かってダッシュするとそのまま抱きついた。
(え?!今の俺、そんなにかっこよかった?!!!)
リョウくん、モテ期到来の予感である。




